兵庫県赤穂市を通る国道2号は、普段は車がすいすい通れる道路。しかし今、大阪・神戸から岡山・広島へ向かう下り車線で頻繁に渋滞が発生している状況です。
きっかけとなったのは9月5日に発生した山陽自動車道の尼子山トンネルで起きた火災。復旧作業のため高速道路の一部区間が通行止めとなっていて、1カ月がたとうとしている今も、国道2号が迂回路として使われているのです。
9月5日、山陽自動車道・尼子山トンネルでトラックが炎上し、車9台が絡む追突事故が発生しました。火災が発生した時には、燃え上がった火でトンネル内は真っ赤になるほどでした。車を乗り捨て走って、間一髪、逃げる人の姿も見られました。火は車に次々と燃え移り、消し止められたのは発生から約40時間後でした。
■NEXCO西日本史上で最も長い時間燃えたトンネル火災
このトンネル火災は、NEXCO西日本史上で最も長い時間燃えたものとなりました。その被害は深刻でした。
【記者リポート】
「ここはたくさんの後続車両が火に包まれた場所で、天井を見ますとコンクリートがはがれて火災の大きな被害がうかがえます」
復旧作業をへての通行再開には少なくとも3カ月かかる見込みで、すでに九州方面からの物流や、観光シーズンを迎える広島方面の高速バスなどに影響が出ています。
【有識者検討会委員長 東京都立大・砂金伸治教授】
「(トンネルは)ボロボロな状態ですので削っていかなければならない。一律全て削るのが良いのか、もしくは全て残すのがいいのか。そこが一番の復旧に向けた大きなポイントの一つにになるのかなと」
山陽自動車道下り線の播磨ジャンクションから赤穂インターチェンジの間は今も通行止めとなっています。
■2つの迂回路 中国道へ誘導したいNEXCO西日本
迂回路は主に2つあります。1つは、一般道の国道2号。 もう1つが、高速道路の中国自動車道です。
NEXCO西日本は、空いているとして中国自動車道の利用をすすめていますが…
【鹿児島に向かうドライバー】
「2号線を選ぶ時が多い。(中国道は)時間もかかるし、アップダウンがきついから、燃費も悪くなるから」
【岡山へ向かうドライバー】
「(中国道は)40分くらい余計に時間がかかる。(中国道経由でも)金額は一緒なんだけど、時間的なものがある」
NEXCO西日本は、迂回で中国自動車道を利用したドライバーに500円分のクーポンを配布するなど対策を取っていますが、あまり人気がない様子です。
■迂回路 国道2号は…
もう1つの迂回路、国道2号はどうかというと…
【記者リポート】
「山陽自動車道を下りて、国道2号に入りました。このあたりから1車線になるということで、先の方まで渋滞しています」
国道2号の交通量は火災が起こる前に比べ、ピーク時で3.6倍に増加しました。周辺にも影響が出ています。
【ガソリンスタンド従業員】
「メチャメチャ混んでます。土日はふだん来なかったような客が多くなった。岐阜から広島に行くような方が間に寄ってくれる」
【国道2号の利用者】
「トラックの台数が増えている印象なので、少し怖い。迂回路で事故があったというのも聞いたので」
Q、配達に影響は?
【宅配業者】
「多少出ます。遅れることもある」
さらに近くにある高齢者施設ではこんな影響も。
【老人ホームスタッフ】
「2号線が混んでるので、(利用者の)お迎えの時間に影響が出る感じ。あまり脇道入るのは危ないので、時間かかるのはやむをえない」
■影響は地元住民・運送業・観光業に
大型車両はアップダウンの激しい中国道ではなく、市街地へのアクセスがしやすい国道2号を迂回路として使うことが多いそうです。大型車両が多く通ることから、地元の人からは「この道を自転車で通るのが怖くなった」という声も聞かれました。
住民の生活以外でも様々な影響が出ています。運送業の佐川急便では一日に約250台が山陽自動車道の下り車線を通過しますが、迂回によって荷物の輸送時間が約1時間増加し、ドライバーの勤務時間も増えてしまっているということです。観光業界でも、高速バスを運営する神姫バスでは、神戸から広島に向かう便で約1時間ほど遅れているということです。
■復旧には少なくとも3カ月はかかる
4日、改めてNEXCO西日本に復旧を早めることはできないのか確認したところ、少なくとも3カ月はかかるという見通しに変わりはないということです。
損傷したコンクリートを削って補強したり、電気設備を整えたりと大規模な工事が必要なので復旧には膨大な時間がかかるとみられています。
関西に住む私たちにも、迂回路の周辺に暮らす人にも大きな影響を与えているトンネル火災による通行止め。一刻も早い通行再開が、望まれます。
(関西テレビ「newsランナー」2023年10月4日放送)