今、季節外れのインフルエンザが、流行しています。そんな中で、かぜ薬などの医薬品の不足が深刻な状況になっていて、政府も対応に乗り出しました。
■小児科クリニックではインフルエンザ患者が急増
大阪・岸和田市にある小児科クリニック。
【医師】
「きのうから高熱ですか?家族がみなさんインフルエンザに既にかかられてるんですね。どの順番ですか?」
【患者の母親】
「お父さん、私、妹」
【医師】
「それでお兄ちゃんがとうとう熱」
お兄ちゃんの検査の結果は…
【医師】
「インフルエンザのA型です。やっぱり出ました」
朝からひっきりなしに患者が訪れていますが、ここのところ、インフルエンザの患者が急増しているといいます。
【あぶみ小児科クリニック あぶみ連太郎院長】
「ここにきてすごく増えてまして、先週53人来たんですけど、今週はおそらく70人ほどになりそうなんで。例年でしたら、いるかどうか、1人ぐらいですね。せいぜい」
厚労省によると、インフルエンザは、全国で1つの医療機関当たり1人を超えると「流行期入り」の目安とされていますが、9月から急増し、10月には9.99人に達しています。このため全国の1300以上のクラスで学級閉鎖が起きています。(※10月18日時点 日本学校保健会調べ)
■深刻な医薬品不足も
さらに深刻になっているのが医薬品の不足です。
【家族でインフルエンザに感染した母親】
「私が行ったときは、そこ(病院内)にはないから、違う薬局に行ってください」
【3人の子供がいる母親】
「子供が病気したときに、薬を例えば10日分もらうのが、3日分しか出せないとか言われたりして。(Q.なんの薬?)解熱剤カロナールとか、せき止めとかがなくて」
2020年以降、ジェネリック薬メーカーの不祥事が相次ぎ、生産量が落ちこんでいるところに、インフルエンザが流行。日本医師会が行った調査では、院内処方を行っている医療機関のうち約9割が、「入手困難な医薬品がある」と回答しています。
大阪市北区の薬局を取材すると、薬が置いてある棚には、「欠品中」や「入荷しにくい」の文字が見られました。
【エスエス薬局薬剤師 阪和則さん】
「もう全くない状態で、発注しても入ってこない状態が続いています。主にせき止めとかたん切りの薬が、今ちょっと入ってきにくい状態になっています」
この薬局では、薬が足りない場合、医師に言って薬を変えてもらうなどの対応をしていますが、先が見通せないと言います。
【エスエス薬局薬剤師 阪和則さん】
「このまま続いてひどくなったら、本当にせきで困ってる人とか、本当に必要な人に行き渡らなくなる可能性はあって、かなり恐ろしいことことになりますね」
こうした事態を受け、厚労省は製薬企業8社に対し増産を要請。在庫の放出や他の医薬品の生産ラインからの緊急融通を図り、9月末時点から1割以上供給が増える見通しだということです。
【武見敬三厚生労働大臣(18日)】
「国民に必要な医薬品を確実にお届けできるよう、今後ともあらゆる手立てを講じてまいります」
また年明け以降のさらなる増産に向けて、協力企業への支援策を経済対策に盛り込む方針です。冬の本格的なインフルエンザの流行シーズンを迎える前に、この危機的な状況を回避することはできるのでしょうか。
■現場の医師「薬が圧倒的に足りていない」、政府の対応は「焼け石に水」
薬不足について、福愛会いんべ診療所・忌部(いんべ)周院長に聞きましたところ、今は「たん切り薬」「せき止め薬」が圧倒的に足りていないとのことです。インフルエンザは、現在子供の中で流行しているのですが、これから高齢者に感染が拡大し、さらに薬の需要が増えることが予想されます。
忌部院長は、今回の厚生労働省の緊急対応は「焼け石に水」だと指摘しています。
いつまでこの薬不足が続くのか、忌部院長によると「年内は絶望的」だとのことで、インフルエンザの感染のピークである2024年2月でも全く足りない状況が続くのではないかということです。
例年以上に感染対策をしっかりやっていく必要がある状況となっています。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年10月19日放送)