【新実キャスター】
「大阪市天王寺区の赤十字病院のですね、向かい側にこういうのがあるの
皆さんご存知ですか?知らないですよね…僕も全然知りませんでした」
【新実キャスター】
「国際医療救援ロジスティクスセンター。お世話になります。よろしくお願い致します。
関西テレビの新実と申します」
【中出雅治さん】
「大阪赤十字病院の中出です」
【新実キャスター】
「中出さん。先生、どうぞよろしくお願い致します」
こちらが医療救援チームを取り仕切る、
国際医療救援部の部長、中出雅治(なかで・まさはる)さん(60)。
【新実キャスター】
「まず先生、テント!手術室・分娩室…これがですか?」
【中出雅治さん】
「はい、見てみますか?」
【新実キャスター】
「いいんですか!?思いっきり立ち入り禁止って書いてますけど…いいんですか?」
【中出雅治さん】
「(笑)」
【新実キャスター】
「どうなってるんですかね…う~わ!もうガッツリ手術室ですね!失礼していいですか」
【中出雅治さん】
「そうですね、はい」
【新実キャスター】
「はぁ!ものすごい数の備品と手術台…分娩台にもなるということですか?」
【中出雅治さん】
「そうです」
このテントは、災害現場などで使われる仮設の手術室。
トラック1台で運搬でき、わずか40分ほどで設営することが可能なんだそうです。
病院の手術室と同様、本格的な手術を現場ですぐに行うことができるんです。
さらに…
【中出雅治さん】
「これは帝王切開のセットですね。これはあの、子供はいつでも産まれますんでね、
その準備もしてあると」
【新実キャスター】
「帝王切開もできるように皆さん基本的には準備をしている?」
【中出雅治さん】
「海外になるとお医者さん少ないんでね、なんでもできるようにしとかんと
あかんのですわ。帝王切開ができないと、結局2人亡くなっちゃうんですよね」
この手術室は2016年、熊本地震の時にも実際に使用されたそうです。
そして…
【新実キャスター】
「アジアで初めての取り組みがあるっていう風に伺ったんですけど…」
【中出雅治さん】
「正確にはアジアの赤十字社で初めての取り組みなんですけど、これプラスいろんな
ICU集中治療室だったり、病棟だったり、それ自体が一つの病院ができるっていう、
そういう資機材を国内用と海外用とで一つずつ揃えているんです」
【新実キャスター】
「へぇ!」
他にも外来の診察室や薬局、レントゲン室など様々な役割を持つテントを
組み合わせて建てることで、入院も可能な仮設の総合病院を作るという
この取り組み。国内用に加え、より厳しい状況にも対応可能な海外用も用意されています。
建てるのは患者さんのための施設だけではありません。
【中出雅治さん】
「我々が宿泊する用のテントもあって」
【新実キャスター】
「もうその場所に宿泊拠点も置くんですか」
【中出雅治さん】
「あって、自己完結するわけですね」
【新実キャスター】
「全部発電機で自家発電して…もう完成してるんだ…はぁ!」
どんな状況でも、いち早く被災者を助けたい。
そんな中出先生たちの思いが込められています。
【中出雅治さん】
「最初はもちろん一遍にこんな大きなものは作れなくて、まぁ10年ぐらいかかって
こういう規模になってきたわけなんですけども」
【新実キャスター】
「それだけの設備を完全に揃えなくちゃいけない理由はやっぱりあるんですか?」
【中出雅治さん】
「(患者を)送る先の病院がないと成立しないじゃないですか、こういうのってね。
でも病院型になると入院が必要な手術もできるわけですし」
【新実キャスター】
「ちっちゃいパッケージってのはある種応急的な。大病院が別にあって、
そこに送ることができる、という前提のサイズなんですね」
【中出雅治さん】
「そうです、海外だとそういうのがしょっちゅうあるんですよね。
やっぱり全部の病院が潰れちゃってるっていうのは」
JR福知山線の脱線事故や東日本大震災などの国内災害にとどまらず、
海外での難民支援など数え切れないほどの現場を経験してきた中出先生。
その経験を活かし、この移動型病院も改良を重ねてきたんだそうです。
【中出雅治さん】
「熊本地震の時は一つ子供用にテントを建てたんですわ」
【新実キャスター】
「それは遊ぶための?」
【中出雅治さん】
「おもちゃも入れて。体育館がもう避難者の方でぎっしりで子供も遊ぶところが
ないからストレスが溜まって、避難所の中でキャッキャいうと今度はお年寄りが
それでストレスが溜まって…いうようなことで、それを建てたと。親御さんにも
喜んでいただきましてね」
【新実キャスター】
「病気、怪我の人を治療するだけではなくて、本当に被災者支援っていう広い視野で
やってらっしゃるっていうことですね」
そんな中出先生が医療救援を専門としたきっかけはあの出来事でした。
【中出雅治さん】
「阪神大震災がきっかけでですね、病院の外で診療するっていう経験を
初めてしたわけですね。都市でああいうことが起こったのは初めてでしたし、
関西に住んでる者にとっては知っている場所があんなことになっちゃったんでね。
余計に衝撃度は大きかったですね。電気も無い、水も無い、食べ物も無い。
それを現地調達するわけにはあの状況ではとてもじゃないけどいかない。
そんなことしたらもう相手に迷惑かかるだけやっていう」
【新実キャスター】
「ご自身にとっても、設備としても足りないものを突きつけられたというか」
【中出雅治さん】
「まぁそこが原点というかね、こういったものの原点になってますね」
中出先生のもと、大阪赤十字病院には国内救援スタッフが約100人、
そして国際救援のスタッフは立候補制で、約30人がいざという時に備えています。
みなさん普段は別の担当を持っているんだそうです。
そのうちのおひとりにお話を伺いました。
【中出雅治さん】
「集中治療室で働いている看護師の川瀬といいます」
【新実キャスター】
「川瀬さん。スーツケースで。もしかしたらどっか行かれるんですか?」
【川瀬佐知子さん】
「来週からバングラデシュの方に」
【新実キャスター】
「来週から」
【川瀬佐知子さん】
「はい、来週からあと3日後ですね」
川瀬さんはバングラデシュで難民の医療支援を行っており、
年に2回以上、現地を訪れているそうです。
【新実キャスター】
「これはどういうものを揃えて、今回は行かれるんですか?」
【川瀬佐知子さん】
「そうですね、これはちょっとベストなんですけど」
荷物を拝見すると、中には大きな赤十字のマークが描かれたベストが。
これ、大きな意味があるんだそうです。
【中出雅治さん】
「あんまり普通の人知らんと思うんですけど、赤十字のマークっていうのは
国際標章なんですね。紛争地で赤十字マークがついてるものとか人は攻撃対象に
してはいけない、というのが国際条約で決まっているんで、それが最近はそのルールがね、守られていない状況が起こってきている」
【新実キャスター】
「ご家族はでも心配されるでしょう?」
【川瀬佐知子さん】
「そうですね、行くところ行くところガイドブックに載っていないところが多いので
最初は毎回どこに行くんや?とか言われて、現地の状況がわからない分、
やっぱり心配はしていると思うんですけど、バングラデシュの人たちもそうですし、
キャンプの中で住まわれている避難民の方々も人に対して本当に親切で、人と人との
関係を大切にされる方々やなっていうのは毎回行って思うんですけど、そういう風な話も
家族にはします。でそれでやっぱり安心感にもつながるというか」
そして、こんな場所も拝見させていただきました。
【川瀬佐知子さん】
「女性用の更衣室なんです」
【新実キャスター】
「ここに更衣室があるんですか?」
【川瀬佐知子さん】
「そうなんです。ロッカーが並んでまして、国内救援は出勤してきて、そのまま出動って
いうこともあるんです。なのでここに数日分の着替えとか日用品とかを入れておいて、
そのまま持っていく」
【新実キャスター】
「これが本当の準備万端ですね!これだけみなさん備えてらっしゃる。
これが赤十字だっていう」
このロジスティクスセンターには、5万点もの資材や薬品などが備蓄されていて、
いつ災害などが起こっても対応できるよう、使用期限などを毎日チェックされています。
しかしどれだけ準備をしても、南海トラフ地震などの巨大地震に対しては
決して十分ではないと中出先生は考えています。
【中出雅治さん】
「災害の対応っていうのはもうキリがないなぁと最近思っていて、病院だけ
なんぼ準備しても無理やと。もう周辺の市民の人にも同じ意識を持ってもらわないと、
実際(巨大地震が)起こったら病院持たへん、ということでね、一般市民の方に
『災育』って、災害の教育という言葉を作ってですね、イベントをやっているんです」
【中出雅治さん】
「自宅にあるストッキングだったり、新聞紙だったりで、こういう風にやれば応急処置が
できるからっていうことをね、そういうコーナーもあるんですよ。普段の患者さんの
10倍ぐらいの人が来るだろうっていう試算してるんですけど、そうすると軽傷の人は
自分たちでやってください、来ても重症の人で、もう診れませんよ、っていうメッセージを
出してるんですね。そういうことを分かっておいてほしいわけですね」
【新実キャスター】
「これだけ準備して訓練して備えてくださっている方が言ってるんだから
これはもう間違い無いですね、備えるしかないですね我々が」
【中出雅治さん】
「はい。よろしくお願いします」