95年の歴史を誇る近畿大学の相撲部。
今年の初場所を制した「徳勝龍」など、数々の大相撲力士を輩出しています。
これまで全国大会の団体戦で8回優勝した強豪です。
強さの秘密…それはこの大学ならではの“伝統”にありました。
■「強豪」が守り続ける4つの“伝統”とは…?
ここは、31人すべての部員が生活する寮。
大学の相撲部としては、全国でも珍しい全寮制です。
今は新型コロナウイルスの影響でプライベートの外出は禁止されています。
――Q:誰のポスター?
【4年生の部員】
「山口百恵ちゃん。子どもの頃から好きで父親の影響もあるんですけど…ずっと聞いてくうちに好きになっていました」
食料の買い出しは月に3回ほど。
購入する米の量は、なんと300キロです!
――Q:何日分?
【1年生の部員】
「分かんないですけど、すぐ無くなります」
午前5時半から始まるのが、1年生の仕事「ちゃんこ番」
この日の担当は北野選手。高校時代は軽量級の世界チャンピオンです。
――Q:強いからといって免除はされない?
【北野泰聖選手(1年)】
「ないです。1年生なので当たり前」
担当の日は稽古に参加せず、部員31人の胃袋を満たすため、1人で黙々と料理に励みます。
朝、稽古を終えた部員が寮に戻ってくると、何やら警戒した様子で立っている北野選手…
それは先輩の”おかわり”をすぐに対応するため。
これも、近大相撲部の“伝統”なのです。
今年1月、約20年チームを率いた伊東勝人監督が他界しました。
急遽、後を任されたのはOBの阿部智志監督。
伝統を引き継ぐ一方で、部員とは今どきの方法でコミュニケーションをとっています。
【神崎大河選手(3年)】
「こんな感じで練習頑張れとか。言葉数少ないけど的確なアドバイスしてくれるなと思います」
【谷岡伊織選手(3年)】
「体重別負けた時に落ち込んでいたので。嬉しかったですね、気にかけてもらえているんかなと」
――Q:部員にLINEで励ましのメッセージを送っている?
【阿部智志監督】
「全員に声かけられない部分もあるので…。ただレギュラーだからとか強いとかではなく、やはり31名全員を気にかけてやっていきたいなと思っていますね」
団体戦の全国大会に選ばれるのは8人。
1年生ながらレギュラー入りに期待がかかる北野選手も猛アピールしますが…
稽古中に倒れてしまいました。
【阿部智志監督】
「どうや痛みは?」
【北野泰聖選手】
「痛くないです」
【阿部智志監督】
「うずくまってたやん」
すぐに病院へと運ばれましたが、診断結果は靭帯の損傷でした。
厳しい稽古がゆえ、常にケガがつきまとう相撲の世界。
直径わずか4.55mの土俵の中で、男たちは激しくぶつかります。
■いざ全国大会!10年ぶりの“団体優勝”をかけて…最後の「伝統」
全国大会の前にはすべての部員が土俵を囲み、気持ちを一つにします。
大会当日までに「全員が角刈り」に揃え、熾烈なレギュラー争いを勝ち抜いた8人にエールを送るのです。
なぜ昔ながらの伝統を今も続けているのか…
全ては最大の目標である”団体優勝”を成し遂げるためです。
【主将・山口怜央選手(4年)】
「団結力が全寮制であることによって生まれていると思うので、普段から助け合って生活している面では団体戦で生きているのかなと思う」
10年ぶりの団体優勝をかけた全国大会。
団体戦はレギュラーの中から5人が出場し、3人勝てば勝利。
近大相撲部は順調に駒を進め、決勝トーナメント進出です。
【阿部智志監督】
「相手は強い。ここ勝たないとお前ら頂点なれへん。一番勝負や。自分たちの力信じて、しっかり出し切れ。そうしたら絶対ついてくる。気合入れていくぞ」
いよいよ準決勝…
相手は優勝候補の「日本体育大学」です。
【先鋒】神崎大河…黒星
【次鋒】長内孝樹…白星
【中堅】谷岡伊織…黒星
あとが無くなった近畿大学…
すべての望みを副将のキャプテン・山口怜央に託します。
…結果は1勝3敗。
悲願の優勝とはなりませんでしたが、「3位」と健闘しました。
【阿部智志監督】
「優勝目指してきたので残念ですね。でも選手たちはよく頑張ってくれたので、結果残せなかった監督の責任と思っています。この思いを来年、再来年と伝統ある近畿大学相撲部のために頑張っていきたい」
大会を終え、いつもの稽古が再び始まった近畿大学相撲部。
伝統は次の世代へと引き継がれていきます。