大阪市生野区で建物が国の登録有形文化財になっている銭湯が廃業することが決まりました。
店主は新型コロナウイルスの影響のなか、建物をどう再活用するべきか、思い悩んでいます。
地元で愛され…80年続いた「銭湯」
大阪市生野区で約80年間続いてきた銭湯の「源ケ橋温泉」。
自由の女神があしらわれた洋風な外観とは裏腹に、中は、どこか懐かしい空気が漂います。
【中島弘さん(77)】
「ここに座って洗って、湯舟の湯で流す人が、関西の人は多かったです」
店主の中島弘さん(77)。
父親が始めたこの銭湯で、小学生のころから番台に座ってきました。
【中島弘さん】
「昼に来て、晩も来る、2回ぐらい1日に入ってくれた。そういう時代が続いた。その時は本当に賑わってましたよ」
以前は、親子連れで行列ができることもあったほど。
脱衣所は将棋を指す人たちで賑わいました。
独特の建物が「歴史的な景観に寄与している」として、約20年前に国の登録有形文化財になりました。
【中島弘さん】
「ここでクラブを作っていた。例えば、カラオケも全盛時代でしたから、カラオケをやってあげよう、将棋を好きな人も多かったみたいで、将棋もやってあげよう。ここと一緒で大阪城の天守閣が同時期に(登録有形文化財に)指定されてますよと。えーすごいなぁとその時はびっくりしました」
修繕のために休業も…再開を断念
しかし、時は進みます。
建物の老朽化が深刻になり、去年1月、中島さんは修繕のために休業を決意。
ところが、3000万円以上の負担や周辺の環境が変わったことで、今年に入って再開を断念しました。
【中島弘さん】
「できたらやりますよ。やっぱり、本業ですから。これやりたい、内面はね」
『建物を活かして新しいことを始めよう―』
その思いからスペースを大学生に貸し出し、一日だけ喫茶店が開かれることもありましたが、新型コロナウイルスの影響で今後の見通しは立っていません。
【中島弘さん】
「どんどん時代が変わってきた。外の付き合い。極端に変わってきたような気がする。今みたいなコロナの時代、さらに変わってくるんじゃないですか」
『建物に賑わいを取り戻したい』
中島さんの思いは募ります。