タクシー会社と提携進む「配車アプリ」
『5月17日金曜日、点呼始めますね。交差点では信号無視、歩行者、要注意してください』
大阪の大手タクシー会社、未来都。この日、営業所で“ある講習“が行われました。
【乗務員】
「今回は0円やけど、普段はなんぼって出ますんで、普段は乗って頂いたメーター料金、入れてくださいね。サインアウトいう画面が出てきます。下から上にあげて頂いたらサインアウト」
確認しているのは、タクシーの「配車アプリ」の操作方法。
予約を受ける新たな仕組みとして、3カ月前に導入しました。
使うのは世界63以上の国と地域、700以上の都市で展開する「ウーバー」のアプリです。
【Uber Japan トム・ホワイトGM】
「大阪だけではなくタクシー産業全体が日本全国で発展していく良い機会だと思っている。」
アメリカの「ウーバーテクノロジーズ」。
誰でも自家用車を使って、有料で他人を運べる「ライドシェア」サービスの世界最大手です。
しかし日本ではいわゆる「白タク」として違法行為に当たるため、タクシー会社と提携し配車アプリをスタートしました。
【未来都 笹井大義 代表取締役専務COO】
「全国的にも数多くの配車アプリが出ている。特に大阪ではそれらが乱立して、今回の『uber』のアプリを始め、数多くのアプリが出ています。配車アプリ競争、最激戦地区とも言われています」
いま、タクシー業界で次々と登場している「配車アプリ」。
ここ数年、DeNAなどのIT企業や海外企業が参入し、大阪や東京で勢力争いが激化しています。
簡単予約…到着時間や目安料金もわかる
そもそも、タクシーの「配車アプリ」とは、どんなサービスなのでしょうか?
ダウンロードしてアプリを開くと、現在地周辺の地図と、近くを走るタクシーが表示されます。次に乗車位置を確認し、目的地を入力。あとは乗車時間などを選ぶだけで、配車予約ができ、目的地への到着時刻やメーターの目安料金も事前に知ることもできます。
また外国人観光客など、言葉が通じない場合でも、目的地に簡単にたどり着けるほか、クレジットカードなどを登録すればキャッシュレスで、スムーズな乗り降りが可能です。
こうした「配車アプリ」をタクシー会社が導入する背景。それは、タクシー業界の厳しい現状です。
国土交通省によると、全国のタクシー・ハイヤーの車両台数は1990年から、ほぼ横ばいで推移しています。一方、約33億人だった年間の利用者数は減少の一途をたどり、今では半分に。景気の悪化による企業のタクシーチケットの廃止や、若者のタクシー離れが原因とみられます。
業界が狙う、外国人観光客
タクシー市場の縮小に、歯止めをかける。そのために欠かせないのが、外国人観光客の獲得です。
しかし、街で聞いてみると…。
Q:タクシーを使っていますか?
【アメリカ人観光客】
「日本では使わない。鉄道が便利だし、3日間パスとかあるしタクシーは値段が高い」
【中国人観光客】
「英語できる人ならまだマシだけど、僕のお母さんのように英語できない人にはとても不便だね」
外国人にとって、日本のタクシーはまだまだ利用しづらいよう。
Q:中国でタクシーの配車アプリは使ってる?
「使っているよ」
Q:旅行の時に便利?
「便利だね」
「ウーバー」と並んでもう一つ、日本で急速に広まっているのが、中国の配車アプリ「DiDi」。
5億5000万人が利用し、400以上の都市に展開する世界的なアプリです。
こちらも、日本で「ライドシェア」サービスができないため、ソフトバンクと共同出資し、「DiDiモビリティジャパン」を設立。東京や大阪、京都のタクシー会社と提携し、配車サービスを行っています。
【DiDi社員】
「確かにこの通り多いですね。ホテルが結構ある」
大阪のオフィスで開かれたDiDiの会議。
Q:地図の斑点は何を意味している?
【DiDi社員】
「黄色のところは(タクシーが)呼ばれている場所。赤に近ければ近いほど、そこの需要が多いというか(乗車)回数を表している」
DiDiの武器。
それはAI・人工知能を使った、タクシーの配車システムです。
これまで世界中で蓄積されたデータをもとに、AIが最も効率的な配車の方法を提案。利用する人にとって、タクシーを待つ時間が減り、タクシー会社にとっても実車率の向上につながるといいます。
業界を救う一手となるか
【音声案内】「受付を開始しました」
DiDIのアプリはどれぐらい利用されているのか。
大阪市内を走るタクシーを追ってみると…
【音声案内】「受付成功。11時54分までに乗車地点に到着してください」
さっそくDiDiのアプリから配車の依頼が。乗り込んだのは日本に住む中国人の男性2人。15分ほどでミナミに到着しました。
Q:普段からDiDi使っているんですか?
【利用している男性】
「たまに使っています。お会計はコインとか用意しなくてもいいし、あとタクシーを呼びにくいところでよく使っている」
乗客を降ろすと、すぐに別の予約が…。次に乗ったのは、日本人の男性。
【利用している男性】
「会社から自宅まで」
Q:月どれぐらい使っている?
【利用している男性】
「月10万円分ぐらいはDiDi使っています。すごい助かっています。電話しなくていいですし、領収書も登録しているメールアドレスに送ってくれるんですよ。経理も楽ですね」
その後も「DiDi」のアプリからの配車依頼が続き、平日の夕方にも関わらず、約1時間で4組の客を乗せました。
【タクシードライバー】
「従来やとお客さんを探して探して探して走っていたわけですよ。そういうことをしなくても飛んでくる。大変便利ですよ」
タクシー業界の新たな時代の幕開けを告げる「配車アプリ」。
今後、世代や地域を超えて広まり、業界を救う一手となるのか、注目されています。