旧統一教会が会見し"おわび"するも…教団として責任を認めての"謝罪"はナシ 「補償の原資として最大100億円を供託したい」 この発言のウラにある真の狙いは?【鈴木エイトさん解説】 2023年11月08日
11月7日午後2時から行われた、旧統一教会が開いた記者会見では田中会長が2世信者におわびし補償が必要になった場合の原資として最大100億円を国に預ける方針を明らかにしました。
このおわびの意味、なぜ国にお金を預けたいのかなど旧統一教会問題に詳しい鈴木エイトさんに聞きました。
■”おわび”したものの…今までの会見と内容は変わっていない
今回の記者会見の内容は、率直にどのような印象を受けましたか?
【ジャーナリスト 鈴木エイトさん】
「明確に何に謝罪をしたのかよくわからない会見でした。謝罪の会見のはずが、なぜか教団の正当性をやたら主張するようなものになっていたり、教団の法的な責任を一切認めようとしていませんでした。非常にちぐはぐな印象を受けると同時にこれまでの会見と内容が変わってないような感じがしました」
田中会長と勅使河原本部長は「当法人の指導不足ゆえに心を痛めておられる皆さま、2世信者、国民に改めておわびする」として頭を下げました。そして安倍元総理銃撃後の2022年7月から2023年10月までに合計664件、44億円の返金にすでに応じたとして、今後も元信者への対応としての特別供託金を60億円から100億円用意すると提案しました。
■旧統一教会「返金要請に対応している」と主張するも、鈴木さん「教団は真摯に対応していない」
返金要請に対応してきているという教団側の主張についてはどのように思われましたか?
【鈴木エイトさん】
「被害弁護団からの集団交渉には応じていません。この金額についても非常に疑問点があります。これだけ教団側が対応してきていると言っていますが、実際はちゃんとした対応はされてないんじゃないかと。いろんな被害者の声を聞くにつれ、教団側から連絡がないであるとか真摯な対応をしてもらってないところが見えてきています。さらにこの『当法人の指導不足ゆえに』という言葉がやはり引っ掛かります。教団側の指導がなってないからこういうことが起きたわけではなく、教団が組織ぐるみでやってきたんじゃないかという指摘がなされているので、そのあたりは非常にぎまん性(ごまかし・偽り)を感じます」
「信者の方の行き過ぎた行動によって」という発言などによって、あくまで指導不足であって教団の体質ではないという主張のように感じました。
【鈴木エイトさん】
「2009年に教団が出したコンプライアンス宣言についても、教団による偽装勧誘(正体を隠した勧誘)についてもこれは信者の個人的な活動だと、これまでの霊感商法についても信者の自主的な経済活動だとして、教団の組織性を一切認めていません。その辺は変わらず今回も同じように主張してきていると思いました」
返金要請へ44億円の対応をしてきているという主張ですが、この金額は十分なのでしょうか?
【鈴木エイトさん】
「当然この金額では収まらないですし、教団が真摯に対応していたとは見えないです。実際にこれ以上の金額の被害相談が寄せられています。教団が応対してきたという主張と数字だけ見ると、教団はちゃんとやってるんだなと思うかもしれませんが、どのような交渉をして、どういう対応をしてきたかという所を見ると、かなりぎまん性がまだ見えるんですよね」
■田中会長はなぜ辞任しないのか
田中会長は解散命令請求以降、初めて教団の会見に出席しましたがこのタイミングはどう思いましたか?
【鈴木エイトさん】
「直近2回は教団の顧問弁護士と法務局長だけでした。田中会長が出てきたのはかなり久しぶりということで、本来であればもっと早く解散命令請求が出た場合に日本の法人のトップがちゃんと説明すべきなのに、なぜ出てこなかったのか。一説には今回辞任をする会見じゃないのかという話もあったんですけど、結局そういう形ではなく体裁だけを取り繕うような会見になりました。勅使河原さんも教団の正当性をやたら主張するだけの会見となり、なんともちぐはぐさだけが見えました」
田中会長の辞任まで至らなかった理由というのは、何が推測されますか?
【鈴木エイトさん】
「日本のトップのように韓国人幹部の大陸会長もいますが、その方はすでに解任されたのではないかといろいろな情報があって、田中会長も解任は決定的だみたいな話も漏れ聞こえていました。そういう形でトップが辞任をして幕引きを図ろうとしているのではないかと指摘はありましたが、ふたを開けてみれば役員会でまだ決まっていないだとか、今後のふくみは持たせていましたけども、役員会で決まるわけではなく韓国の人事の指示で全部決まっているので、実態ときょう説明した内容に齟齬(そご)がみえました」
■教団側が提案する供託金とは
そして、最大100億円の供託金については「特別措置として、国で制度を用意してもらえば準備できる。現状は国の法整備はまだされていない状況。その供託金の金額は60億から100億円で足りると考えている」と主張しました。この主張は納得できるものでしょうか?
【鈴木エイトさん】
「確かに被害弁護団の集団交渉でいま試算されているお金は40億円ぐらいです。しかし全体的な被害者の数、被害金額は1200億円ぐらいが想定されています。当然この金額では足りないし、この供託金が今後どのように進んでいくのかはわからないですけど、これを受け入れ国が動くようでは本当の被害補償にはつながらないと思います」
教団が供託金にこだわる理由として鈴木エイトさんは「お金を自由に動かせなくなるのが怖い」のではないかと考えているそうです。どういうことでしょうか?
【鈴木エイトさん】
「供託金の場合はこの100億円以外のお金を教団側は自由に動かすことができます。これまで通り海外にも送れるし、いろんなお金を使えてしまう。でもこれが財産保全の法整備ができて、最低限宗教活動に必要なお金以外を全て差し押さえされてしまうと自由にお金を動かせない。韓国からの献金要請、ノルマに応えることができないということになってしまうので、韓国からの指示、上意下達の組織である故にこれを一番恐れているのではないかとみています」
■旧統一教会には100億円以上の資産あるといわれている
つまり教団側には100億円以上の非常に多くの資産があると考えていいのですか?
【鈴木エイトさん】
「はい。現状、教団が持っている不動産だけで100億円以上あるといわれていて、さらにこの教団が持っているのは不動産よりも現金、預貯金なんですね。一説によると数100億円から1000億円近くあるのではないかと言われています。教団にとって100億円って最盛期に毎月、韓国へ送っていたくらいなので、教団の財政事情からするとこの100億円は決して多い金額ではないのです」
教団が供託金にこだわる理由はこの後の流れにも関係してきます。解散命令が出された場合、教団は宗教法人格を失い税制上の優遇措置が受けられなくなります。そして教団側の資産が差し押さえられ、被害を訴える債権者に分配されることになるという資産清算が行われます。
【鈴木エイトさん】
「教団側は解散命令が決定した段階で清算人が選定されて、教団の資産を全て差し押さえられてしまうという点を非常に恐れています。この前に何とかお金を動かさないといけないという中で、供託金100億円を限度としてそれ以外のお金を自由に動かしたいのではないかと勘繰られてしまいます」
■紀藤弁護士「本当の問題の深刻さを理解していない」
この供託金について、統一教会の被害者を支援してきた紀藤弁護士にも見解をお伺いしました。
・被害者救済には1000億円以上が必要。
・国に金を預けるというポーズを見せることで、国や世論の沈静化を望んでいる。
・本当の問題の深刻さを理解していない。
【鈴木エイトさん】
「紀藤弁護士のおっしゃる通りだと思っていて、教団の被害って金銭的な被害だけではないんです。2世の被害とか精神的な損害とかそういうものをすべて含めて、教団側がここまでやってきたことについて勘ぐられてしまいます。紀藤弁護士が指摘される形で財産保全を進めていくべきだと思います」
国は教団側の供託金の提案を受け入れると思いますか?
【鈴木エイトさん】
「これは与党のプロジェクトチーム、PTチームで検討して法整備に動くということであれば、まさに教団の思うつぼになってしまいます。本当の意味での被害者救済、弁済、賠償がなされる道、本当に正しい道はどこかということをちゃんと与野党で協議のうえで財産保全の法整備を進めていってほしいです」
教団は被害者救済よりも、自分たちの教団の保身を優先しているように思います。
■元2世信者の方「憤りを感じる」
この会見を受け、元2世信者の方は「教団の責任を認めての謝罪ではなく憤りを感じる。100億円という資産の一部をくくり出すことで残りの資産をうやむやにする意図を感じる」と話しました。
【鈴木エイトさん】
「清算人が選定されるとその時点で教団の資産は全て調べつくされるのでそこを恐れているんじゃないかと。そこに行くまでに、何らかの処分であるとか所有権を移転したりとか、そういうことをしようとしているんじゃないかと感じますよね」
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】
「この元2世信者の方は、ご両親が現役の信者でたくさんの献金をしてご自身の生活も苦しかったそうです。そのうえで今もそのような生活を強いられている2世の子どもたちに対して教団側が全く思いをはせていないことについてとても憤りを感じるとおしゃっていたのが印象的でした」
被害を訴える元信者の方は、この会見をどう感じたと思いますか?
【鈴木エイトさん】
「当然納得はいかないでしょうね。(教団は)被害者という言葉をなかなか使おうとしなかったんですよね。被害と認めてしまうと、解散請求の審理に影響があると教団は言っていましたが、そうではなくて本当に被害、改革に取り組むのであれば、被害者に対して真摯に謝罪をして、本当の意味での改革、韓国との関係を断ち切って、日本だけで信仰に特化した団体にしていくとかそういうことがない限りは2世の方、元2世の方、元信者の方は納得いかないと思いますね」
■今後、旧統一教会の対応はどうなるのか
今後の見通しはいかがでしょうか?
【鈴木エイトさん】
「教団側がいろいろな政治家にまだ働きかけをしているようなんです。岸田首相に対してもFAXを送ったりしているという状況と聞いているので、政治家もこういう団体からのアプローチに対してきっぱりと絶って、ちゃんとした法整備をしていけるかという所を注目していきたいと思います」
ここで視聴者からLINE質問が来ています。
-Q:解散命令が出されたら、教団は完全に消滅するの?
【鈴木エイトさん】
「任意団体として継続は可能なので宗教活動はできます。集めた献金に関しては税金がかかるとみられているので、その辺りはメスが入りやすくなると思います」
‐Q:100億円の基金準備できるなら命令を待たずに過剰に募った信者へ還付するべきでは?
【鈴木エイトさん】
「集団交渉で40億円の被害弁護団が資産を出しているので100億円で当然対応ができますよね。それをしようとしないということは、これが単なるポーズではないかと当然見られてしまいます」
これから解散命令が出されるかどうか、司法に判断がゆだねられていますが被害を訴える方が、早く救済されてほしいですね。
(関西テレビ「news」2023年11月7日放送)