「ハクション!」
くしゃみにせき、のどの痛みなど、様々な症状が出る「風邪」。
実は、医学的には「風邪」という病名はなく、
喉や鼻のいろいろな部位の炎症を示す疾患をまとめて
「感冒」または「かぜ症候群」と呼んでいるそうですよ。
このように、身近な病気だけど、案外知らないことも多いのでは?
まず、「風邪」という言葉。どのようにして生まれたのでしょうか。
語源研究の第一人者、佐竹秀雄さんに聞きました。
<日本漢字能力検定協会 現代語研究室 佐竹秀雄室長>
「『かぜ』は日本語では『吹く風』を意味していた。そこに中国語の『風(ふう)』の漢字が入ってきた。
ところが中国の『風(ふう)』には、『吹く風』以外に『人間に影響を与える大気』『大気に影響を与えられた状態』を
『風(ふう)』と言った。その『風(ふう)』は日本語で言えば『風(かぜ)」やんか』と、
だから『しんどい状態は風(かぜ)やね』と」
「吹く風」を意味していた言葉を「病」の意味でも使うようになったとされるのが、
今から1000年以上も前の平安時代。
その後、身体に悪い影響を及ぼす風のことを「邪気」と考え、
「風」に「邪」の字を当てて「ふうじゃ」と呼ぶようになり、
明治時代に入った頃から、一般的にこれを「かぜ」と読むようになったそうです。
【堀田アナ】
「なぜ風邪って“かかる”じゃなくて“引く”?」
【佐竹室長】
「これはさっきの『風(ふう)』と関係する。影響を与えるような大気のようなものがあって、まるで吹く風のようにやってくる
まともに自分の体に引き込む それで風邪を引く。これもずいぶん古いらしくて平安時代から『風を引く』という言い方をしていた。やっぱり(病気の)風邪は昔から日本人にとっては身近なものだったんでしょうね」
ちなみに、風疹や痛風、破傷風など風の字がつく病名が多いのは
「風の病」と考えられていた名残なのだそうですよ。
知っているようで知らない風邪にまつわるギモン。
続いては…
<街頭インタビュー>
Q:「風邪は引きますか?」
女性「結構引きます 気が付いたら引いてる」
女性「めっちゃ引きます。年中引いてる気がします」
平均すると、一年間に5、6回引いているとも言われる、風邪。
しかし中には…
<街頭インタビュー>
女性「風邪は引いたことないんで。しんどさとかも全然分からない」
女性「風邪になったことがないので、風邪の記憶がないのよ。アホは引かないゆーでしょ」
風邪を引く人と引かない人、その差は一体何なのでしょうか。
教えてくれたのは、「よどがわ内科クリニック」の秋田悦子院長です。
<よどがわ内科クリニック 秋田悦子院長>
「風邪に関しては、ウイルスはそこら中にあるウイルスが体に入ってきても自分の免疫力がしっかりしたら症状は出ない。
そこら中にいるウイルスにその都度かかっていたら、みんなずっと風邪を引いている状態なんですけど、
そうでなくて個人の方の免疫が落ちている状態、体が弱っている状態に発症しやすい」
風邪のウイルスは、数百種類いると言われていますが、
インフルエンザウイルスと違い感染力が非常に弱いため、
健康な状態であれば、本来感染することはないとのこと。
つまり、風邪を引く人と引かない人との差は「免疫力」。
生活習慣の乱れやストレス・疲労がたまっていると免疫は落ちやすく、
風邪を引きやすい状態になるそうです。
ただ、「風邪を引かない」と言っている人も、実際は発症していても症状が軽いため
「気付いていないだけ」ということもあるのだそうです。
そして、「ただの風邪」だと油断していると危険なことも…
<街頭インタビュー>
女性「次男がいてて、その子が風邪から肺炎になって一時危篤状態になって」
「風邪って言っても怖いなと思った」
<よどがわ内科クリニック 秋田悦子院長>
「基本的には風邪は数日で治ってくるのが風邪。身体が弱っている状態なので風邪になる。体が弱っている状態は細菌にとっても感染しやすい。呼吸がしんどくなるほどの咳が出ている。脱水してしまいそうな下痢、そういった場合は単なるウイルス感染ではなく(細菌による)二次感染の状態かもしれない」
「風邪は万病のもと」と言われますが、細菌などによる二次感染がそのゆえんです。
のどの痛みや鼻水、せきなどの症状が同時に現れるのは典型的な風邪の特徴と言われていて、
特定の症状が長引いたり、悪化するなどした場合は危険のサイン!
早めに病院へ行きましょう。
ちなみに、市販や病院で処方される「かぜ薬」は、何のために飲むものか知っていますか?
<コクミン 管理薬剤師 岡田あゆみさん>
「まず風邪を治すとなると皆さん薬と思うんですけど、薬を飲むことで風邪が治るわけではない。(かぜ薬で)症状を緩和して体力を蓄えている間に免疫が頑張って、風邪と戦って自分の免疫で風邪は治していくんです」
風邪そのものを治す薬はなく、かぜ薬はあくまで症状を和らげるだけのもの。
風邪は自分の体で治すんです。
そして、風邪対策の定番と言えば「うがい」。
実際、どれだけの予防効果があるのでしょうか。
訪ねたのは、うがいの研究者で、京都大学・健康科学センターでセンター長を務める川村孝教授。
すると、本題を前に、驚きの事実が判明しました。
<京都大学 健康科学センター長 川村孝教授>
「そもそも風邪の予防でうがいをするのは日本人独自の習慣みたいで世界ではやっていない。留学生に手あたり次第聞いてみたら『やってない』と」
なんと、うがいは日本独自の衛生習慣なのだといい、少なくとも戦国時代から行われていたのだとか。
<川村教授>
「文献に出てくるのは戦国時代。北条早雲とか徳川家康とかの家訓にはうがいという言葉が出てくる」
<堀田アナ>
「それは風邪予防のため?」
<川村教授>
「目的が書いていないから分からないが、北条早雲の言葉は『うがいした水は捨ててはならぬ(飲め)」と書いてある』
さらに、本題である、うがいの予防効果についても驚きの事実が!
<川村教授>
「水でうがいすることによって4割くらい風邪は減る」
<堀田アナ>
「そんなに効果があるんですか?」
<川村教授>
「もちろん丁寧にうがいする必要がありますよ」
<堀田アナ>
「普通に水でうがいするだけ?」
<川村教授>
「普通の水道水で十分な効果があります。それが意外に日本でしかされていないので証明されていなかった。我々の研究でそれを実証することできた、日本人が世界に胸を張ってお勧めできる一つの衛生習慣だと思います」
うがいと聞くと、口の中のウイルスそのものを流し出すというイメージがありますが、
川村教授によると、実はウイルスの感染を助ける「プロテアーゼ」と呼ばれる酵素を洗い流してこそ、
うがいの効果が発揮されるそうです。
まずは、口に水を含んでのいわゆる「クチュクチュうがい」。
口の中全体をしっかりすすぐことがポイントです。
続いては、上を向いての「ガラガラうがい」
ここでは、声を出すなどして、洗濯機のように口の中の水をかき回すことが重要。
そして、最後にもう一度、同じガラガラうがいをしたら終了です。
それぞれ15秒ずつ、外出から帰ったあと。
さらに、寝る直前にもやればバッチリです。
<京都大学 健康科学センター長 川村孝教授>
「もし皆さんが丁寧にうがいをして風邪を引かなくなれば日本の生産性も高まる。(風邪のための)医療費も年間5000~6000億円。うがいによって風邪が減れば医療費の削減にもなると思う」
遠い昔から現在に至るまで、日本人を悩ませている風邪。
医学の更なる進歩に期待しつつ、とりあえず今は、出来る限りの対策を取るようにしましょう!