新型コロナウイルスの影響で、インターハイが中止となり、集大成の場を失ったボート部の高校生たち。
【桜宮高校ボート部員】
「絶望というか何も手につかなくて」
究極のチームスポーツといわれるボート競技。長期間の活動自粛を終え、待ち受けていた試練とは?
新人の山本大貴アナウンサーが、高校最後のレースに臨む選手たちの姿を追いました。
9月、高石市で、高校生たちの声が響きました。
中止となった8月のインターハイの代わりに、特別に開かれた全国ボート大会です。
大阪で唯一、女子5人乗りの競技に出場した大阪市立桜宮高校ボート部。
【山本大貴アナ】
「すごい揃っているわ、揃っている」
見ていて美しく感じるほど、一糸乱れぬオールさばき!
1人が司令塔となり、その指示のもとに4人が漕ぐこの競技。1キロメートルでの着順を競います。
レース中に選手同士が顔を合わせないことから、ボート競技は、究極のチームスポーツともいわれています。
――Q:5人乗り競技の難しさは
【桜宮高校ボート部・藤井麻以里さん(高3)】
「一人がずれていたりしたら全部あかんくなっちゃうし、全員が同じ気持ちで同じ漕ぎをしないといけないっていうところが難しいなと思います。
私も体験させてもらいました。
【山本大貴アナ】
「結構狭いですね、乗るのに一苦労ですね。角度間違えると水の抵抗がすごいですね。掛け声とかないんですか?これは息を合わせないとダメなスポーツですね」
インターハイ優勝を目指し、3年間チームワークを磨いてきた彼女たち。
水の上だけでなく、陸の上でも常に行動をともにします。昼食も一緒にとっていました。
――Q:どうして揃って食べるの?
【桜宮高校ボート部・藤井麻以里さん(高3)】
「ご飯とか着替えとかも全員で動くことが多いです。漕いでいる時も全員同じ動きをして気持ちを一つにすることが大切なので」
チームリーダーの藤井麻以里さん。
4月にインターハイ中止が決まった時、すぐに立ち直ることができませんでした。
【桜宮高校ボート部・藤井麻以里さん(高3)】
「絶望というか何も手につかなくて、自分たちがやってきたことが無駄になるんやっていう感じで悲しかった」
先の見えない、活動の自粛。目標を失い、引退を決断する3年生もいました。
しかし、藤井さんら、残った選手は、1人1人もくもくとトレーニングに励みました。
――Q:家でどんなことしていた
【藤井さんの母】
「最初は茫然としてしばらく。どうしたらいいか力入ってなかったけど『頑張る、基礎体力つける、筋トレする』…とか頑張りだした頃があって」
【桜宮高校ボート部・藤井麻以里さん(高3)】
「特別大会があるかもってなった時に、まだあるか分からへんけどあるって信じて。頑張った分だけ強くなれるかな、という考えに変わって…」
3か月以上の自粛期間が終わり、練習を再開すると。
5人のチームワークに異変が。
【桜宮高校ボート部・藤井麻以里さん(高3)】
「フィジカルも弱くなっているし、ずれるところがたくさんあって、そこでの気持ちの焦りがあって全員がうまくいかなくて」
これまで毎日、当たり前のようにコミュニケーションをとっていた彼女たち。
焦りが募る中、手探りで始めたのが、ボートに乗る前の5人だけのミーティングでした。
大舞台のスタートラインはもうすぐです。
迎えた全国特別大会本番。
【山本大貴アナ】
「あー緊張するな、こっちまで緊張しますね」
予選ブロック、そして準決勝と順当に勝ち進み、いよいよ決勝の舞台へ。
【山本大貴アナ】
「1着、準決勝1着です」
――Q:5人でレースに挑むのは最後ですが
【桜宮高校ボート部・藤井麻以里さん(高3)】
「最後笑って終われるように、自分たちがやってきたことを出し切るだけなので、みんなで楽しんでいきたいと思います」
優勝まで、あと1レース。
苦境の中で生まれた大切な時間。最後のミーティングです。
(最後のミーティング)
「3年間やってきたことを出し切ろう」
「自分たちが目指していたレースにしましょう」
「いい結果で泣いて終わろう」
「リラックスして楽しみましょう」
「ここで全部やりきろう楽しんで」
そして最後に、全員で、心を一つにします。
『せーの、シャァ!』
レース序盤、トップを走る桜宮高校。
しかし、中盤で相手チームに追い上げられます。
【山本大貴アナ】
「追い上げている?頑張れ!頑張れ!あとちょっと!」
ゴールが見えない中で、挑戦し続けてきた彼女たち。
5人にとって、かけがえのない時間となりました。