東京パラリンピック開催まで、いよいよ500日を切りました。様々なイベントが開催され、各地でパラリンピックへの機運が高まっています。
柳本あまねさん 二十歳。
京都の大学に通う現役女子大生で、車いすバスケットボールの日本代表候補です。
両足に運動機能障害があるあまねさん。戦友の車いすとともに夢に向かって突き進む姿を取材しました。
16歳で日本代表入りを果たした、期待のホープ
今年、新成人に加わった、柳本あまねさん。
両足に運動機能障害があり、日常生活では車いすが必需品です。
性格は明るくしっかり者。
この日は再会した懐かしい友達に絶えず囲まれていました。
そんなあまねさんの日常に、もう一つ欠かせないものが…
激しくぶつかり合うシーンが特徴で「障害者スポーツの花形」ともいわれる車いすバスケットボール。
あまねさんは2014年に、当時最年少の16歳で日本代表入りを果たし、以降、国際大会では何度も日本チームの主力として活躍してきました。
男子相手でもひるまずぶつかり、ストイックに練習をするあまねさんですが、強さのワケは、好きなことをとことん追求する性格。
普段は女子大生…コートでは男子並みのスピードとシュート力
普段は同志社女子大学に通う現役女子大生。
あまねさんの「好きなこと」は車いすバスケ以外にも…
【あまねさんの友人】
「めっちゃショッキングピンク(が好き)」
【あまねさん】
「鞄の中もですよ。鞄、筆箱、財布、化粧ポーチ。」
自分の携帯品をあらためて見て、あまねさんも思わず…
「気持ち悪いな私、ピンクしかないやん」
Q:爪もピンク?
【あまねさん】
「試合の時はけっこうピンクです。爪見て頑張るぞみたいな。」
合宿や遠征で授業に出られないことがあるため、テストの点でカバーし、両立させています。
【あまねさん】
「出席カード(で出席したフリ)とかできたらいいんやけど、でも車いすなんでバレるんですよね。『柳本あまね』出てても、『お前来てへんかったやん』って絶対なるから」
【友人】「顔じゃなくてな、車いすで覚えられる。」
【あまねさん】「あの元気な車いすの子な。みたいな。」
授業が終わると、練習には一人、車で向かいます。
あまねさんが所属するクラブチームの拠点が大阪にあるため、片道1時間以上かかります。
【あまねさん】
「免許とってからは、最初は親もついて来てくれたんですけど不安で。でもその後はもう一人で行ってます。」
そんなしっかり者のあまねさんの車内は、彼女の「好きなもの」が集められた空間。いたるところに並ぶアイテムについて質問すると、あまねさん、「熱く」語ってくれました。
「私あとは虫類が好きなんですよ。ヤモリの手めっちゃ可愛いの知ってます?めちゃめちゃ可愛いんですけど。こんな感じの手がぴちゃっとくっつくんですよ。もう激カワですよ!本当に」
車内では、音楽も「好きなモノ」にこだわります。
【あまねさん】
「(普段)ガンガンKポップ鳴らしてます。」
Q:聞くとテンションあがる?
【あまねさん】
「上がりますね、めっちゃ。試合前とか練習前は絶対聞きます。好きになると、とことんはまっちゃうんです。」
彼女が「選手」に変わる瞬間。それは、髪の毛を結んだ時。
あまねさんの強みは、スピードとシュートの飛距離。男子にも負けず劣らずのスピードでコートを走り抜け、足が使えない状態では、届くことさえ難しいと言われるスリーポイントシュートを打ちます。
車いすバスケに出会い…今では「かっこええやろ」
あまねさんは原因不明の運動機能障害で、2歳の時、突然立てなくなったといいます。
【あまねさん】
「気づいたらこれ(車いす)が私やっていう感じ。だから保育園の頃とか特に意識してなくて、運動場も膝あてとスリッパみたいなのを(手に)持って、鬼ごっこをはいはいで砂場を駆け巡るような子やったんです。」
活発な女の子だったあまねさんですが、車いすにコンプレックスを感じて、内に閉じこもるような時期もあったといいます。
そんな彼女を変えたのが「車いすバスケットボール」でした。
【あまねさん】
「誰が障害が重い、誰が障害が軽いは関係なく、みんなが車いすにのってバスケをしている。しかもすごく激しいことをしている。っていうので、めっちゃかっこいいって思って、こういう生き方があんねやって思って、はまっちゃいましたね」
「今までは町中でいろんな人が『車いすや』って見てきはるのがすごく嫌いやったんですよ。けど、バスケ始めてなんか逆に『かっこええやろ?』みたいな感じになりましたね。」
好きなことは、とことん追求するあまねさん。
車いすバスケの魅力にのめり込み、どんどん成長していったそうです。
【あまねさんの母】
「私の中ではいつまでも小学生っぽいというか、そういう可愛らしいところはあるんですけど、やっぱりバスケに対する考え方とか練習の仕方とか、そういうのはずっと成長し続けてる。まだこれからも成長するだろうなと思うぐらい、すごく頑張ってるなっていうのは思いますね。」
「東京」は夢にしたくない、パリもロスも…できるところまで現役で
あまねさんが車いすバスケを始めた頃から指導している岩野コーチは、彼女を「世界で通用する選手」だと話します。
【あまねさんの所属チーム「カクテル」 岩野博コーチ】
「経験という面では足りないかもしれないけど、やっぱりスピードとパワーという部分では一つ頭抜けてると思うので日本代表に一番近いポジションにいるんじゃないかと思っているので世界でしっかり戦えるプレーヤーになっていただいて、代表に選ばれてほしい。」
強化指定選手として、まずは東京パラリンピックでの代表入りを目指します。
あまねさんに、将来の夢を聞いてみました
【あまねさん】
「東京は夢にしたくなくて。私の一目標にしてるんですけど、その次の大会のパリ、ロス(五輪開催が)決まってると思うんですけど、とりあえず自分の体がやばいってなるまでは、現役でやり続けたいなって思ってます。できるところまで、選手で勝ちにこだわりながらプレーしたいっていうのが、夢ですかね。」
「ピンク色」「爬虫類」「Kポップ」そして…『車いすバスケットボール』
柳本あまねさんは、好きなものをとことん追求しながら、夢に向かって突き進んでいきます。