野口聡一さんのISS到着で盛り上がる宇宙開発。
10月、JAXAは13年ぶりに宇宙飛行士を募集することを発表しました。
募集は来年(2021年秋)ですが、採用されれば、日本人で初めて月に行けるかもしれないということで注目されています。
一体、どうすれば宇宙飛行士になれるのか?さらに宇宙ってどんなところなのか…?
■宇宙飛行士・大西さんに聞きました!
インタビューに応じてくれたのは、JAXA宇宙飛行士の大西卓哉さん(44)。
元全日空のパイロットで、民間パイロットとしては初の飛行士です。
前回の募集で採用され、2016年に4カ月間、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在しました。
【大西卓也宇宙飛行士】
「リモートでのテレビ出演は初めてのことで緊張しています。13年ぶりの募集でたくさんの方に応募していただきたいので、出演させていただきました!」
――Q:宇宙ってどんな場所でしたか?
【大西さん】
宇宙は見るもの全て、やること全てが目新しくてとても新鮮。興味深い世界でした。
宇宙から見る地球もきれいで、宇宙の匂いもかぐことができた。
ISSが宇宙船にやってきてドッキングした後、ドアをあけたとき、今まで嗅いだことが無い、金属が焦げるような匂いがする。それを宇宙飛行士は「宇宙の匂い」と呼んでいて、新しい宇宙船が来ると、クンクンかいでいた
第一回(1985年)の採用は毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さんの3名。
その後、大西さんが採用された第五回(2009年)まで、計11名の飛行士がいるが、現役は7名だけ。
――Q:大西さんはなぜ転職して宇宙飛行士に?
【大西さん】
小さいときから宇宙が好きで、行きたいと思っていたが、本当に行けるとは思っていなかった。13年前に募集していると知って、ほんの少しでも可能性があるならと応募した。
子どもの頃からの夢だった。パイロットの仕事と宇宙飛行士の仕事は共通点が多くて、パイロットとして学んだこととか、蓄積した経験が宇宙飛行士の選抜試験で自分を助けてくれた。自分はラッキーだったと思っている。
■宇宙飛行士になるには「どんな能力」が必要?
大西さんが採用された時、2008年の募集要項をみてみると…(一部抜粋)
- ●日本国籍
- ●大卒以上(自然科学系)
- ●訓練時に必要な泳力
- ●英語能力
- ●教養(美しい日本語・異文化への造詣)
- ●10年以上JAXAに勤務可能
- …など
963名の応募に対し、合格が3名と、倍率は320倍以上でした。
――Q:英語は大事ですか?
【大西さん】
国際宇宙ステーションでの仕事は全て英語、訓練もアメリカとロシアで行われるので、英語とロシア語が必要。ある程度の基本的な英語力は必要になってくる。ただ訓練を通じて英語を鍛えることができるので帰国子女レベルの英語が求められるかといえば、そうではない。
――Q:教養は? 「美しい日本語」というのは、関西弁はダメですか?
【大西さん】
日本人が宇宙に行く機会は限られているので、貴重な機会を頂いた身としては、自分が見てきたこと、感じたことをいかに分かりやすく一般の方に紹介できるかは大事な能力。
■最終選抜者への課題は「折り鶴」
こんな厳しい試験もあります。
最終選抜者10人への課題で「10時間で千羽の折り鶴を作れ」
ということは…【1人当たり、4時間で100羽】
――Q:どんなことが求められる試験?
【大西さん】
実は、課題を出されるときに何を見ているかは受験者には一切知らされない。この時も、「鶴を折りなさい」という指示だけがきた。自分の中で、これが宇宙空間での作業でどんな作業に似ているのか、例えば、閉鎖的な宇宙ステーションで単純作業をずっと長い時間やるときの様子を見ているんだろうなとか想像しながらやる。
僕の場合は、時間に追われて、仕事、折り方が雑にならないようにとか、最初と最後で後半に疲れがたまって来ても折るペースが落ちないように考えながら課題に取り組んだ
――Q:相談したり協力したりした?
【大西さん】
ここで集まっていた10人はライバルだが、同じ夢を追いかける仲間の意識が強かった。早く折れる人にコツを聞いたりしていた。
――Q:大西さんは何羽折れた?
【大西さん】
最初1時間くらいで10羽しかおれなかったので、最終的に80羽いったかいかなかったか。10人で1000羽もいけなかったです。
ちなみに、吉原キャスターは4時間で69羽でした…
■宇宙飛行士に聞きたい!こんな私でもなれますか?
――Q: 乗り物酔いするのですが、宇宙飛行士になれますか?
【大西さん】
大丈夫です!僕自身、乗り物酔いしやすいが問題ない。確かに宇宙に行くと、「宇宙酔い」といって、乗り物酔いに近い症状が出るが、数日間でなくなってしまう。あまり心配しなくていい。
行ってすぐと、帰って来てすぐは、重力に大きな違いがあるので自分の体がその変化に戸惑って、酔うだけじゃなくて、いろいろと生活に影響がある。バランス感覚がなくなっている。
帰還直後は、必死に笑顔を作っている。
――Q:虫歯は?
【大西さん】
進行中でなければ大丈夫。しっかり治療して宇宙に行けば全く問題ない。
――Q:詰め物が無重力で飛ぶことは?
【大西さん】
ありません。簡単な詰め物なら自分でできるような訓練を受けてから行く。
――Q:視力が悪いのですが…?
【大西さん】
大丈夫です。矯正した状態で視力1.0あれば前回の募集要項は満たしている。眼鏡やコンタクトの宇宙飛行士もいます。
――Q:お給料は…?全日空の頃から上がりましたか?
【大西さん】
パイロットと比べると相当下がりました。宇宙飛行士手当が少し加わる分、一般的なJAXA職員よりは少し多めに頂いている。
――Q:宇宙に行ったボーナスとかは?
【大西さん】
ないですね
■月、そして火星へ…「アルテミス計画」
13年ぶりに宇宙飛行士を募集する背景にあるのが「アルテミス計画」
2024年までに月、2030年代に火星へ、有人探査を目指すというアメリカ主導の計画で、日本も参加を表明しています。
――Q:大西さんは「アルテミス計画」に参加したい?
【大西さん】
全ての宇宙飛行士が参加したいと思っている。私も行ってみたい。今回の募集で採用された人にもチャンスがあるので、よきライバルとして切磋琢磨できたらいいなと思っています。
カンテレ「報道ランナー」 2020年11月12日放送 『ぐぐっと深掘り!しらべるジャーナル』より