75歳以上の高齢ドライバーが起こした交通死亡事故は、去年、全国で460件にのぼりました。
悲惨な事故が相次ぐ中、率先して免許を返納するという高齢者も…
俳優の杉良太郎さんは、6月、75歳の誕生日を目前に、免許返納を決断しました。
【今年6月 杉良太郎さん・当時74歳】
「ちょっとでも不安があれば返納したほうがいい」
警察庁によると、去年、75歳以上のドライバーで免許を返納したのは、約29万2000人。10年前と比べ、約10倍に増えています。
【薄田ジュリアキャスター】
「そんな中、同世代のドライバーたちは運転についてどう考えているのでしょうか」
【72歳男性】
「今のところは、まだ返上する気はない」
――Q:運転に自信は?
「あります」
【夫・75歳 妻70歳】
――Q:ヒヤッとした経験は?
夫「あるある」
妻「この前も踏み間違えてな」
夫「(ガレージで)前に行くつもりがバックした」
運転に自信がある人、不安を抱えてる人と、人それぞれ…
中には、免許を更新する理由について、こんな意見も…
【65歳女性】
「身分証明書代わりに免許証を更新してる。ツタヤのカードを作るのにも、そういうのいりますでしょ?パスポートまで持っていくのも変ですもんね?」
そんな方に、今限定の、お得な制度があるんです。
【薄田ジュリアキャスター】
「今、神戸市では8月末までに運転免許を返納すればビックチャンスがあるんです」
神戸市が、今、65歳以上の市民を対象に実施している免許返納キャンペーン。免許証の返納と合わせて、マイナンバーカードを申請すれば、
7泊8日の台湾クルーズや、ジャンボフェリーの乗船券など、豪華クルーズが当たるというのです。
抽選に外れた人でも、神戸港を周遊する遊覧船のチケットがもらえるという、なんとも港町らしい大盤振る舞いです!
【神戸市情報化戦略部・民部正幸課長】
「免許を失うと身分証を失ってしまうということで、なかなか踏み切れない。これを契機にマイナンバーカードとセットで申請いただくと、キャンペーンでクルーズの旅をプレゼントさせていただきますということで、みなさんに、できるだけ、免許返納について、考えていただくようなきっかけづくりにならないかなと」
神戸市は、このキャンペーンを通して、マイナンバーカードを普及させる狙いもあります。
申し込み期限は、8月末まで…
このキャンペーンに1000人ほどが応募すると見込んでいますが…
――Q:(キャンペーン開始から)3週間ほど経ってどうでしょうか。皆さんからの反応は?
【神戸市情報化戦略部・民部正幸課長】
「お問い合わせは30数件という状況でして…実際に申し込まれた方は数件(5件)というレベル」(※T 放送前日の最新件数)
――Q:今がねらい目?
「はい。そういう意味ではそうかもしれません」
他の自治体でも、お得な特典を受けることができます。
例えば、商店街やさまざまな施設利用の割引、バスやタクシーの代金も割り引かれます。その際には、免許を返納した時に交付される運転経歴証明書を提示する必要があります。
実はこれ、免許証に代わる身分証明書として利用することができます。
さらに、街で取材をしてみると、こんな声も…
【取材4日前に免許を返納した70代女性】
「(免許)返して3日か、4日経ったばかり…更新した時に5000円いったからもったいない、返そうと思って返そうと…」
――Q:車検とか保険払ってるのに5000円が惜しかった?
「そうそう…」
たしかに、免許の更新代や、車の維持費も、結構お金、かかりますもんね…そこで…
【薄田ジュリアキャスター】
「このまま車に乗り続けてかかる維持費」
「それとも返納した後にかかる交通費」
「どちらのほうがお得なんでしょうか??」
訪ねたのは神戸市灘区に住む赤堀さんのご自宅。勝朗(かつあき)さんは今、ある転機を迎えています。とにかく運転が大好きな勝朗さんは3年前、76歳の時、高齢を理由に家族から免許を返納するよう説得されていました。
息子・正幸さん「具体的にいつまで乗ろうと思ってる?」
父親・勝朗さん「まぁ80ぐらいかなぁ」
息子・正幸さん「80!? 80って相当やで…」
当時は「返納検討」にとどまりましたが…勝朗さんが80歳を迎えた今年、免許は返納したのでしょうか…?
――Q:80歳になって今、お車は乗られてる?
【赤堀勝朗さん(80)】
「毎日乗っています」
今も車を運転していました。自営業の勝朗さんは、通勤や営業に向かう際に、どうしても、車が欠かせないと話します。
【薄田ジュリアキャスター】
「80になったらそろそろやめると…お父さんの口から…」
【赤堀勝朗さん(80)】
「そうそうそう。ただね、私が80になったらやめるかなといったのは…信号を見落とすとか、蛇行運転するとか、ブレーキが遅いとか、そういったことが出てきたらね、はっきり言ってくれと」
【薄田ジュリアキャスター】
「あの時は条件付きだったんですか?」
【息子・正幸さん(47)】
「うーん。彼はそういってますね」
【赤堀勝朗さん(80)】
「子供が運転しているときも私よりもかなりスピードが速い。前後の車間距離が近い。こういったことをどういうふうに子供は感じてるのかなって?」
【息子・正幸さん(47)】
「子供いいながら、おっさんやからね!」
【赤堀勝朗さん(80)】
「もうちょっと乗っていたいですね」
そこで、勝朗さんが車に乗り続けることでかかる年間の「維持費」と、返納した場合に公共交通機関を使う「交通費」を比較して、免許返納を促すことを試みます。
勝朗さんの場合、車のローンはありませんが、車検代や駐車場代、任意保険代・ガソリン代などがあります。これを年間で計算すると、約62万円かかっていました。
一方で、免許返納後の「交通費」は、毎日の通勤で使うJR六甲道からの電車代や、運転経歴証明書を使って半額になる路線バス代。さらに仕事の営業周りも半額のバスなどを使うことにより、年間約24万円と大幅に削減できました。
免許を返納した場合、年間で38万円浮くことになります。
【赤堀勝朗さん(80)】
「これみたら免許なんか持っててもしょうがないと思うぐらい、金額的に」
ここで勝朗さんの心が動いた!と思いきや…
【赤堀勝朗さん(80)】
「なるほどこれもいいなと思っただけで、それやったら(免許を)返そうかという気持ちにはなってない」
【妻・世生子さん】
「この人、仕事してるから、この金額でね、やめるというのはかわいそう…」
【赤堀勝朗さん(80)】
「ありがとう…」
削減できる差額よりも便利さを選んだ勝朗さん。
そこで台湾クルーズが当たる神戸市のキャンペーンを提示すると、予想外の展開に~!!
【息子・正幸さん(47)】
「一組だけ…夫婦で一週間のクルーズが抽選で当たるかも!?っていう…」
【赤堀勝朗さん(80)】
「クルーズ申し込んでるやん!?」
【息子・正幸さん(47)】
「えぇ??クルーズ申し込んでるの?」
【息子・正幸さん(47)】
「うん」
【妻・世生子さん】
「11月に…」
【息子・正幸さん(47)】
「もう申し込んだ?」
なに勝手に申し込んでるの!
勝朗さんはたまたま、九州の離島をめぐる、豪華クルーズを申し込んでいるそうで…このキャンペーンにも心動かされませんでした。
ただ、家族の説得もあり、今後、勝朗さんは、運転に関する適性診断を受け、その結果で免許を返納するか考えるということで、話し合いは落ち着きました。
慣れ親しんだ車生活。免許返納は、ちょっと勇気が必要かもしれません。
しかし、様々な制度があることを理解し、一度、免許の在り方を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。