部員がゼロになり、消滅した神戸大学応援団を「復活」させた大学生。
実は、その後も存続の危機との闘いが続いていました。奮闘する姿を半年にわたり、密着取材しました。
復活した応援団、今度は「存続の危機」に
今年3月の合格発表の日
【宮脇健也団長】
「トモキの合格を祝して~」
合格者にエールを送るのは神戸大学応援団、第59代団長、宮脇健也(21)さん。
3年生から編入し、4年前に消滅していた応援団を、去年、ひとりで復活させました。
エールの後には、合格者にチラシを配り、必死の部員勧誘です。
【宮脇健也団長】
「応援団、このまま入って。きょう入らなくてもいい。来年、一緒に後輩をお祝いしよう。よし!ラインのQRだけ登録しといて」
というのも、ほかに部員は、去年の秋に入部した1人だけ…タイからの留学生、ゴルフさんです。
【宮脇健也団長】
「神戸大学に応援団が復活してほしいなって思って、じゃあ自分がやるかって応援団に入った。はっきりいって、新入団員をこの春に入れないとやってきた意味がない」
ゴルフさんは8月に帰国すると決まっています。
つまり、新入生を入れなければ、宮脇さんの卒業とともに再び団は消滅します。
【タイからの留学生 ゴルフさん】
「タイでもともとは太鼓をやっていた。でもこういう太鼓ではありません。日本に来たから日本の太鼓を叩きたいと思って応援団に入りました。痛みがあったから頑張ったことが、もっと嬉しいんじゃないかと思います」
待望の新人が…6人も入部
そして…努力は実り、応援団は消滅の危機を乗り越え、次のステージへと踏み出しました。
リーダー部5人とマネージャー1人、あわせて6人の1年生が入部したのです。
最初に入部したのは、身長152cmの、今川芙美乃さん。
【1回生 今川芙美乃さん】
「全部幼いから、大人っぽくなりたいのもありました。大丈夫かなって不安ですけど、練習がんばって、様になるように頑張ります!」
【1回生 今川芙美乃さん】
「押忍」
入部から2か月。
応援団の基礎となる声出しや、曲にあわせて手をたたく「サブ」の練習をひたすら繰り返します。
【宮脇健也団長】「じゃあ入場からやります」
【1回生 今川芙美乃さん】「押忍!」
【宮脇健也団長】「今川、腹から出せ」
【1回生 今川芙美乃さん】「押忍」
――Q:周りの視線は?
【1回生 今川芙美乃さん】
「だいぶ慣れました。最初は押忍かぁ…。押忍かぁ…。みたいな感じだったんですけど」
【宮脇健也団長】
「これやぞ、ゴルフは声でなくなっても出し続けてるやろ。これやからな」
【1回生】
「押忍」
そして、必死に練習についていくのは、1年生の船越晃一朗さん。
ひとり、ランニングについていけません。
【宮脇健也団長】「ラスト一周全力で走れ、行くぞ!船越!」
【1回生 船越晃一朗さん】
「応援団のかっこよさに惹かれたのと、宮脇さんのすごさをみて僕もあんなふうになりたいと思って。僕、もともと運動苦手で、思ったよりも走るなって思いました」
【宮脇健也団長】
「きょうは練習お疲れ様でした。また明日もがんばりましょう。乾杯!」
この日は全員で会食。団長が新人たちに質問しました。
【宮脇健也団長】
「古田、なんで応援団はいったん?」
【1回生 古田徳幸さん】
「ほかのスポーツ、部活やるのって想像できた。自分がどういう生活送るか予想できたので。予想できないから応援団に入った」
【宮脇健也団長】
「勝生はなんで入ったん?」
【宮脇健也団長】
「きょうは練習お疲れ様でした。また明日もがんばりましょう。乾杯!」
この日は全員で会食。団長が新人たちに質問しました。
【宮脇健也団長】
「古田、なんで応援団はいったん?」
【1回生 古田徳幸さん】
「ほかのスポーツ、部活やるのって想像できた。自分がどういう生活送るか予想できたので。予想できないから応援団に入った」
【宮脇健也団長】
「勝生はなんで入ったん?」
想いを語る1回生部員たちを見守るように、お金が張り付けられたボードがありました。
復活した応援団を、陰ながら支えている人たちがいます。
【宮脇健也団長】
「応援団のOB・OGさんが『現役が胃袋を満たす』ためっていうのでお金を置いてくださいっている。こういう文化が応援団にある。今日はOBさんにごっつぁんになりましたってそういうこと。このボードに言っておけ」
【団員】
「ありがとうございました。ごっつぁんでした」
1年生が、本格デビュー
7月。京都大学で開かれた、硬式野球の試合。伝統の定期戦で、今年で45回目を迎えます。応援団にとっては、1年生が本格的に試合デビューとなる、大切な一戦です。
帰国が迫り、学会で来られないゴルフさんの代わりにOBが太鼓をたたきます。
【応援団OB】
「レッツゴー神戸!」
相手校、京都大学の応援団も駆け付け、組織力を生かした応援を繰り広げます。
試合は、1点ビハインドで迎えた7回表。神戸大学のランナーが生還。
【応援団OB】
「逆転や!いえ~い!!」
一気に4点の大量得点で見事に逆転!そのまま神戸大学が勝利をおさめました!
【宮脇健也団長】
「応援団の活動は誰かのために、人のためにやる活動。人のためにやるときにやりすぎてあかんってことは絶対にない。厚かましいと思われることはあるかもしれないけど、それでも、やらへんより、やるほうが100倍いい。やりすぎて失敗は絶対に怒らへんから。殻破って進化していってほしいし、期待しています」
団長を支えた留学生、帰国
タイへ帰国するゴルフさんのため、卒団式が開かれました。
【応援団OB】
「応援団の発展に寄与されましたので、ここにこれを証します」
【ゴルフさん】「ありがとうございます」
【ゴルフさん】
「応援団に入った日はまだ覚えています。まだその時は日本のこと、応援団ことも全然知りませんでした。応援団は太鼓が叩けるよと言われましたので、参加したいなと思いました。体験してみたら、『あ、これは自分がやりたい太鼓じゃない笑』」
「でも応援という言葉は私的には『一人にはできない』『二人ではできない』応援団はみんなでやることです。その役割はあなたたちにお願いします。1年間、本当にありがとうございました」
宮脇さんと1回生から、ゴルフさんへエールをおくります。
【団員】「フレ~フレ~ゴルフ~!」
【宮脇健也団長】「今まで、ゴルフ、ありがとうございました。」
【ゴルフさん】「ありがとうございました!」
8月7日、関西空港。ついに迎えた別れの時。帰国するゴルフさんを団員で見送ります。
【宮脇健也団長】
「タマサート大学(ゴルフさんの通うタイの大学)応援団作れよ!」
【ゴルフさん】
「わかりました!」
ゼロからの復活を遂げた、神戸大学応援団。
60年の伝統と誇りを、これからも受け継いで行きます。