季節が秋らしくなり、これから登山を楽しもうとしている方も多いのではないでしょうか。 しかし、いま全国で“遭難事故”が相次いでいます。
【110番通報】
「一緒に登っていた人が、低体温症で動けなくなっている」
10月7日、栃木県那須町にある朝日岳の登山道付近で、大阪市の男性ら60歳以上の男女4人の遺体が見つかりました。死因は、いずれも低体温症だということです。
朝日岳は標高1896メートルで、普段は小学生でも登れる危険の少ない山だといいます。
しかし事故が起きた当日は…。
【ロープウエーの従業員】
「20メートルを超えるような、体があおられてしまうような、強い風が吹いていました」
現場付近では、「強風注意報」が発表されていたほか、最高気温が4度までしか上がらず、かなり冷え込んでいたということです。
また、長野県内の山岳では、先週の3連休に、少なくとも16件の遭難が発生し、滑落した男性2人が死亡しました。
秋の登山にはどんな危険が潜んでるのでしょうか?
関西屈指の人気登山エリア神戸「六甲山」系で実際に登山を取材しました。 3連休が明けた平日の朝から高齢のハイカーたちが、山登りを楽しんでいました。
‐Q:事故にあわないために気を付けている準備は?
【登山歴20年以上(75)】
「笛も持ってるし、GPSも(スマホに)いれてもらってるし」
神戸市消防局によると、六甲山系周辺での遭難にともなう出動件数は、コロナ禍の2020年に過去最多の96件になりました。
2023年も8月までに、60件とハイペースで出動しています。
【登山歴45年の山岳ガイド 加藤智二さん】
「遭難のテーマでいうと、ほとんどの人が疲れて、体が疲労してしまって、歩けません。足が釣っちゃいましたとか。結局、遭難防止は自分の健康管理・体調管理」
こう話すのは、登山歴45年の山岳ガイドの加藤智二さんです。
今回、数あるハイキングコースの中から加藤さんが選んだのは、神戸市灘区の灘丸山公園から頂上へ向かう初心者でも登れるコースです。
【登山歴45年の山岳ガイド加藤智二さん】
「特に道迷いで多いのは、上りで迷う人って少ないんですよ」
秋の登山に潜む危険、それが「道迷い」です。
六甲山系で2022年1年間で起きた遭難件数92件のうち道迷いは全体の37%を占めます。
加藤さんによると遭難者は、頂上を目指す上りよりも、裾野の範囲が広くなる下りの方が多いといいます。
【登山歴45年の山岳ガイド加藤智二さん】
「よく使われている登山のスマホのアプリだと、こまかな点が積み重なって、それが太ければ太いほど、たくさんの人が歩いている。点線がすくないのは誰かが、道迷いでフラフラ歩いた名みたいな感じですね」
最近は、登山アプリを利用する人も増えていますが、アプリに頼りきると、うっかり正規のルートから外れてしまうこともあるといいます。
秋になり、これまでより日没の時間も早くなっていて、加藤さんは、事前にしっかりとした計画を立て、山に登ることが重要だと話します。
「道迷い」のほかにも、見過ごせないリスクがあります。 神戸市消防局によると、2022年の六甲山系の遭難件数で最も多かったのが、転倒・転落で38%です。
【登山歴45年の山岳ガイド加藤智二さん】
「例えば、木の根っこに引っ掛ける人って、足上げたらいいじゃないっていうけど、中高年の事故が多い原因のひとつは、自分が思っている以上に足があがっていない」
【登山歴45年の山岳ガイド加藤智二さん】
「一般的に登山では下りの時のほうが滑落が多い。それはいきなり滑落が始まるのではなくて、蹴つまづき、転倒が起因となって、滑落・転落する。きっかけは“つまづき”ですよ。本当にちいさいところです」
加藤さんは登山の時の注意点は体力の過信をしないという心構え、低体体温症を防ぐ、道具をそろえるという3点が大切だと話します。 どのような山への登山でもしっかりと準備・計画をして、気を付けて楽しみたいものですね。
(関西テレビ「newsランナー」2023年10月10日放送)