【新実キャスター】
「大阪市内、もう町のど真ん中。都会の本屋さんですね。こちらですか…隆祥館書店さん。
言ったら普通の本屋さんですよね、本当に。雑誌…子供向けとか結構充実してますね。
お邪魔いたします。新実と申します」
【隆祥館書店 代表 二村知子さん】
「よろしくお願いします」
【新実キャスター】
「店主さんでいらっしゃいますか?」
【二村さん】
「はい、二村と申します」
【新実キャスター】
「二村さん。お世話になります、よろしくお願いします」
こちらが、店主の二村知子(ふたむら・ともこ)さん。
父親の代から続く創業70年の本屋さんを切り盛りされています。
若者の読書離れやネット書店の台頭で町の本屋さんが苦境に立たされる中、
ここでは本が売れているんです!
【二村さん】
「白井聡先生も、この<国体論>の前の本の売れ行きが、紀伊国屋新宿店の次に、
日本で2番目に隆祥館が売ってたらしいんですよ」
【新実キャスター】
「紀伊国屋の新宿店…無茶苦茶大きいところじゃないですか」
【二村さん】
「はい。で、この<佐治敬三と開高健 最強のふたり>は日本一売りました」
【新実キャスター】
「日本一売れた!」
【二村さん】
「はい。発売から1週間目くらいの時に、講談社さんから電話があって
『二村さん、ありがとうございます。東京の八重洲ブックセンターを抑えて
日本一の売り上げです』って言って」
【新実キャスター】
「八重洲ブックセンター!東京駅に近いぐらいのところですよね…日本で一番売った!」
【二村さん】
「はい」
今や業界が注目しているという二村さん。
でもこのたった13坪の本屋さんにどんな秘密があるのでしょうか?
【二村さん】
「8年前から“作家と読者の集い”っていうトークイベントを始めたんです」
【新実キャスター】
「作家と読者の集い?」
【二村さん】
「はい。アマゾンでも本を買えるけれども、アマゾンでその作家さんに会うことは
できませんよね?」
【新実キャスター】
「できないですよね」
【二村さん】
「そういうリアルな体験って、やっぱりリアルな書店でしかでけへんのちゃうかなって」
イベントに招くのは二村さんが本当に良いと感じた作品の作家さん。
既に200回以上も開催されています。
そしてこのイベント、作家さんからの評価も高いんです!
【ジャーナリスト 木村元彦さん】
「僕もいろんな書店さんでイベントをさせてもらったんですけど、いわばもう、
そういうところってのは本当に場所を貸しているだけで『はいどうぞ』って
右から左なんですね。で、作家がいろいろしゃべっておしまいなんですけども、
隆祥館の場合は二村さんがもう徹底的に読み込むわけですね。
これなんかもそうですけど、あの“プルーフ”っていって、見本の段階に、
つまり本が出来上がる前から徹底的に読み込んで、中身について議論ができると。
それをやられることによって作家の信頼ができていって、
200回以上も続いてるんじゃないかと思うんですね」
【新実キャスター】
「ちょっと尋常じゃないですよ、付箋が」
【二村さん】
「これはもう本当にね、私、感動したんです」
【新実キャスター】
「これ、すみません、どういうお話なんですか?」
【二村さん】
「サントリーっていう会社はご存知ですよね?」
【新実キャスター】
「はい」
【二村さん】
「サントリーのあの創業者は鳥居信治郎さんなんですよ。で、この佐治敬三さんって
いうのは、鳥居家の次男で…」
この本を知らなかった私のために、本の説明をしてくれたのですが…
止まらなくなっちゃいました!
【新実キャスター】
「今、10分くらい呼吸してなかったんちゃうかな?すごかったですよ、今の勢い。
でもホンマに、ホンマにこの本を読んで読んで読み込んで、
心から感銘を受けてらっしゃるっていうのが」
自分が本当に納得した本だからこそオススメする!
それがお客さんにも伝わっています。
【今年の春から通う常連さん】
「5月に日経新聞にここの本屋の紹介があったんです。興味持ってここに来させて頂いて。
来たら記事通りに二村さんがすごい気さくにいろいろ本を薦めて頂いて。
1冊2冊買って帰って読んだら、すごく面白かったんで、また来るようになって」
二村さんの評判を聞き、今では出版社や作家さんからイベントに出たいという
“逆オファー”も増えているそう。
しかし、快進撃を続ける二村さんの前に、出版業界特有の問題が立ちはだかります。
それは、日本一売ったという本が文庫化された時…
【二村さん】
「文庫になった時に、(問屋さんから)何冊入ってきたと思います?」
【新実キャスター】
「もう300冊売ってるんでしょ?」
【二村さん】
「400冊近く」
【新実キャスター】
「100冊ぐらいはせめて…」
【二村さん】
「0冊だったんです」
【新実キャスター】
「…え!?」
【二村さん】
「ランク配本っていうのがあるんですけども」
【新実キャスター】
「ランク配本?」
【二村さん】「要するにランク、本屋さんの規模で、大きさで(入荷する数が)
決められてしまう。例えば1000坪の本屋さんはたくさん配本されるけれども…」
本の流通というのは少し特殊で取次と呼ばれる問屋さんが本屋さんで売る本を選び、
委託販売するというシステム。
本屋さんが売る本を自由に選べるわけじゃないんです。
【二村さん】
「昔、雑誌がたくさん売れた頃は、雑誌を日本全国に配本、配らないといけない
っていうので、その全国に配るというのが重宝された時代があったんですね」
【新実キャスター】
「大量消費の時代はもうドカーンと全国に配る、一律の基準で配る仕組みがよかった時代もあったけども」
【二村さん】
「はい、(今の時代に)適してないんですよね」
【新実キャスター】
「本屋さんごとにその売る力も違えば売りやすい地域もあるし。
うちはこの本を売りたい、あるいは売れるんだ、実際にと。そのやりとりを…」
【二村さん】
「それをやってるのが、ドイツなんですよ」
【新実キャスター】
「ドイツ!?」
ドイツでは本屋さんが自由に本を選べるシステムが既に導入されていると聞き、
二村さん、なんと自らドイツに飛んでその現状を視察!
そして…
【新実キャスター】
「取り組みにはつなげてはるんですか?」
【二村さん】
「取次さんは、役員の方にお会いする機会とかがあったので、日本もドイツのように
して欲しいと。実績で評価して、配本もしてもらいたいってのは言ってるんですけども」
この驚くべき情熱とパワーの秘密は…?
店内にあったオスメの本からハッケンです!
【新実キャスター】
「井村先生も来られたんですか?」
【二村さん】
「はい、私の師匠だった方なので」
【新実キャスター】
「私の師匠?」
【二村さん】
「はい」
実は二村さん、元もとはシンクロナイズドスイミング
(現・アーティスティックスイミング)の日本代表選手なんです。
【新実キャスター】
「井村チルドレンなんですね?」
【二村さん】
「はい」
【新実キャスター】
「根性の塊ってことですよね…」
【二村さん】
「本当に井村先生との出会いが無かったら、今本屋の業界がすごい厳しいので、
やれてなかったん違うかなっていうところが多々あります」
【新実キャスター】
「そうですか」
【二村さん】
「先生(の教え)は『敵の己の妥協にあり』」
【新実キャスター】
「…聞いただけでもうなんかもうグッてなる」
【二村さん】
「勝負の厳しい世界なので、下の選手からどんどん追い上げて来られるっていうことも
あるんですよね。その時に『先生、私はもう限界です』って言ったら
『限界はアンタが決めること違う』と。『ワタシが決める!』…ハァ!」
【新実キャスター】
「(笑)」
【二村さん】
「あ、私まだ頑張ろうっていう、頑張れるんやっていう」
【新実キャスター】
「そんな井村先生のね、オススメの本は…<痛い腰・ヒザ・肩は動いて治せ>」
【二村さん】
「はい!(笑)」
【新実キャスター】
「根性ですね」
さらに店内を見ていて、私あることをハッケンしました。
子供に関する本が多いんです!
ここにも二村さんのこだわりがあるそうで…
【二村さん】
「みんなが、小さなお子さんも来れるような、本当の“町の本屋”。時々あの小さい時から
来てくれていたお子さんが来て、『今どうしてんの』って聞いたら
『もう大学生になりました』『何学部?』って聞いたら『医学部です』って言ったり。
もうすごいなんかね、嬉しいんですよね。ずっと来てくれて、オススメした本とか、
もしかしたら何かの役に立ってんのかなって思うのがね。
そういう本屋でありたいと思ってるんですよ」
お店では図鑑や絵本を使った子供向けのイベントも多く開催。
地域に根差し、文化の発信地となることが町の本屋さんの使命だと二村さんは言います。
最後に私も本を一冊オススメして頂きました。
【二村さん】
「坂本敏夫さんっていう元刑務官の方が30年かけて書かれた本で…
(早送り)…全員解放するんですよ、でも…」
【新実キャスター】
「二村さん、全部言うてまうんちゃいます?これ。読むとこ無くなるんちゃうかな思って…」
【二村さん】
「それよう言われます」
【新実キャスター】
「よう言われるんですか!」