新実アナ「私、実は初めて来ました。京都大学の桂キャンパス。私の母校なんですけど、文系でしたので。ちょっとドキドキします。」
理系の施設などが集まる桂キャンパス。訪ねたのはこちらの研究室です。
新実アナ「メカトロニクス実験室。失礼します。」
京都大学大学院工学研究科・松野文俊教授(62)「どうも、松野です。」
こちらの松野先生は学生たちと一緒に、日々レスキューロボットの研究を続けられています。世界一に輝いたロボットの前に、見せていただいたのは…なんと、ヘビ形のレスキューロボット「ImPACT」。うねる様に動き出し…、
松野教授「砂漠にいるヘビが、こういう動きをするんですね。実際のヘビの動きを模擬してるんですけど…(Q.こんな真横に移動するんですか?)そうなんです。」
他にも真っすぐになったまま転がって動いたり、とぐろを巻いたまま移動するなど、まさに変幻自在。さらに、このロボットはハシゴまで登れてしまうんです!その動きは、まるで本物のヘビ!先端にはカメラやライトが取り付けられていて、瓦礫のある災害現場などでの情報収集に使われるそうです。
新実アナ「実際のヘビも、こうやってハシゴ登れるんですか?」
松野教授「いえ、登れません。我々は生物から(動きを)学んで生物を超えたいというのがありまして、ヘビがどうして足がないのに動くのかといったことを解明して、それを超えるロボットを作っていこうっていうことで、ヘビにはできない動きを作るということを目指しています。(Q.今の動きはヘビを越えている?)超えてます!」
先生が研究で目指すのは”生物から学び、生物を超える”こと。ヘビが泳ぐ姿にヒントを得た水中ヘビロボットや、アリのように複数のロボットが群れになって動くロボット。さらには、生物には存在しない足の数が奇数のロボットまで!様々なロボットを生み出してこられました。
そんな先生たちの研究の集大成となるロボットが今年7月、ロボットコンテストの『レスキュー部門』で世界一に。さらに、今月行われた日本での大会でも、優勝を果たしました。そんな世界を制したレスキューロボットがちょうどこの日、研究室に帰ってきました。
新実アナ「じゃあ凱旋?でもないんですね、国内大会で勝って余裕の表情で今、帰還したわけですもんね。」
松野教授「でも、だいぶこんなボロボロになって…」
こちらが世界一のレスキューロボット「FUHGA(フーガ)2改」!動き出すと…
新実アナ「なかなかキレキレの動きするんですね。」
松野教授「このロボットの特長は、高速に移動できるということがひとつ。」
なんといっても特長は俊敏で軽快な動き。階段や段差もへっちゃらです!さらにもうひとつの特徴は、熱センサーがついていること。
松野教授「人体(要救助者)がいる場合には、温度で分かりますので。実はCO2のセンサーもついてまして、例えば呼吸をしている人がいたならば、それでCO2で分かります。」
さて、この『FUHGA(フーガ)2改』。さきほどの動物のように動くロボットとは少し違って見えませんか?
新実アナ「極めてシンプルに見えるんですよね…」
松野教授「真理探究ではなくて、目的達成なので。そのためには、どこまで削ぎ落としてパフォーマンスを最大限に引き出すかというのがポイントになります。」
新実アナ「とことん実用性、現場を追求したらこの形になったということですか?これは未来の話じゃないんですもんね。現在地の説明を今いただいているんですね…。」
松野教授らが開発したロボットは、すでに実際の災害現場でも活躍しています。東日本大震災では倒壊した建物を調査したり、西日本豪雨では被災した建物の調査や倒壊の危険のある場所での作業などに役立てられているのです。後継者の育成にも力を入れている松野教授。研究は学生さんたち主体で進められ、そのアイデアが活かされています。
学生「やはり非常に難しい動きなどを求められるので、そういう難しい課題をクリアするロボットを作ることは非常にやりがいがあるなと思っています。」
学生「研究に関しては結構厳しいんですけど、普段は優しくて、ロボット好きなおっちゃんみたいな感じですね。」
新実アナ「幼い頃から”ロボット一筋”だったんですか?」
松野教授「そうですね、影響を受けたのはアニメですかね。『鉄腕アトム』とか『鉄人28号』とかを見て育った世代ですから、ロボットへの憧れはありました。”お茶ノ水博士になりたい”という夢をなんとなく思ってました。」
そんな松野教授がレスキューロボットの研究を始めたのには、”あるきっかけ”がありました。
松野教授「神戸大学に勤めている時に、1995年1月の17日の『阪神・淡路淡路大震災』があったのが大きな転機になりました。一緒に研究をしていた学生のひとり、競基弘君が自分の住んでいるアパートが倒壊して亡くなってしまったということがありました。彼は将来的にはドラえもんのような人と一緒に悩んでくれたり励ましてくれたり…、そういうロボットができたらいいなと言っていました。」
教え子を奪った自然災害。残された自分には何ができるのか…。
そんな思いから、レスキューロボットの研究をスタートした松野教授。震災後、2年をかけてレスキュー隊や自衛隊の方々に話を聞き、現場に足りなかったことは何なのか、ロボットにできることは何なのか、を調べました。そして、救助するべき人がどこにいるかもわからない災害現場では『人間の位置を検知するセンサー技術』が必要だという結論にたどりついたのです。
新実アナ「今も先生はこの研究をやっているのですか?」
松野アナ「そうですね、まだそれが完全にできてないですから。そこはまず、最初かなということですね。」
まずはレスキューロボットの存在知ってもらい、”こんなことができたら”というニーズを直接聞きとりたいと、講演会なども積極的に行っている松野教授。一緒に研究をしている方々は…
『JOHNAN』先端技術研究所・森山孝三所長「視点が斬新といいますか、そういった中で松野先生は実用レベルに達する技術を作られているので、本当に研究だけで終わらない、使える技術を作られているのですごいなという風に感じています。」
『京都大学イノベーションキャピタル』八木信宏・投資担当部長「レスキューという社会に必要、かつ日本固有の社会課題に対応した素晴らしい研究だという風に感じています。先生と一緒になって、これから社会の中で役立つということを証明していくということが目的になると思いますし、一緒にやっていきたいと思っています。」
新実アナ「今後はこのレスキューロボットで何を目指していくのですか?」
松野教授「”消えるロボット”を作りたいという風に思っています。(Q.消えるロボット?)例えば自動車。自動車はロボットだと思われますか?」
新実アナ「自動車は自動車です。」
松野教授「ルンバはどうですか?」
新実アナ「ロボットでしょ!ロボット掃除機でしょ!?」
松野教授「そうですよね。なぜロボットか?今までやっていた道具と全く違うものですよね?掃除をする機械だと思うと。あれは掃除するけど、なんだろう?掃除ロボット…っていう『ロボット』という言葉は非常にまぁ、楽なんですよ。何かわからないものが出てきたら、〇〇ロボットと名前をつけておけばいいと。そうすると今は掃除ロボットとして、”ロボット”という名前がついてるんですが、ロボットという名前が取れる、消えてしまうことによって、本当にあれがロボットではなくて、私たちの身近な道具になったっていう証じゃないかと思うんです。ロボットという名前が付いてるうちは、まだ珍しいなぁっていう意識があるのではないか?すなわち、それはまだ我々の生活に本当に溶け込んでいないんじゃないかという意味で、ロボットという名前が消えて欲しいんです。」
新実アナ「レスキューロボではなく、レスキュー機になるように。」
松野教授「そうですね。(私たちの身近にある)道具になるっていうことですね。」