「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」というものをご存知でしょうか。
現場からの推薦をもとに、いわば「スーパー公務員」を選ぶという賞なんです。
全国で約270万人の地方公務員の中で、今年選ばれたのはわずか13人。
その中で大阪で唯一選ばれた公務員は、八尾市の職員だということで、
一体なぜスーパー公務員に認定されたのか。その秘密を探って来ました。
“スーパー公務員”を訪ねて、訪れたのは八尾の商工会議所です。
【新実キャスター】
「すみません、お世話になります。関西テレビなんですが。“スーパー公務員”の方が
いらっしゃるって伺って参ったんですが…」
【女性職員】
「あぁ、はい!松尾さん!」
【新実キャスター】
「松尾さん…おはようございます。新実と申します。よろしくお願い致します…。
ラフな格好ですね」
【松尾さん】
「そうですね、すいませんこんな感じでいつも」
【新実キャスター】
「結構皆さんスーツ着てはりますね…」
【松尾さん】
「こんな感じで…」
【新実キャスター】
「“スーパー公務員”?」
【松尾さん】
「(笑)はい」
この方が、“スーパー公務員”松尾泰貴(まつお・やすき)さん(35)。
八尾市役所の産業政策課で働いていて、中小企業の支援を担当されています。
でも、なぜ”スーパー公務員”に認定されたんでしょう?
【松尾さん】
「私たちが立ち上げたプロジェクトがですね、多くの方に評価されまして、
今回そういう受賞を受ける形に」
【新実キャスター】「特別なプロジェクトをやってらっしゃるってことなんですね」
【松尾さん】「そうですね、はい」
松尾さんが立ち上げたプロジェクトとは!?
案内してもらったのは近鉄八尾駅前のショッピングセンターです。
【松尾さん】
「こちらになります」
【新実キャスター】
「みせるばやお?」
【松尾さん】
「“見せる場所八尾”みたいな形で…」
【新実キャスター】
「へ~…なんかすごいイベント会場みたいな感じですね」
【松尾さん】
「そうですね、こういう施設を作ってまして」
【新実キャスター】
「このキャラクターは?」
【松尾さん】
「フエキくんって言いまして。動物ノリが有名な」
【新実キャスター】
「ノリのフエキ?八尾なんですか!?」
【松尾さん】
「そうなんです、八尾なんですよ。モノづくりの町といえば東大阪とかいう話も
あると思うんですけど、実は八尾も3200社ぐらい町工場、モノづくりの企業さんが
いてまして。私も小さい時からモノづくりをしている町の中で育ったので、機械の音が
鳴ってたりとか、ちょっとニオイとか。今になってどうしても規制とかもあって、
どんどんモノづくりの雰囲気とか、見えなくなってきてしまっているんで、
どういった町かっていうのを知ってもらうためにこの場所を作りました」
メイドイン八尾の商品を、展示・販売する施設「みせるばやお」。
松尾さんが子供の頃から身近に触れてきた町工場、そしてモノづくりの魅力を
知ってもらえる場所を作ろうと2年前にプロジェクトを立ち上げ、
町工場に直接足を運んで賛同を募りました。その結果、八尾市内の118社が参加。
1年かけてオープンにこぎつけたんです。
各社自慢の商品がずらりと並び、これまでに4万人以上が訪れています。
【新実キャスター】
「せっけん?」
【松尾さん】
「そうですね、木村石鹸工業さんというところ。創業80年ぐらいの。
原材料から作られているところで、舌で酸度を確かめたりとかっていう
すごく細かい事までやられて商品を販売しているっていう会社になります」
【新実キャスター】
「…木村石鹸工業さんの広報さんですか?」
【松尾さん】
「いや、違います(笑)」
【新実キャスター】
「こんな地元の企業の事を語れる公務員さんってそうそういらっしゃらないですよね」
【松尾さん】
「そうですかね…ほぼ趣味みたいな感じになってますけども」
【新実キャスター】
「八尾がお好きやから、地元がお好きやからって事ですよね」
【松尾さん】
「…あ、これね、フライパンなんですけど…」
【新実キャスター】
「また紹介し始めた」
松尾さんは、いわば八尾にある町工場の営業マンとして、
段ボールの会社と協力して遊具を作ったり、体験会を開催したりするなど、
「モノづくりの町」の魅力を発信しようと日々奮闘しています。
でも、松尾さんが「みせるばやお」に込めた思いはそれだけではないんです。
【松尾さん】
「企業間同士の交流っていうのを生むような場所にもなっています。
八尾にどんな会社があるかっていうのを知らなくなって来てしまっている、
要は近所付き合いが薄くなって来てしまったというのもあるので」
【新実キャスター】
「企業同士の近所付き合いもやっぱり昔に比べたら無いんですか?」
【松尾さん】
「そうですね。横の会社の看板見るけど、何作ってる会社なんだろう、みたいな話が」
【新実キャスター】
「そんな感じなんですか」
【松尾さん】
「そうなんですよ。繋ぎ合わせていって新しいコラボが生まれて行って
っていうのが(狙い)」
松尾さんは「みせるばやお」で定期的に企業のセミナーやシンポジウムなどを開催。
これまで出会う機会が無かった異業種の企業同士が、松尾さんを介して知り合い、
新たな交流が生まれているのです。
そして…。
【松尾さん】
「この足の部分と土台の部分を家具製造業の方が作って頂いてまして、
この生地をDIYの会社が貼る作業をしている」
【新実キャスター】
「なるほど!家具会社と」
【松尾さん】
「インテリアとかの商材を販売している会社がコラボ商品を」
【新実キャスター】
「商品が実際に生まれているんですか」
【松尾さん】
「そうですね。ワクワクしている人が提供するモノづくりのワークショップだから
子どもたちもワクワクするっていうのがあるんで。自分たちが
そもそもワクワクしないとだめだよねって」
他にも、家庭用のフライパンを作る会社とアウトドアの会社がコラボして、
キャンプに特化したフライパンを開発するなど、
たった1年で40以上のコラボ商品が生まれました。
仕事が終わったあと、多くの企業が夜な夜なここに集まって、
雑談しながら新しいアイデアを考えているそうです。
【企業の男性】
「今会ったんですよ」
【ディレクター】
「今初めて?」
【不動産業】
「そういう人達が会う場があるっていうのは、多分八尾市のすごい
強みかなって」
【コンサルティング業】
「最高ですよ」
【製造業】
「中々こういう場が無いっていうのがね。本当にもう全然異業種、
全く関係のないところで。そこから何か違う繋がりができたらっていうのがありますし」
【石鹸製造業】
「地域の魅力高まらないとやっぱり優秀な人も来てくれないし、
優秀な人来てくれると会社も発展していくし」
家具を作る会社「オーツー」の社長も、松尾さんの熱意に動かされ、
コラボ商品などを積極的に開発しているひとりです。
【新実キャスター】
「松尾さんはどういう存在ですか?」
【オーツー 社長 梶原弘隆さん】
「いやぁめちゃめちゃ頼りになるお兄ちゃん。行政って言う感じがやっぱりしないので、
すごくフランクですし、固くないです。いい意味で柔らかい。何でも相談できますし」
【新実キャスター】
「なんでも知っている友だちみたいな?」
【梶原社長】
「ですね」
公務員でありながら、昼夜を問わず精力的に活動する松尾さん。
果たしてその原動力とは?
【松尾さん】
「地域の活動っていうのを実は小さい頃からしてきたわけで。
青年団に入ったりとかして、直にありがとうって言われる事ってすごく多くて、
人の役に立ってるなっていうのがあるじゃないですか。
じゃあ“自分たちが好きな地域を売ろう”っていう考え方で、地域のセールスマンに
なろうと思って、最初役所を目指して。市役所って役人って言う言葉があるように、
人の役に立つ仕事をするのが市役所の役人なのかなと思ってまして。
松尾が言っているから、その人も大丈夫なんじゃないかなっていう風に信頼してくれる」
【新実キャスター】
「世の中から信頼されている公務員が柔軟に立ち回れたら理想的ってことですよね」
【松尾さん】
「そうですね、最強の営業マンだと思っています」
【新実キャスター】
「ってことですね」
人の役に立つ「役人」としての仕事がしたい。
そんな思いが「みせるばやお」には込められています。
撮影中、こんな場面に遭遇しました。
【新実キャスター】
「お客さん?」
【松尾さん】
「今日、あの福岡県小郡市さんから市議会議員さんが視察にくるということで…」
【新実キャスター】
「僕なんかと多分喋っている場合じゃないんで…」
今や全国から注目を集めるようになったこの施設。
先月だけで4件もの視察があったそうです。
【視察をした議員】
「今後行政としてどうやって関わっていって、八尾市さんみたいに地域も含めての
盛り上がりが出来るのかなと言う事で、今回勉強させてもらいに来ました。
意見交換が出来る場、また情報のシェアとか。そういう所まで踏み込んでいるっていうのは
すごい事だと思います」
行政と民間の垣根を越え、モノづくりの魅力を発信し、
発展へとつなげる松尾さんの取り組み。
これが、「地方公務員が本当にすごいと思う地方公務員」、
“スーパー公務員”に選ばれた理由です。
【新実キャスター】
「八尾の子供たちは、八尾ってモノづくりの町だって…」
【松尾さん】
「知らなかったりとかするので、見てもらう事によって町に誇りを持ってもらう
というのを。ゆくゆくはモノづくりに興味を持ってもらって、“働く”とかにつなげたりとか」
「みせるばやお」を通じ、子どもたちに八尾の魅力を継承していくことが大事だと
松尾さんは考えています。
【来場者女性】
「自分が生まれ育った町で出来たモノだなとか、すごい身近に思えたりとか。
すごい子どもも来ることを楽しみにしていて。学べることとかあるので
親子で楽しんでます」
【来場者男性】
「自分らの時は知らんうちにそういうモノに触れてたんですけど、
子どもの世代が八尾のモノに触れる、自分たちが触れてきたモノにまた触れる
っていうことで嬉しいですね」
“スーパー公務員”、松尾さんに上司は…
【八尾市副市長 植島康文さん】
「我々にとっては企業さんとの信頼関係をまず作っていくっていう事が、
一番我々の重要な仕事なのかなと。そういう意味では彼みたいな人材が、
公務員の世界、自治体の世界でも必要な時代になってくるのかなとは思ってます」
【新実キャスター】
「このみせるばという場所がうまく行っていることも含めて、
軌道に乗っているようにお見受けするんですけど、まだこれ以上に
やりたいことっていうのはあるんですか?」
【松尾さん】
「そうですね、やはりこうまだまだ“共創”っていう、共に創る部分では
まだまだ未熟な部分がやっぱりあるかなと思っていまして。
町全体が一つの工場みたいなイメージで、共創していけるといいなと思っています」
【新実キャスター】
「ありがとうございます」