超高齢社会となり、人生の終末期を病院や施設で過ごす人が増えています。
そんななか、最後まで、「日常の生活」を大切にしたいと願う人たちがいます。
神戸市兵庫区にあるホームホスピス「神戸なごみの家」。
末期がんや難病などで、一人暮らしが出来ない人たちが暮らすための「家」です。
【入居者】
「いただきます。おいしい」
「なごみの家」を作ったのは、看護師の松本京子さんです。市民病院や訪問看護の仕事をしたのち、「ホスピス」で看護師長として働いていました。ドイツのエイズホスピスでの研修が、ホームホスピスを作るきっかけになりました。
【松本京子さん】
「ホスピスは何かをしてあげる所ではなく、本人がどういう生活をしているのかが重要なんだとおっしゃって、その手助けをするのが私たちの仕事なんだと」
西口江利子さんは、今年1月に「なごみの家」にきました。
阪神淡路大震災で自宅が全焼し、その後、長女家族と同居。孫にとっては、優しいおばあちゃんでした。
認知症や脳梗塞を患い、家での介護は難しくなりました。しかし、病院や施設での対応に不満があり、末期がんが判明した後、穏やかな最期を送ってほしいと、家族が入居を希望しました。
【長女・浜田節子さん】
「もっと早く出会えていたらもっと回復が…。タイミングが…入らせていただいただけでよかったかな」
入れ替わりはありますが、暮らしているのは60~90代の6人ほど。
家賃や食事代、そして生活を支える費用などを含め、月に13万円。
24時間、看護師か介護士がいて、住人は、介護保険や医療保険を使って、サービスを受けます。
ここでは家と同じように、「日常の暮らし」を大切にします。
【美容院alexの訪問サービス】
「すっきりと可愛くしましょう」
【入居者】
「そりゃ…無理な願いじゃ」
【美容院alex】
「ぜんぜん大丈夫と思いますよ」
出来上がりました。とても個性的なショートカットです。
【美容院alex】
「見えます?斬新なカットです」
【入居者】
「ありゃりゃ…」
地域に根差したホームホスピスは現在、全国に57軒。多くはNPO法人が関わっていて、年々、増えてきています。「なごみの家」は、10年前、全国で2番目に出来ました。
「なごみの家」は「介護施設」ではなく、ルールや規則はありません。
西口さんの87歳の誕生日を祝うために、家族が集まりました。
西口さん、お酒が大好き。
【なごみの家スタッフ】
「口で味わったほうが嬉しいと思う」
【長女・浜田さん】
「ばあちゃん…飲みよる!」
【孫たち】
「足が反応している!」
家族にとっても、忘れられない一日となりました。
在宅医療のクリニックを開いている新城拓也医師がやってきました。
かつて新城医師は、病院の緩和ケア病棟で働いていました。しかし、事故やトラブルが起こらないよう、管理を強めていく病院の姿勢に疑問を感じ、辞めました。いまは「なごみの家」に協力しています。
【新城医師】
「全然無機質じゃない、色が多くて。置いてあるものも多いでしょ。病室は真っ白だもん。ああいうのは管理されて清潔で綺麗だけど、そういう所にいると、心が暗くなるから、自分で慰めないといけなくなるけど、そんなことは、本当はしなくていいことだってわかるよね」
「お母さんにとって一番気持ちいいのは、風と香り。(以前)一日中、病院にいたけど、風も香りも何もないから、どんなに人が優しく接しても無理…」
【長女・浜田さん】
「風と香りね」
【新城医師】
「すごく匂うでしょ、ここ。悪い匂いではなく…風と香り、それが一番」
長い間、容態が安定していた西口さん、7月下旬になり、危篤状態に陥りました。
一進一退を繰り返し、一週間後に旅立ちました。
【松本京子さん】
「西口さん、頑張りましたね、きれいな顔、やつれたりしていない。ご家族も大変だったね。よくやってくださいました」
【長女・浜田さん】
「ここに出会えてよかった。病院だったらこんな事、してもらえない。本当に良くしてもらって、喜んでいると思います」
どんなふうに、最期まで生きて、人生をしめくくるのか…。
本人や家族が、自ら選ぶ時代になりつつあるのかもしれません。
『ザ・ドキュメント ともぐらし ~風薫る ホームホスピス なごみの家~』
https://www.ktv.jp/document/
放送日時:2019年9月26日(木)深夜1:05~2:00
放送エリア:近畿2府4県と徳島県…
ぜひご覧ください。