低い賃金が改善されない介護業界では高齢化が進み、若い世代の職員が少なくなっています。
そんな中、自分の意志で介護の世界に飛び込んだ20歳の専門学校生を取材しました。
■介護福祉士の養成学校 入学者が10年で4割減少
大阪市阿倍野区にある、関西社会福祉専門学校。ここに通う生徒たちは、国家資格である「介護福祉士」の取得を目指しています。
【講師】「介護福祉職には言葉のニュアンスや体の動き、しぐさなどを細かく観察し、利用者の思いをくみ取りながら、常に今実施している介護が利用者に適しているかを判断していくことが求められます」
20歳の西野香澄さん。高校を卒業してすぐ、この学校に入学しました。西野さんが介護の道を目指したきっかけは、祖母(78歳)が突然、認知症になったことでした。
【西野香澄さん】「おばあちゃんはもともとしっかりした人やったんですけど、認知症になったことで性格もだいぶ変わってしまって、おじいちゃんも適応できなくて。人の手助け、役に立てることをしたいなと思っていて、そんな時におばあちゃんの認知症があったので、これだったら、介護で身の回りの人の力になりやすいかなと思って、選びました」
専門学校では、授業を通して日常生活の支援だけではない介護の重要性を、学生たちに知ってもらうことにしています。
【関西社会福祉専門学校 山本容平校長】「介護福祉士というのは、“エンドオブライフプランナー”だよという話を必ずするんです。介護って何ですかっていわれた時に、どうしても体のケアだけをイメージしてしまう。でもそうじゃないんですよ、と。体が不自由でも認知症があっても、われわれはその方の人生が終わるまで共にそこにある存在なんです」
“人生を最後まで自分らしく過ごす”…そんな要介護者の願いをかなえるため日々学ぶ西野さん。その一方で、介護福祉士の養成学校では近年、全国的に入学者の減少が続いている状況があります。なんと、この10年で4割も減少しているのです。
しかし求人自体は減っておらず、この専門学校では、学生1人あたりの求人は15件と、まさに売り手市場です。需要に対し、人材の供給が追い付いていません。
■ヘルパーの平均年齢54.4歳 改善策は?
ある日、西野さんは、認知症の高齢者たちが暮らすグループホームで、介護の実習に参加しました。介護福祉士試験の受験資格を得るために必要な過程です。
【西野香澄さん】「さきさん、ちょっと廊下歩きましょうか。体痛いところないですか?ちょっと足上げて歩きましょうか。ゆっくり行きましょう」
屋内での歩行の見守り。積極的に声をかけながら寄り添います。続いては、体が硬直している寝たきりの男性のおむつ交換です。先輩職員の指導を受けながら、肌を傷つけないよう、慎重に進めます。
【西野香澄さん】「おむつ取りますね。薬塗りますね」
優しく声をかけながらおむつ交換を行う西野さん。
【西野香澄さん】「おむつ整えますね。布団かけますね。おむつ交換終わりましたよ。ありがとうございました」
Q.利用者さんのおむつを替えることに抵抗は?
【西野香澄さん】「特にはなかったですね。その方の生活を支えてあげたいという気持ちが大きいので、寝たきりの方は特にご自身でできないので、そこをサポートしてあげたいなと私は思います」
西野さんは、祖母にしてあげたかったことを、介護福祉士として実践したいと考えています。
【西野香澄さん】「その人がより良い過ごし方ができるようにするためにはどうしたらいいかなっていうのを考えたり、やりたいこととかをちゃんと聞いて、向き合える介護福祉士になりたいです」
人生を最後まで自分らしく過ごせるようにサポートする、介護福祉士の仕事。西野さんのような若者が今後の日本を支えます。
しかし、現在の介護業界では若い世代の減少が深刻な課題です。2021年の介護労働安定センターの調査によると、ヘルパーの平均年齢は54.4歳と高い数字となっています。
こうした現状に対する解決策は、どのようなものが考えられるのでしょうか。例えば、ヘルパーの公務員(正規職員)化をはじめ、専門学校の無償化や、介護報酬の引き上げが必要ではないかとの声も上がっています。
さまざまな角度からの改善が必要と言えそうです。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月26日放送)