“1泊15万円”外国人富裕層向けツアー 目玉は“滝行”! 参加者「素敵な体験だった」 関空の地元“通過するだけの街”大阪・泉佐野市の試み 2023年10月21日
日本を訪れる外国人の数が戻ってきています。今年4月に日本を訪れた外国人の数は、2019年の4月と比べて約7割まで回復。京都や大阪・ミナミは連日、観光客でにぎわっています。
そんな中、観光客には今一つ知られていない大阪府泉佐野市で、“1泊15万円の富裕層向けツアー”が企画されました。その狙いとは?
■泉佐野は観光地として認知されていない?
大阪の南西部に位置し、「関西国際空港」がある泉佐野市。ここでは近年、ホテルの建設が相次ぎ、今年に入ってからすでに3棟がオープンしています。
中でも、3月に開業した「OMO(オモ)関西空港 by 星野リゾート」は、関西国際空港から電車でひと駅とアクセスが良く、客室から飛行機を見ることもできます。
【OMO関西空港 中里 剛総支配人】
「たくさんいろんな国から来ていただきまして、国内で旅行された後、最後に関西国際空港から帰国予定のお客様が宿泊されるケースが多いと思います」
外国人観光客のおかげで潤っていそうな泉佐野ですが、ホテルが立ち並ぶ南海・泉佐野駅周辺の商店街では、こんな声が。
【街の人】
「目的はここ(泉佐野)ではないと思います。みんな大阪(市内)とか京都の方へ行くんですよ」
「大阪(市内)に行くんちゃいますか?皆さん」
「(泉佐野に)留まってはいないですね、少ない。スルーですね」
泉佐野は空港から近すぎるあまり、京都や大阪市内に行くための“通過”都市になっているということです。
日本に訪れた外国人観光客に、泉佐野を知っているか聞いてみました。
【アメリカから訪れた人】
「旅行の前は知らなかったけど、今は分かったよ」
【香港から訪れた人】
「分からないね」
【オーストラリアから訪れた人】
「泉佐野は関西国際空港からとても近い。きのう遅くに到着したので、宿泊に便利だなと思いました」
泉佐野は、外国人観光客に“観光地”として認知されていないようです。そこで、“関空から近いだけじゃない!京都や大阪に負けない魅力がある”と、泉佐野市と民間業者が協同。一般社団法人「泉佐野シティプロモーション推進協議会」を立ち上げ、市の魅力を発信することになりました。
そこで協議会が企画したのが「インバウンド狙い撃ち!1泊2日、15万円の富裕層向けツアー」です。
なぜ、このようなツアーを打ち出したのでしょうか?
【泉佐野シティプロモーション推進協議会 森川 武CFO】
「このツアーでは、富裕層のインバウンドの旅客をターゲットにしております。その中で、やはり唯一無二の滝行体験やクルーズ体験という、その価値を提供したいなと思いましたので、あえて高価格帯を設定しました」
■ツアーのモニターに密着!
泉佐野ならではの体験とは?外国人観光客は本当に満足できるのか?
フィリピン、ロシア、カナダ、アメリカ出身の男女4人がモニターとして参加するということで、密着取材しました。
まずは「大阪湾」を満喫する体験です。泉佐野が誇る大阪湾で爽快なクルージングを楽しみます。空を見上げると頭上近くを飛行機が通り過ぎ、迫力満点!
【アメリカ出身 シェイさん】
「すごくかっこいいね。最高だわ」
【ロシア出身 リザさん】
「素晴らしい」
まさに、泉佐野の立地を活かした体験です。
クルージングの後は、大阪湾の新鮮な魚が水揚げされる「青空市場」へ。外国人観光客には黒門市場が有名ですが、地元の買い物客でにぎわう青空市場は、観光客が来ることも少ない穴場スポットです。
【アメリカ出身 シェイさん】
「とても安いね。買いたいけど、保管しておく場所がないわ」
カナダ出身のベンコさんは新鮮な生ガキを購入。一口食べて「おいしい!」と笑顔を見せました。
さらに、午後2時から行われる“競り”は一般客も見学可能なので、見学すればより貴重な体験ができそうです。
続いては、初代の泉佐野市長が住んでいた古民家でお抹茶を点ててもらい、日本文化を堪能します。しかし、一人、辛そうな表情の人が…。
【茶道の先生】
「どうぞ足を崩してください」
フィリピン出身のジャンさんは、正座が耐えられなかったようです。
■温泉、そしてブランド豚など地元の美食を堪能
泉佐野といえば、大阪随一の温泉郷「犬鳴山温泉」が知られています。今回は「不動口館」という旅館に宿泊。お部屋に露天風呂がついています。
【カナダ出身 ベンコさん】
「すごい!素敵な部屋だね」
女性陣は浴衣を着て夕食を楽しみます。泉佐野が誇るブランド豚「犬鳴ポーク」など、地元のグルメを味わえるメニューです。
【アメリカ出身 シェイさん】
「とても柔らかいね」
【ロシア出身 リザさん】
「クリーミーだね。とてもおいしいわ」
さらに、泉佐野で採れたお米を使った釜めしを食べようとしましたが…「少し休憩しようかな」と、リザさんはお腹いっぱいの様子。
地元の美味を堪能した後はゆっくり温泉に浸かり、旅の疲れを癒します。
■ツアーの目玉はなんと“滝行体験”!
ツアー2日目は一番の目玉、「滝行」体験です。澄み切った小川が流れる山道を、森の香りを楽しみながら散策すること30分。
まずは七宝瀧寺(しっぽうりゅうじ)で、滝行の指導をする修験者に挨拶します。4人は修験者の衣装に興味津々です。安全祈願し、白装束に着替えたら、いざ滝行へ。
修験者に気合いを入れてもらい、冷たい滝に打たれた一行。初めての滝行体験の感想は?
【フィリピン出身 ジャンさん】
「とても寒くて震えていました。(滝行)体験が終わったあとは爽快な気分になって、リラックスできました」
【アメリカ出身 シェイさん】
「滝行を体験することは私の夢で、自分の中に宿っている力を感じたかったんです。まさにそんな経験ができたと思います」
滝行の後に参加者に配られたのは、ふるさと納税の返礼品で有名な“泉州タオル”です。ここでも泉佐野をアピールします。
【カナダ出身 ベンコさん】
「とても柔らかいね。水をしっかり吸収してくれそう」
この日はもう一つ、「護摩祈祷体験」にも参加しました。アメリカ出身のお坊さんに祈祷してもらい、神秘的な時間を過ごしました。
これで1泊2日のツアーは終了です。参加した4人は、15万円の価値を感じたのでしょうか?
【アメリカ出身 シェイさん】
「コスパがとても良い旅だったと思います」
泉佐野ならではの体験がたくさんできたと満足した一方、こんな意見も。
【ロシア出身 リザさん】
「護摩行はとても素敵でした。でも何が起きているかよく分からなくて。もう少し説明があっても良かったかもしれないです。もし私が旅行客であれば、それぞれの体験を楽しむ時間があまりなかったと思います」
改善すべき点もいくつか見つかったようですが、今後は?
【泉佐野シティプロモーション推進協議会 森川 武CFO】
「15万円の価値があったのかお尋ねしたところ、十分価値がありますよとのお話もいただきましたので、むしろもう少し付加価値をつけられるところはつけて、少し高くても、価値が分かるお客様には受け入れていただけるのではないかと思います」
強気な泉佐野ですが、1泊15万円の“体験”を売りにしたツアーに、富裕層は来てくれるのでしょうか。
ローカルならではのコンテンツを発信することで、グローバルに通用するのか…泉佐野の挑戦は続きます。
(関西テレビ「newsランナー」10月18日放送)