9月30日、85年の歴史に幕を閉じた神戸・三宮の「そごう神戸店」。
困難を乗り越え、神戸の商業の「シンボル」として地域に愛された百貨店が、看板を変えました。
大切な思い出とともに新たな出発を迎えた人たち。その舞台裏に密着です。
三宮と言えば…85年の歴史に幕
ずっとこの場所で、神戸の町を見つめてきました。
【店を訪れた人は…】
「三ノ宮と言ったらそごうなので、すごく寂しいです」
「こどものときからあるでしょ。それがなくなるというのはとってもさみしいなと思います」
いい時も。悪い時も。
町とともに歩んできた「そごう神戸店」が、「神戸阪急」として新たな歴史を刻み始めます。
【そごう神戸店 食品部長】
「こっちもありがとう、お客さんもありがとうと言ってもらえるように、お店しめましょう。最後のお客様までお見送りしましょうね。きょうも一日よろしくお願いします」
85年の歴史に幕を閉じた「そごう神戸店」。その舞台裏と、店を愛した人々の想いです。
神戸の中心・三宮で、85年にわたり営業を続けてきたそごう神戸店。10月から「神戸阪急」に生まれ変わるのを前に、最後の営業の日を迎えました。
節目の日を、特別な思いで迎えた人がいます。
食品部の部長、内海五郎さん(49)。
神戸で生まれ育ち、27年前、「そごう」に就職しました。
【そごう神戸店食品部 内海五郎さん】
「僕らが子供の頃もランドマークでしたから、それが、まだ(お客さんに)毎日来ていただける店というのは、ある意味すごいんじゃないかなと思いますね。」
子供のころからずっと、当たり前のようにそばにある百貨店でした。
震災を乗り越え…異例の早さで営業再開
そごう神戸店ができたのは1933年。地下街などの開発が進み、三宮に少しずつ賑わいが生まれきた頃でした。町の成長とともに売り場を広げ、1974年には神戸で売り上げ1位の百貨店に。「三宮といえばそごう」と多くの人に親しまれる、神戸の商業の中心でした。
しかし…
1995年1月17日 阪神淡路大震災。
そごうの建物も大きく崩れ、営業できなくなりました。
当時もこの店で働いていた内海さん。
店にたどり着いたのは数日後のことでした。
【そごう神戸店食品部 内海五郎さん】
「ここも一つのビルだった。このビル区画がぐしゃっとなった。あのときは町中がつぶれてたし、ここもか、みたいな感じ。自分の職場どうなってるんだろうとか考える余裕がなかったですね」
「復旧のめどは立たない」とまで言われるほどの被害。
しかし、わずか1年3か月後。異例の早さで営業を再開したのです。
【当時の客は…】
「すごく楽しみにしてたんです、近くに大きな百貨店がなくて。うれしいです」
【そごう神戸店食品部 内海五郎さん】
「ここにお客様がオープンの時にずらっと並んだのを上から見てた。それがいい光景でしたね。震災から1年たってたけどまだ遊びに行けるようなところがないし、もともと私たちにとって三宮はみんなで遊びに行くところだったり、ご飯食べに行くところだったり、ちょっとおしゃれして行こうかなと思ってもいいところだったはずなのに、それが一番つぶれちゃってる状態。そういうことをやってもいいんだって空間ができた。それがあの時のオープンだった」
「なんとか早くに営業を再開したい」との思いから「建て替え」ではなく「補強工事」を選びました。
【そごう神戸店食品部 内海五郎さん】
「天井がアーチになってるでしょ。ここが、85年前の、一番古い建物なんです」
歴史が残る地下一階の食品フロアには、神戸発祥の洋菓子店が並ぶコーナーや、50年前からこの場所で営業しているロシアのお菓子「ピロシキ」の専門店など人気店が軒を連ねています。
【店を訪れた人は…】
「一週間に3回も4回もきてます。さみしいです。昨日もきました」
「毎日くるよ。おかずを買いに来ます」
【そごう神戸店食品部 内海五郎さん】
「毎日使ってもらえて、ギフトも1000円で買ってもらえて、となりのおばさんにすごく喜んでもらえる。そんな売り場がたくさんある。神戸の人はそういう使い方が好きなんだと思う」
“地域の人たちに愛される百貨店に”。ずっと掲げてきた目標です。
【店を訪れた人は…】
「必ず寄ってたところなので、実家がなくなるような感じが…。震災のあとにここは早く復活した。そのとき元気もらった人いっぱいいるんじゃないでしょうか」
「町に息づいていた、娯楽というか、楽しみ。そういう存在だったんじゃないですかね」
途切れないお客さんからの拍手の中、85年の営業を終えました。
4日間で「そごう」から「阪急」へ
「神戸阪急」としてオープンするまで4日。
店を閉め、システムの変更や、開店に合わせて開催される「北海道物産展」の準備が進んでいました。
【内海五郎さん】
「そごうの最終日には冷蔵庫からにした。もう一回全部の冷蔵庫にモノ突っ込んでるのが昨日今日明日。納品場が混んでて、エレベーターもすごく混んでて、物流が大変」
迎えた開店の日。内海さんも、この日から「神戸阪急」の食品部長。オープン直前まで準備に追われます。
店舗とスタッフは、食品フロアも含め、ほとんどが阪急に引き継がれました。
店の前には、開店を心待ちにする大勢の人が列をつくります。
華やかなオープニングセレモニーと共に、いよいよ開店です。
『3.2.1.オープン!』
紙袋や看板は変わりましたが、買い物を楽しみに訪れるお客さんのにぎわいは、変わりありません。
【神戸阪急食品部 内海五郎さん】
「神戸の方と一緒に神戸の百貨店が作れたらいいので、屋号は阪急百貨店に変わったけど、神戸の方に楽しんでいただける店であればいいと思います」