■会場建設費 2度目の増額を報告
20日、大阪・関西万博に関しての報告会議が開かれました。そこで、万博の運営主体である博覧会協会が、大阪府の吉村知事や自見万博担当大臣などに、会場建設費がおよそ2350億円に上振れすることを伝えました。
当初の想定額である1250億円の1.8倍となり、増額分をどう賄うのかが焦点となります。
会場建設費の増額は今回が初めてではありません。2020年には、会場の大屋根の設計変更などで、当初の1.5倍となる最大1850億円への増額が報告されました。その時、大阪府の吉村知事はこのように述べていました。
【大阪府・吉村洋文知事】
「何度も増加するとなると、府民、市民も“どうなの?”という話になりますので、これが(会場建設費の)増加の話としては最後」
しかし、今年9月…。
【日本国際博覧会協会・十倉雅和会長】
「国内パビリオンなどの(建設費の)金額の推移も見ていると、かなりキツキツかなと。相当程度の額が積み増されると思います」
資材の価格や人件費などの高騰を踏まえ、再び会場建設費の精査を行うことになりました。 そして博覧会協会は、精査の結果として、今後も続くとみられる資材の価格や人件費の上昇分など、およそ500億円を上乗せして、2度目となる増額を正式に報告しました。
【博覧会協会・石毛博行事務総長】
「会場建設費について500億円増の2350億円が必要となるという精査結果となりました。今後、適切な執行管理を実施し、支出が最小になるように努めますが、500億円の増加をお認めいただきたく、ご検討をお願いいたします」
■費用の3分の2は“税金”から
そもそも、会場建設費は国と大阪府・市、それに経済界がそれぞれ3分の1ずつ負担するルール。つまり、3分の2は“税金”から支払われることになります。 これについて、街で聞いてみました。
【街の人】
「(増額の)額が額なので、不満というよりも不信というか不透明かなと思います」
「あんまり盛り上がっていない感じだから、税金から取られるのはちょっと嫌かな」
「行ったときにどれだけ楽しいものが提供されるか次第かなと思います」
「意味もなく増えるのは困るけど、ちゃんとその説明があればいいのかなと」
さらに、3分の1を負担する経済界の受け止め方もさまざまです。
【大阪商工会議所・鳥井信吾会頭】
「2019年上半期から急速にいろんなもの(の値段)が上がって、それがさらにコロナで加速したという背景がある。誰が悪いとかではなく、打ち勝つだけの知恵を出せるか、協力できるかということにかかっています」
【大阪商工会議所・立野純三副会頭】
「早く進捗して建築会社と契約を結べば、そんな問題は起こらなかったのではないか。全体をコーディネートする慣れたところ(人)がいない。失礼かもしれないが、(博覧会協会は出向職員の)寄せ集めでやっておられるので」
万博の開催まであと541日。会場建設費の増額は、これが本当に“最後”になるのでしょうか。
■「資材費や人件費の高騰が要因」
会場建設費の増額の経緯をまとめると、2017年当初は1250億円と見込まれていました。それが2020年に600億円上振れする形で、1850億円に。そこからさらに500億円上振れし、20日には最大2350億円という金額が報告されました。
上振れの要因について博覧会協会は、大きく分けて“3つある”と説明しました。1つ目は、物価上昇による資材費の上昇、2つ目は人件費の高騰、3つ目は予期せぬ事態(さらなる物価上昇、自然災害)への対応、とのことです。 しかし、当初は1250億円といわれていたものが、20日には2350億円と、およそ倍近くの金額に。そもそも、当初の見積もりが甘かったといえるのではないでしょうか。
20日の報告会議で、吉村知事は次のように話しました。
【吉村知事】
「一体、1850億円の工事がどれほど執行されているのかというのが、今日の説明だけでは、私にはよく分かりません。そして、2年で30%くらい、材料費も含めて物価が上昇しているという社会情勢はもちろん分かるのですが、ここで527億円、資材価格が443億円、労務単価84億円とありますが、この内訳についても詳細を確認したいと思います。一度、事務方において確認し、改めて博覧会協会に質問したい。今の段階で認める・認めないとは判断しません」
しかし、パビリオンの建設は順調ではないという現状を踏まえると、今後、大きなプランの変更も考えられます。そういったところも含めた上で、改めて精査されることに期待したいところです。
■大阪府議会「国が責任を持って対応すること」
増額された建設費について、国、大阪府、大阪市は負担できるのか?という点も注目すべきポイントです。
博覧会協会の幹部は建設費の増額について「資材価格や人件費の高騰を積み上げていて、国や大阪府市の精査にも耐えうる数字だ」と話しています。
また、20日の報告会議で吉村知事は、建設費がなぜ上がったのか、これから精査するとの意向を示していますが、一つハードルとなるのが大阪府議会です。 大阪府議会は、2020年に建設費が上振れした際に「さらに上振れする場合は、国が責任を持って対応すること」という意見書を可決しています。なお、府議会議員の一人は「引き上げが致し方ないという声は全くない。もめると思う」と話しています。
政府や大阪府市は、増額の理由などを国民にどう説明していくのか…。国民の納得を得るのは容易ではないと思われますが、これからその正念場を迎えることになります。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年10月20日)