新型コロナウイルスの感染が収束しない中、大阪府池田市の中学校で体育祭が開かれました。
リスクと向き合いながら生徒自らが考えた体育祭。
実施までの5か月間を追いました。
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今年の春、学校は約3か月間の休校を余儀なくされました。
池田市立北豊島中学校もその一つです。
段階的な臨時登校を経て6月中旬、学校は通常登校に戻ります。
しかし合唱や演奏など様々な活動が制限されていました。
【大坪真哉 校長】
「昼食後の歯磨きについては禁止しろと出てるねんけど。もうしばらく辛抱してくれ。湯井健史先生)全体連絡でもいいですか?歯磨くときに意識してなと」
2年生の学年代表、湯井健史先生。
密を避ける対策が求められる一方で、100人以上の生徒が一つの廊下を行き交う学校の日常に矛盾を感じていました。
【湯井先生】
「あんまりさ、子どもたちが動くのを望んでない。ニュースでやってることと 市の教育委員会とか大臣とか、知事が決めた方針と学校の廊下は乖離してる。矛盾してるやろ?」
給食は、席を動かさず前を向いて食べるのが決まりです。
給食中でも、食べる時以外はマスクを外そうとしない生徒達もいました。
【生徒】
「先生いるので一番前やから。マスクつけるのが当たり前になって。つけずにしゃべってたら不安になってくる。今年度、学校では去年から計画してきた改革をスタートしました」
【校長】
「君らが主役やから。学校は劇的に変わると思う。今年はそのチャンスやと思ってます」
目指すのは生徒中心の学校作りです。
感染防止対策を条件に許可された体育祭を大坪校長は生徒に任せることにしました。
【教師】
「体育祭を通して私たちが子供にどんな力をつけさせたいかという話し合いも本当はしたいなと思います」
【校長】
「多分子供の力って本気出したら僕らが考えている以上の力を発揮すると思う。うちから湧いてくる僕達が想像すらできないようなことを子どもは起こすと思う」
【校長】
「君らの武器はこれ、発想。僕達にはないこんな種目したら先生面白いんちゃうというのが多分あると思う。じゃあ自立していこうね」
託されたのは、3年生を中心にした生徒会です。
休校明けの受験生には 荷が重すぎました。
【生徒】
「やっぱり受験なので勉強する時間も必要やし、3年なので部活も最後」
【生徒会女子】
「今年なんてコロナで色々変わってる中で、学校のそういうことまで変えようとすると、それこそ、生徒がわけわからんくなるから。せめて今年は今まで通りでいけばいいんじゃないかな」
【生徒会女子】
「変えすぎだよね、急にね」
生徒会は校から実行委員を募り話し合いを重ねました。
【生徒会女子】
「演技をするか、競技を考えてするかを今聞きたい!」
【男子生徒】
「ずっと体育祭、競技ばっかりやから普通に演技したい」
【生徒会女子】
「ダンス」
【男子生徒】
「時間がないというのもあるから競技にして、みんなが楽しめるようにしたらいいかな」
【生徒会女子】
「密(対策)最優先にするのか?楽しさ優先にするのか?騎馬戦?」
【生徒会男子】
「騎馬戦は絶対ケガする」
【生徒会女子】
「個人競技よりも協力してやるもの重視」
コロナ対策として、時間を短縮し、競技を減らす代わりにみんなが楽しめる体育祭を目指すことにしました。
7月末、大阪府の1日の感染者数は200人を超えました。
【湯井先生】
「これね、今ね、ニュースでコロナ関係の話題って?増えていってます?」
【記者】
「トップニュースです。毎日」
【湯井先生】
「ですよね」
【教師】
「やのに、なんか こないだとは違って普通の生活、じゃないけど、宣言出てないから」
【湯井先生】
「ちょっとやっぱり学校の先生ってちょっと乖離してるところはあるんちゃう」
【教師】
「だってもう、家に帰ったら寝るだけ」
感染者数がピークに達した8月、かつてない暑さで熱中症による搬送も急増しました。
【校長】
「コロナやしこの暑い中、なんでクラブさせてるのかとか、そういう苦情の電話が入ったりしています。想像した時に果たしてこれ体育祭グランドに全校生徒が出てできるのかなとか。本当に僕わからない」
コロナと熱中症、2つのリスクと向き合いながらの体育祭です。
【生徒会女子】
「私たちは、話し合いを何度も何度も行って、小さなことでもみんなが納得するまで話し合いを続けてきました」
【生徒会女子】
「新型コロナウイルスや感染対策、熱中症予防の方も努めて執り行っていきたいので、どうぞよろしくお願いします」
【生徒会女子】
「この体育祭が最初で最後の行事になるかもしれないという状況の中で、先生方も私たち生徒自身もどうしたらいいんかなと迷うことも多くあると思いますが、私たちは最後まであきらめずにやりきります。お願いします」
生徒たちの体育祭が始まりました。
メガホンとホイッスルは禁止。
みんなで大声を出す応援合戦の代わりに3年生はダンスでアピールしました。
保護者も人数を制限して観覧できるようにしました。
<生徒会アナウンス>
生徒の皆さんは自分の出場する競技前後は石鹸で手を洗いましょう。
またしっかり水分をとって熱中症には気を付けてください。
担い手は生徒達。教師はサポートに回ります。
【湯井先生】
「『全然自分たちでできるよ』って感じですね。先生そんなに声出さなくても、『全然僕たち自分らでやれるで』って」
先の見えない コロナの時代。
様々なリスクと向き合いながら、自分たちで出した答えに悔いはありません。
【校長】
「最後まで頑張ってくれてありがとう。生徒会本部の皆さん、お疲れ様でした」
【生徒会女子】
「一回なくしたら本当にもう数年後北中の体育祭なくなってたかもしれないから。未来につなげれたと思います」
【生徒会男子】
「これで3年の行事終わりでもいいくらい楽しかったから」
【生徒会男子】
「いいように終われたし」
【生徒会女子】
「変えることも悪いことじゃないなと思いました」