大手飲料メーカー・伊藤園が、人工知能が生み出したAIタレントをテレビCMに起用して話題となっています。
伊藤園の緑茶のCMです。 白髪で目じりにしわがある女性が”現在の姿”に若返る演出が印象的です。 出演しているこの女性、実はAI・人工知能で生成された「AIタレント」なんです。
街の人に聞いてみると、驚きを隠せない様子でした。
【80代女性】
「AI!?本人じゃないのね。目のへんがね、(広瀬)すずちゃんの感じしますね」
【男女3人組】
「AIなのこの人!AIの方なんですか。全然気が付かなかった、え?どういうこと!?」
伊藤園によるとAIタレントをCMに起用するのは日本初とのこと、その狙いを聞いてみました。
【伊藤園・広告宣伝部 上條裕介さん】
「健康的な未来の自分のために飲んでいただきたい飲料として、それを体現するタレントとして短い時間で今の自分と30年後の自分を一目でわかりやすく目的に合わせて伝える手段として採用した」
今回、AIに「健康的」「活発」「30歳前後の女性」などのキーワードを入力して生成されたAIタレント。
有名タレントではなくAIタレントを起用した理由は商品のコンセプトに合う人物像を作り出せるということ。もちろん“スキャンダル”もありません。
こうしたAIタレントの未来について専門家は…
【AIに詳しい近大・情報学部篠崎隆志准教授】
「低コストで高いクオリティのものが作れるという作り手側のメリットがあって、消費者が求める形を物理的な制約なく追求できると言うのが強み。最前線ではないにしろ、何らかの形でどんどん入り込んでくるのは間違いない」
日本初とされるAIタレントのCM出演ですが、起用するメリットはどこにあるんでしょうか?
今回、CM制作の関係者などに取材しまとめました。
▼まず出演契約料ですが有名タレントの方だと相場は数千万円から数億円に上るそうですがAIタレントだと、ナレーションを担当する声優の方への費用も含めて、数百万円だということです。
▼時間面ではスケジュール面で大きな違いが出ます。旬なタレントの方ほどスケジュールの調整は難しくなりますがAIだと、その必要がありません。
▼さらに、CMといえばイメージが大事になりますがAIタレントだと不祥事やスキャンダルなどのリスクもありません。
こうして見ると企業にとってメリットが大きいAIタレントの起用ですが、起用が増えることで、タレントの方の仕事がなくなるなど、今後に向けての課題もあります。
【ジャーナリスト・浜田敬子さん】
「面白い事例があって、この夏ぐらいからアメリカで俳優組合とか脚本家組合が大規模なストをしています。その俳優組合の方でデモをしてらっしゃる方のコメントを読むと、自身が少しだけ出演したのだけど、最後完成した作品を見たら、出演してないところも何カ所も出ている…と。つまり、ちょっと出演しただけの自分の映像をAI加工して、出ているのも作られてしまうと。そうすると、出演料は最初の少し出演した分しかもらえないわけですね。だから、本当に死活問題だと。 ライターとか記者でも、同じように文章がどんどんAIで書けちゃうわけですけども、人間がそもそもやる仕事の意味って何かっていうことがより問われるようになると思うんですよ」
その他に、AIタレントを作成するために、参考として用いた画像の著作権や肖像権などはどうなるのか…といった生成AIのルール作りにも課題が残っています。
【関西テレビ 神崎博解説デスク】
「例えばAIですと、実際に”ある人”の画像とか写真を取り込んで学習していって生成していきますが、例えば取り込んだ画像にものすごく似た人が出ていたら、その著作権・肖像権などはどうなるのか…という問題もあります。 CMの場合は、実際にAIが取り込む前の、ベースとなるモデルの人と事前に契約して『あなたとよく似たAIモデルが出ますよ』として、トラブルがないように問題を回避するとか。そういうケースもあるでしょう」
今後、その用途がさらに広がりそうな生成AIですが、安全に活用されるための環境整備が急がれます。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年10月27日放送)