ひき逃げ事件で奪われた娘の命
『2019年8月8日木曜日、玲海(れみ)が突然私の前から消えてしまい、もう二度と私たちの家族の元に戻ってこれなくなった日です』
この書き出しで始まるのは、小学6年の松田玲海さんをはねて死亡させ逃走した罪に問われている男の裁判で、読み上げられた母親の意見書。
2019年8月、大阪府堺市で自転車に乗っていた当時11歳の松田玲海さんが、大型トレーラーにはねられ死亡しました。
運転していた被告の男は、自転車をひいたあとも「シャリシャリ」という異音に気付きながら自転車を引きずったままトレーラーを運転し続け、事故現場から約1キロ離れた場所で停車し、玲海さんが乗っていた自転車を引きずり出して植え込みに投げ捨てました。
その後、もう一度、事故現場に戻ったものの再び逃走しました。被告は、大阪南港のフェリーターミナル近くのコンビニでアルコール飲料3本を購入。車内からは酎ハイの空き缶が見つかっていて、警察の調べで、呼気から基準値を超えるアルコールが検出されました。
被告は「事故後、気を紛らわせるために酒を飲んだ」と供述。警察の捜査でも、事故当時に酒を飲んで運転していたという証拠が出てこなかったため、飲酒運転では立件されませんでした。
ランドセルに遺された11歳の思い
判決を前に玲海さんの母親が被害者参加制度を利用し、法廷で最後の訴えをしました。
「被告によって私の大事な娘は大型トレーラーでふみつけられ、しかも一度ではない、後ろのタイヤでも踏みつけられ、もし玲海が一度目のタイヤで踏まれた後に被告がブレーキを踏んでいてくれたなら生きていた可能性もあるはずです」
「被告にしたら一瞬の不注意のように謝罪の言葉を言っていますが、玲海にしたらその一瞬で11歳までの記憶、未来、全部を奪われたんです。何もかも、日常の生活、食事、おやつを食べる、夢、希望、全部奪ったんです!!」
娘の死を受け入れられずに、『部屋も亡くなる前の日のままにしている』と話したうえで…
「4回目の月命日にランドセルを開けてみることができました。そしたら、『自分のしたいこと』というプリントが出てきて『もっと料理を勉強して、ほう丁を上手に使って晩ごはんを作って、お母さんが仕事に行っているときには自分で作ってあげれる女の子になりたいです』とたくさんの行を使い細かく書いていました」
「私は初めて玲海の気持ちを知り、うれしさと悲しさと、なんで玲海が死ななくてはいけなかったんや!!と、また被告を恨みました」
検察の求刑は懲役4年 母「そんな年数で…」
代理人の弁護士は意見書で自転車運転過失致死の罪で最も重い懲役7年を求めました。また、飲酒運転では起訴されていないので、その処罰を求めることはできないとしつつも、遺族感情には配慮した判決を求めています。検察の論告では懲役4年を求刑。
母親は「4年っていうのは、そんな年数でひとりの子どもが命を奪われているのに、『そんなんで済まされるのか』っていう強い憤りはあります」とコメントしました。