ある日、突然犯罪で家族を失う。
その後の生活で直面する深刻な現実があります。
犯罪被害者の遺族がシンポジウムで、賠償を放棄する加害者や十分ではない国の給付金制度の現実を語りました。
兵庫県尼崎市で開かれたシンポジウム。
参加した人たちの前で思いを語ったのは、犯罪によって突然大切な人を奪われた人たちです。
【森田悦雄さん】
「耐えるということを、今のこの年になって与えられているのかなと思う」
和歌山県紀の川市に住む森田悦雄さん。 8年前、息子の都史くん(当時11歳)を殺害されました。
懲役16年で服役中の中村桜洲受刑者(30)は、森田さんが起こした裁判で、約4400万円の賠償を命令じられたものの、賠償金はまったく支払われていません。
殺人事件の加害者から支払われた損害賠償額はたった13%程です。
一方、賠償金の支払いがないなか、被害者は訴訟費用を負担しないといけません。
【森田悦雄さん】
「(賠償金は)1円もいまだに入っておりません。コロナで仕事がなくなりまして、約4年そこそこ仕事があまりない。アルバイトしながら何とか食いしのんでいる」
当事者からの賠償が困難な現実があるなか、国は「平穏な生活を取り戻すため」として給付金制度を作っています。 しかし…
「私には幼い子供がいます。犯罪給付金の制度は本当にありがたくて、肩代わりしてくれるような制度だと力強く感じたものでした。でもそれは、制度を知れば知るほど覆っていってしまったのですね」
こう話すのは、2021年、大阪・北新地の心療内科クリニックの放火殺人事件で夫をなくした女性です。
国の給付金は死亡直前の収入が高いほど額が大きくなりますが、女性の夫は、一時的に仕事を辞めてクリニックに通い、仕事復帰を目指していました。
【北新地放火事件で夫を亡くした女性】
「(夫は)家族のためや自分のために働ける環境を探してリワークプログラムを頑張っていたが、『無職』とひとくくりにして価値をつけられたと強く憤りを感じていました」
政府は2024年5月までに給付額の引き上げについて提言をまとめる方針ですが、具体的な内容はまだ見えていません。
ある日突然大切な家族を失って直面する”現実”。
さらなる苦しみを軽減することはできるのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2023年10月16日放送)