新実アナ「京都市の伏見区です。ものづくりの会社が立ち並んでいるエリアなんですけれども…こちらの会社、異彩を放っています。」
『クロスエフェクト』畑中克宣・専務取締役(49)「頑張って建てました。」
2001年に操業を開始した『クロスエフェクト』社。当時、まだ珍しかった『3Dプリンターを』使った事業に着手。企業が新製品を生み出す上で必要な”試作品”を作る会社です。
畑中専務「速さにこだわっていて、世界最速を自負しています。2日後には完成させます!」
今回の目的は試作品ではなく、この会社が開発した”ある医療機器”…。
新実アナ「これ、何ですか?ムニムニしてますけど?」
畑中氏「心臓のモデルです。」
なんと、本物そっくりに作られた心臓!
新実アナ「中の凹凸まですごくリアル。この目的は?」
畑中氏「これは手術の前のシミュレーションに使ってもらいます。病院で撮られたCTの画像を我々はお預かりして、患者さん個々のモデルを作らせていただきます。いわゆるオーダーメイド型の医療機器になります。」
本物と比較した映像を見せてもらったところ…
新実アナ「これすごい。ハサミを入れて血管を切った時の反応が同じですよね?」
畑中氏「はい、開発にあたっては実際メスで切ったりとか針、糸を通す感触までを執刀医の先生と一緒に再現するという開発をしましたので、これが事前にできるのは、大きなアドバンテージだと思います。」
実は、先天性心疾患の割合はおよそ100人に1人。全ての人に手術が必要という訳ではないものの、その数に驚きです。その状況に対応するための依頼がプロジェクトの発端でした。
『研究開発基盤センター』教育推進部長・病院小児循環器部・白石公先生「心臓のエコーの検査とか色々な検査手段があるんですけれども、それだけでは中々、外科の先生に立体構造を正確に伝えるのが難しいんですね。人間は五感のうち、特にこの目で見る視覚と実際に手術する時の触覚という、この2つの感覚が非常に大事なので…」
小児心臓外科部長・市川肇先生「これを術前に見ておくと、何も迷わない。心臓止めておける時間はタイムリミットがあるので、早くやればやるほど心臓のリカバリーは良くなります。さらに、若手医師と日本の超一流の心臓外科医がテーブルを挟んで教えるシミュレーションをやっています。我々が(手術の技量を得るのに)かかったよりもはるかに短い時間で、若手医師が上手になっていくんです。」
まさに医療革命!しかしながら、簡単に出来上がった訳ではありません。当初は10社以上に開発を依頼したそうなのですが…
白石先生「技術的にも難しいしコストもかかるし、こういったことをやった経験がないということで、みなさんから断られました。」
そこに手を挙げたのが『クロスエフェクト』社なのですが、簡単にはいきませんでした。
『クロスエフェクト』畑中専務「この事業に着手したのは10年前なんですけれども…」
待ち受けていたのは、医療と工業の”壁”。
心臓シミュレーターは、まず3Dプリンターで患者の心臓を再現。そこから型を作り、特殊な樹脂で本物に近い触感に仕上げます。この技術自体はスタートから4年後には確立。”ものづくり大賞”も受賞しているのですが…
白石先生「やっぱり私たちのゴールは柔らかくて本当の心臓のような形状。模擬手術であるとか練習、リハーサルができるというのがゴールにありましたので、そこを目指していきたいと思っていました。」
さらにはこんな難題も…
畑中専務「命に関わるプロジェクトだと!『君達も医療の勉強をしなさい!』とストレートに言われました。例えば、こういう依頼のメールがあるんですけれども…」
新実アナ「これがメールですか?」
畑中氏「…AVdiscordancesDORVs/pPAbanding…。日本語なのか英語なのか…。メールひとつを読むのにも医学専門書を調べたり…、やはりこれに慣れないと、最初は先生が優しくしてくれていても、我々も最終的には色々な先生や世界の先生とお付き合いすることになるので、それくらいの勉強はやはり知識として持っておくべきだと!暖かい愛のムチだったと思います。」
新実アナ「なるほど…」
もう一つ、医療機器認定への”壁”が。
新実アナ「ただ、コレで何か直接患者さんを治療する訳ではないですよね?それでも医療機器扱いですか?」
畑中氏「まさしくその通りで、最初は厚生労働省との折衝では『これは本当に医療機器ですか?』と問われました。医療機器というのは、いかに同じ品質のものを同一に作っていくかという審査が行われます。心臓シミュレーターは元々、(1つずつ)違うものを作っていきますので、『審査の基準をどこにするのか?』とか、新しい基準を厚生労働省と折衝して作っていくという作業を10年がかりでしてきました。」
『クロスエフェクト』社で働く社員の数はおよそ40人。その中には若い女性の姿も…。
大町いずみさん(入社2年目)「綺麗な会社だし、新しいものが好きなので面白いなと思い入社しました。」
こちらの方は、なんとフランスから。そしてあの、スライダーの発案者でした!
バンジャマン・ダヴーさん(入社8年目)「半分冗談で提案しました。やっちゃったって思いました。」
新実アナ「やっちゃったって…。でも、とりあえずやってみよう!となる雰囲気なんですね。会社自体が。」
バンジャマンさん「チャレンジャーなんで色々試したい。すごくいいと思いますよ!」
社員がクリエイティブに働ける環境づくり!それが新技術の源だと感じました。
新実アナ「どんどん色んなものが今後もできていくと思いますが、今後の展開は?」
畑中氏「”クラスⅡ”の医療機器承認を目指して動いています。」
現在はクラスⅠ、これがクラスⅡになることで保険が適用できるようになるそうです。
畑中氏「やはり、1つあたり20万円以上の費用がかかってしまうんですよ。(20万円?)それをやはり、全額負担というのは難しいこともあると思うので、それ以上に使い易くしてたくさんの方に使っていただきたい。そこまでは必ずやり遂げたいと思っています。」