バブルが崩壊し、不景気に突入していた平成5年。
スーパーや鮮魚店など、様々な店で“ある事件”が起きていました。
【ニセ札を発見した女性】
「すかしもぼやーっとしてますし、人物の色も違うんですわ」
近畿一帯で大量の偽1万円札が見つかったのです。
【記者リポート】
「大阪中の金融機関を混乱に陥れた偽1万円札はきょうもさらに増えつづけ、史上最悪の通貨偽造事件となりました」
偽札は本物よりもすかしが薄く、記番号も入っていません。
特殊なインクを使って精巧に印刷された偽札は、人の目だけでなく、機械をも欺く犯罪史上初の手口でした。
次々と見つかる偽札に、ATMの使用が中止されるなど市民の生活に大きな影響が・・・
警察は、銀行の防犯カメラが捉えた犯人とみられる男の姿を公開しましたが、捜査は難航。
平成15年、時効を迎えました。
神戸で5億4000万円が強奪された現金輸送車襲撃事件や京都で「餃子の王将」を経営する社長が射殺された事件など平成の時代、様々な重大事件が未解決となりました。
その一方、30年間で未解決事件の捜査の在り方は大きく変わりました。
平成6年、大阪・梅田にあるマルビルのホテルで強盗殺人事件が発生。
当時26歳の会社員の女性が鈍器で頭を殴られ死亡しているのが見つかりました。
【記者リポート】
「殺人が起きたホテルはJR大阪駅前の一等地にあるホテルで警察ではこの部屋にチェックインしていた男性が事件のカギを握っているものとみて行方を追っています」
ホテルの防犯カメラが捉えたのはロングコートに整えられた髪の男。
警察は殺人現場の部屋を予約していたこの男を重要参考人として映像を公開しましたが、行方をつかむことは出来ず、事件は迷宮入りかとおもわれました。
しかし13年後、別の事件が事態を急展開させます!
当時、捜査に携わった元警察官が取材に応えました。
【当時捜査指揮をした 元大阪府警 警部 高岡司さん】
「一番記憶に残った事件。そういう大きな事件に繋がるとはまさかと思いました」
平成19年、大阪府北部で女の子の下着が住宅の庭先などに投げ込まれる事件が相次いでいました。
【被害にあった女性】
「ここにパンストがこういう感じでまたいでかけられてて」
投げ込まれた下着は100枚以上。捜査員は付着していた皮膚片のDNA鑑定を科学捜査研究所に依頼。
費用がかかるため、当時鑑定がおこなわれていたのは凶悪犯罪が中心でしたが・・・
【当時捜査指揮をした 元大阪府警 警部 高岡司さん】
「(科捜研の先生に)頼み込んだという感じだった。パンツの不法投棄ですけど過去に100何枚もずーっと1年半ほど捨てられてるんで。1枚だけでもいいんで、1枚お願いします、と(頼んだ)」
鑑定が認められ、DNAを検出してみると、なんとマルビルの事件現場に残されたDNAと完全に一致したのです!
【当時捜査指揮をした 元大阪府警 警部 高岡司さん】
「みんなで大きな声でえーって。驚きでした」
1年後に時効が迫る中で果たした劇的な逮捕劇。強盗殺人の容疑で起訴に持ち込むことができたのです。
【当時捜査指揮をした 元大阪府警 警部 高岡司さん】
「この事件がきっかけでDNAをどんどんかけようとなったと聞いている」
現場に残されたわずかな皮膚片や血液などからDNAを抽出し、容疑者の特定をする「DNA鑑定」。
その技術は年々進歩しています。
平成の半ばにはDNAから個人を特定できる精度は約1100万人に1人でしたが、4月から導入された新しい機器では格段に精度が向上しました。
【大阪府警察本部 科学捜査研究所 三谷友亮 統括研究員】
「(導入された機械では)565京に一人という高い個人識別力になります。個人を識別する能力は上がった。もうひとつは微量な資料からも検出できる」
平成22年、凶悪事件の時効撤廃。これを機に全国の警察で新たな捜査チームが発足しました。
大阪府泉佐野警察署の一室。
ここで捜査にあたっているのは長期未解決事件の専従捜査班です。
聞き込みで得た内容や周辺人物の情報など大量の捜査資料が並んでいます。
その事件とは・・・
平成15年、5月。
大阪府・熊取町の小学4年・吉川友梨さんは下校途中に突然、行方が分からなくなりました。
最後に目撃された場所から自宅までのわずか200mの間で何者かに連れ去られたとみられています。
専従捜査班は12人。
いまも現場周辺をまわっています。
住民に顔を覚えてもらいなにか情報があればすぐに教えてもらえる関係を築くためです。
専従班が追っているのは当時、友梨さんの通学路で目撃された不審な白いクラウン。
事件から10年目に寄せられた有力な情報です。
【大阪府警察 捜査一課 森貴彦 管理官】
「大阪府南部で約2300台、今までで7割が終わっている。きのうよりきょう、きょうよりあしたと一日一日事件解決に向かって進んでるという意識を持っている。ゆりちゃんに怖い思いをさせているので自分たちが見つけるという強い意志を持って少しでも事件解決にできることがあれば何でもやっていきます」
地域の区長などを務めた佐々木茂之さん(76)。
事件のあと、友梨さんが同級生と最後に別れた交差点で登校する子供たちのみまもりを始めました。
Q:立ち始めた理由は?
「車のナンバーを覚えようと立ち始めた。刑事さんがきてこの車探してるという感じだった」
毎朝欠かさずに続けたみまもりは、16年目を迎えました。
【佐々木茂之さん】
「(友梨さんは)生きてる。これは確信してる。自分で思い込んでいます」
友梨さんが通った小学校で校長を務める吉田由美さん。
毎年、4年生を対象に事件について考える授業をおこなっています。
【熊取北小学校 吉田由美 校長】
「1人がいないということの重さ、たくさんのうちの一人だけどその一人はかけがいないひとり、そのひとりがいないというのがどれだけ重たいものかと。子供たちにもわからないままでも少しずつ感じ取ってもらいたいという思いですね」
友梨さんの帰りをみんなが待ち続けています。
平成の時代に起きた多くの未解決事件。犯人を追い詰めるための最新技術を駆使しながら、地道な捜査が続けられています。
事件の解決は次の時代に託されます。