【新実キャスター】
「すごい施設ですね、ここ。奈良県農業研究開発センター。県の施設ですか、これ!
こんにちは~」
【西本さん】
「おはようございます」
【新実キャスター】
「よろしくお願いいたします。新実と申します」
【西本さん】
「西本です、よろしくお願いします」
【新実キャスター】
「西本さんが珠姫(たまひめ)を開発された方ですか?」
【西本さん】
「えっと首謀者じゃないですけど…」
【新実キャスター】
「首謀者!悪い事したみたいじゃないですか!」
【西本さん】
「…じゃないですけど、開発者の1人です」
奈良県農業研究開発センター育種科の科長、西本登志(にしもと・とし)さん
実はリスクが大きく、時間もかかるいちごの新品種開発は
民間ではなく国や県などが行っています。
西本さんたちが生み出した珠姫や古都華(ことか)など、
奈良のブランドいちごはいま消費者からも注目されているんです。
【阪神百貨店 フルーツキングミズノ 佐藤圭二郎店長】
「大変人気上昇中でございまして、今年でいうと、昨年の2倍ぐらいは
売れているような状況になります」
そんな奈良のブランドいちごが生み出されてきたハウスに案内して頂きました。
【新実キャスター】
「極寒のいちご狩りでございます…おお、すごいこんな感じなんだ、おっ出た!」
【西本さん】
「こちら珠姫です」
【新実キャスター】
「これが珠姫ですか…おっきいな!触れても大丈夫ですか?」
【西本さん】
「大丈夫です、それお召し上がりください」
【新実キャスター】
「え!」
【西本さん】
「どうぞ、採りましょうか?」
【新実キャスター】
「いいんですか!?」
とにかく珠姫の魅力はその大きさ!
古都華と比べてもこんなに違います!
【新実キャスター】
「いただきます。でかっ!」
【西本さん】
「正直に…」
【新実キャスター】
「本当に美味しい!まず甘みがふわっと来るんですけど、
その後比較的甘みがすっと引いて、バランスめっちゃいい!」
【西本さん】
「そうですか」
【新実キャスター】
「甘ったるくないし」
そしてやっぱりロングセラーもはずせません。
この「古都華」は9年前に開発された品種です。
【新実キャスター】
「うん!全然違う。華やかな香りがふわっと広がる、
香水のようなエレガントな感じがします」
【西本さん】
「ありがとうございます」
【新実キャスター】
「嬉しそう!お父ちゃんの顔になってます!」
いちごの新品種は味や形など様々な特徴を持つ種を掛け合わせて
作っていくんだそうですが、一体どんないちごになるのか、
実際に育ててみるまでわからないんだそうで…
【新実キャスター】
「なにこれ?みたいな、全く予想外のものができることもあるんですか?」
【西本さん】
「それが珠姫やったんですね、あんなでかいのができるとは思ってなかった」
【新実キャスター】
「珠姫、予想外なんですか?」
【西本さん】
「予想外ですね」
実はこの珠姫、商品化する前に行われた消費者へのアンケート調査でも、
意外な結果が出たんだそうです。
【西本さん】
「どのアンケート調査でも一番不人気でした」
【新実キャスター】
「え?そうなんですか!?」
【西本さん】
「でも!必ずこれが良いと言う人がいたんですよ。一番これがええと言う人が」
【新実キャスター】
「なるほど!数は少ないけど好きな人はめっちゃ好き…が珠姫」
【西本さん】
「その好みの方にお届けできればと。いちごの好みなんて本当に
みんなバラバラだということがそれでよく分かりました」
なんと4000以上もの候補の中から選抜され、およそ10年もの歳月をかけて
やっとひとつが生み出されるといういちごの新品種。
それでも手間暇をかけて取り組むのには奈良ならではの理由があったんです。
【西本さん】「今日も曇天ですけど、奈良の冬ってこんな日が多いんですよね。
こんな天気の中でできるもの、いちごくらいしかないんですよ」
【新実キャスター】
「そうなんですか…」
冬の奈良は日照が少ないため作物が光合成できず、育ちにくい。
そんな逆境を乗り越え、奈良のいちご作りを育んだのは、長い間に培われた技術でした。
【西本さん】
「二酸化炭素っていうのをいちごは求めてるんで、その二酸化炭素を
あげるっていうことをずっと昔からやってたんですよ」
【新実キャスター】
「光合成に必要なのは日光と二酸化炭素。で、日光がない分…」
【西本さん】
「二酸化炭素で補う」
【新実キャスター】
「へぇ!」
【西本さん】
「こんな天気でも二酸化炭素いっぱいあげると、晴天日と同じぐらいの
光合成をしてくれるんですよ」
【新実キャスター】
「それはじゃぁもうある種、いちごで行くって言うのは、
色んな条件で消去法的な側面もあったっていうことなんですか?」
【西本さん】
「そうですね。冬場はいちご以外、ハウスの中で作るもの、
野菜っていうと無いんですね、奈良では」
【新実キャスター】「そうなんだ」
そんな奈良のいちごをもっと知ってもらいたい。
開発者である西本さん自らその魅力を発信しています。
【西本さん】
「古都華って何?って聞かれたら出かけていってご説明もするし、
古都華って何?って尋ねて来られたらちゃんとプレゼンしてご説明もして」
【新実キャスター】
「それ西本さんがやってたんですか?」
【西本さん】
「やってましたよ!今でもやってます」
【新実キャスター】
「えぇ!?」
【西本さん】
「昔の研究員って全然やらなかったんですけどね、私はそれすべきだと」
【ガトー・ド・ボワ 林雅彦シェフ】
「10年以上経ちますかね、やっぱり結局は古都華が出会い。
『このおっさん、”いちご漬け”!?』みたいな(笑)。いちごのことば~っかり話してる」
【林シェフ】
やっぱりあの人のあのいちごにかける情熱っていうか熱意というか、
そういうのを見ていると、ちょっとでもウチが何か使うことによって、
一般のお客様に、世に出て行けば多分彼も嬉しいんじゃないかな?というのは
やっぱりありますけどね」
【新実キャスター】
「自ら出向いてまで、自分が作ったある種子供ですけど、広めていきたいっていう
その原動力は何なんですか?」
【西本さん】
「やっぱり農家に儲けてもらいたい。農家が減ってきた、生産者が
減ってきたっていうのは働きに行く方が安定してるし、儲かるしというのが
あったと思うんですね。ところがやっぱり農業を振興していこうと思うと、
儲かる農業を進めていかんとあかん。その儲かる農業がいちごで
実現できるんじゃないかと思ったんで、やらせて頂きました」
【新実キャスター】
「やっぱり夢とかロマンはあっても稼いで行けないとやっぱり
途絶えちゃうんですよね。そこがやっぱり一番大事?」
【西本さん】
「それが一番大事です」
実際に儲けをだし、いちごドリームを実現した方が いらっしゃるということで、
西本さんに連れて行って頂きました。
【新実キャスター】
「よろしくお願い致します。新実と申します」
【奈良いちごラボ東伸幸さん】
「東です、よろしくお願いします」
【新実キャスター】
「東さん。これどういうご関係性ですか?」
【西本さん】
「私が作った品種を生産販売している」
【新実キャスター】
「実際に作られている」
【東さん】
「農家です」
東さんは、他のいちご農家と協力し、大粒ないちごの魅力を生かした
驚くべき販売手法を生み出したそうで、それが…
【新実キャスター】
「なにこれ!?」
【東さん】
「この1粒でこういう箱を作りまして1粒箱で…」
【新実キャスター】
「え!?1粒のために箱!?まぁえらいことなってます。
生まれたての卵みたいになってますけど…」
いちご一粒をまるで宝石のように箱に入れ贈り物にもぴったりなプレミアム感を演出!
そのお値段は…
【東さん】
「(店頭で)2000円とか3000円とかで売られています」
【新実キャスター】
「1箱ですか、1粒ですか!?すっごいな」
【東さん】
「大阪の市場であったりとか、東京であったりとか。いろんなところの市場に出して
ちょっとでも古都華を知ってもらおうと」
【新実キャスター】
「東京でも認知されるようになってきた?」
【東さん】
「なってきました。なってきました。注文もしっかり頂くし。初めて古都華を食べた時、
あ、これは絶対いけるぞと。この色にすごく魅了されて、すぐ作りたいと。
ここまであの甘くて味が濃いって思ったことがなかった。これだけ美味しいいちご、
日本で皆さんに食べて頂きたい、そこですね」
おいしくてパッケージも特別ないちごは、海外からのお客さんにも人気なんだそうです。
【新実キャスター】
「いかがですか?西本さんっていう存在」
【東さん】
「先生、師匠です!手探り状態ではじめて、何も分からなかった所に
何回先生に電話したか。ケーキ屋さんであったりとかも紹介して頂いたし、
作るいちごだけではなくて、先の販売先も教えてもらって。もうずっと頭上がらないです」
【新実キャスター】
「それであの東さんはしっかり売り上げも利益も上がってるワケですけど、
西本さんは給料変わらないですからね…」
【西本さん】
「…そうなんですよ」
【東さん】
「それはまた別の話(笑)」
いちごにも生産者にも情熱を注いできた西本さん。
いちご作りには何より大切なことがあるといいます。
【西本さん】
「いいもの、いいものという風に言うんですけど、いいものじゃなくて良い。
いいものやと思ってくれる人がいるものやったらそれで良い」
【新実キャスター】
「求められている、どっかに」
【西本さん】
「私がこのいちごの味が美味しいとか、まずいとか言っても仕方なくて、
それを好む人のところに届ける」
【新実キャスター】
「欲しい人どこかにいる、思い持って作ってる人いる。ここ繋げれば良いだけの話で。
必ず求められてるぞっていうそこを繋ぐ役割でもあるんですね」
【西本さん】
「そうですね」