私がお伺いしたのは、大阪から車で40分、藤井寺市にあるこちらの会社。
【新実キャスター】
「失礼しましょうか。よろしくお願いいたします。関西テレビの新実と申します」
【株式会社なんつね 4代目社長 南常之さん】
「なんつね南と申します」
出迎えてくださったのは、株式会社なんつねの社長、
南常之(みなみ・つねゆき)さん(44)です。
【新実キャスター】
「なんの会社でいらっしゃるんですか?お肉の応援団と聞いて伺ったんですが…」
【南社長】
「そうなんですよ。弊社は創業以来、お肉を切るスライサーを中心とした
食肉加工品を作る機械屋ですね」
【新実キャスター】
「スライサーをここで作ってるんですか」
こちらの会社は、肉屋さんなどで肉を薄く切るスライサーや、
肉をミンチにする機械などを作っているメーカー。
創業90年、国内シェアは40%以上という老舗で、
なんと、国内ではじめてスライサーを作ったのもこの会社なんだそうです。
工場の中を見せて頂くと、スーパーやお肉屋さん以外で活躍するスライサーも!
【南社長】
「このスライサーがラーメン屋さんでチャーシューを切る機械で、
チャ~スラと言いまして…」
【新実キャスター】
「チャ~スラ!」
【南社長】
「ここにチャ~スラと書いてるんです…(笑)」
そんなまさにお肉業界を支え、「お肉屋さんの応援団」を自任する機械メーカーが、
新たに始めた挑戦とは!?
【南社長】
「実はですね…その発信地はここ藤井寺ではなくて、大阪・福島にあります。
わざわざお越し頂いて恐縮ですが…」
【新実キャスター】
「福島!?カンテレから2駅ですよ…もう終わりですか?ここ…」
ということで、藤井寺から福島まで再び車で40分。
やってきたのは…
【南社長】
「これがビストロを併設したお肉屋さんになります」
【新実キャスター】
「ビストロを併設したお肉屋さん…を機械メーカーさんがやってはるんですか?」
【南社長】
「はい」
【新実キャスター】
「ん?…こんにちは、よろしくお願いします、お世話になります…
めちゃくちゃおしゃれな空間が広がっております。おしゃれ!」
機械メーカーなんつねが9月にオープンしたのが、
なんとテイクアウトもできる肉料理の専門店。
ショーケースにずらりと並ぶのはフランスの星付きレストランで腕を磨き、
世界大会でも2位に輝いた経験を持つシェフが作るソーセージやパテなど、
「シャルキュトリー」と呼ばれる肉の加工品です。
シェフのイチオシは、豚のテリーヌをパイ生地で包んだパテアンクルート・コション。
試食させて頂きました。
【新実キャスター】
「結構しっかりしてますね…うまい!噛めば噛むほど良い味が出てきます。
こういうお肉料理ってあんまり頂く機会無いですよね?」
【南社長】
「日本ではあまり食べられないものなので、ぜひ広めていきたいなぁと思っています」
実はこの料理こそが、街のお肉屋さんの武器になるはずだと、
南社長は考えているそうです。
【南社長】
「従来お肉屋さんというのは生肉を売って惣菜を少し売るっていう形が
とても多かったんですが」
【新実キャスター】
「コロッケとかメンチカツとか」
【南社長】
「それはそれですごく美味しいんですけど、なかなか経営が安定しないというところが
あるんですね。だからお肉屋さんの売り上げを上げるためのメニュー提案をするための、
“次世代型の肉屋”としてのモデル店になるんですね、ここは」
【新実キャスター】
「肉屋のモデル店?お肉屋さんのモデルということは、
お肉屋さんがこれを真似するということですか?はぁ!」
そう、南社長がこの店で目指すのは、肉を使った加工品でお客さんを呼ぶことができる、
肉屋の新しい形。
モデル店として、商品もお肉屋さん自身で製造することを想定し
店の2階にあるコンパクトな工場で作っています。
さらに店の立地にもこだわりが…
【新実キャスター】
「ほんまに横も全然飲食店ないもんな…人通らないですもんね」
【南社長】
「人通ったらダメなんですよ」
【新実キャスター】
「すごい発想ですよね、ここでできたらみんなできると」
あえてあまり人の通らない場所を選び、商品自体の力を確かめようとしているのです。
お客さんは…
【男性客】
「色んなところ、東京とか大阪とか、色んなお店を食べ歩くんですけど、
これだけ種類があったりとか、初めてなんで。ここのお店だけかなと思います」
【女性客】
「お酒飲むのに、なんかこうつまみとか、奥様なんかも作るの大変やし、
ちょっと買って(食べる)っていうのに、お値段もめっちゃお手頃やなって
思ったんでそこがいいなって思いました」
さて、南社長がこのような取り組みを始めたのには、あるきっかけがありました。
【南社長】
「女性社員がですね『なんつねって町のお肉屋さんに育てられた企業ですよね?
恩返ししませんか?』っていう風に言ってきたんですね。正直、頭を打たれた思いで。
当時は本当に大手の食品会社だとか流通系だとかの売り上げを上げるためには
どうしたらいいのかってことしか考えられなかったんですが…」
南社長に衝撃を与えた女性社員が、現在お店のリーダーを務める
大西由華(おおにし・ゆか)さん(38)。
入社当初は営業を担当していました。
【新実キャスター】
「どういう経緯でというか、なんで思いつかはったんですか?これ」
【株式会社なんつね 大西由華さん】
「お肉屋さんを回っている時に、これ以上打ち手がなくて辞めていくしかないんだという
お肉屋さんがあったんです。お客さんを呼ぶのに対して、どうしたら良いかわからないって
いうのがあったんですよ。その時にプラスアルファでお客さんを呼び込めるモノっていう
のを我々が提案出来たら、何かいいきっかけになるんじゃないかって」
【南社長】
「お客さんってのは、お客さんが消費者の皆様に売る商品が欲しいのであって、
その手段で機械が必要なだけであって。お客さんの商品を物事の中心に据えて、
どういう機械が必要なのか。このステップが重要だと思っているので」
そして肉の加工品に着目したウラにも大西さんの思いがありました。
【大西さん】
「元々私の母方の実家が岩手なんです。小さい頃から牛を飼っていたんですけど、
そういうのがきっかけで動物がすごい好きで。やっぱり好きな動物を食べるんだったら
全部余すことなく美味しく食べて欲しいと。こういう加工品とか、
そういうのを使うことによって、余っていた食材を再利用じゃないですけど、
フードロス(対策)も含めてできないかと思ったのがきっかけで」
肉を加工品にすることで通常は捨ててしまうような部位まで余すことなく使いたい。
例えばこちらの“フロマージュ・ド・テット”は豚の頭の肉を使ったひとしな。
大西さんさん自らが、ソーセージの本場、ドイツまで行きノウハウを習得してきました。
【南社長】
「リサーチから企画から調理から全て彼女がイチから」
【新実キャスター】
「へ~…ボーナス出ました?」
【大西さん】
「いや全然出ないです、何も変わらないです(笑)」
【新実キャスター】
「これからですね」
【大西さん】
「ここを盛り上げて、頑張ります」
こうして生まれたソーセージのテスト販売を始めた精肉店の方にお話を伺いました。
【牛匠かぐら 販売事業部長 前川淳さん】
「よそにはないノウハウというか。さすが本格的にドイツに行って学ばれた
商品ばっかりなので。なんつねさんは作り方も全て公開して頂けるので
どんなところで作っているとか、全てオープンにして頂いているので。
ゆくゆくはそういうのにもチャレンジしていきたい」
さらに、肉の全てを有効活用するという姿勢は、生産者からも注目されています。
ブランド豚を育てる会社とコラボして新たなメニューを開発しています。
【アグリガーデン 納田明豊さん】
「その時々によって、この部位は出るけどこの部位はちょっと動きにくいな
みたいなことがどうしても注文の具合によってあるので。なんとか加工の方で
使えたらいいなと」
【新実キャスター】
「商店街になかなか馴染みのない、例えばサラリーマンとかも、
仕事終わりに商店街のお肉屋さんに寄って一杯飲んでいこかっていう世界に
なるかもしれないですね」
【南社長】
「そうですね、例えば“ピエドコション”だと、豚足なのでそんなに高くないっていう
ところもあるので。それをビールと一緒に少し食べて家に帰るとかっていうような
状態になればすごく良いなと思ってますよね」
【新実キャスター】
「お肉美味しいし、お肉ちょっと買って帰ろうかみたいな…お肉屋さん変わるな」
【南社長】
「明日の朝ごはんのベーコン買って帰ろうかみたいな感じで、
お母さんも喜ぶみたいな、お父さんも満足みたいな(笑)」