岸田首相が内閣改造と自民党の役員人事を行いました。初入閣は11人、女性閣僚は改造前の2人から5人に増え“過去最多”に並びました。この改造による岸田首相の真意は何なのか?そして解散のタイミングに関する「3つの怪文書」とは何なのか、ジャーナリストの鈴木哲夫さんに聞きました。
加藤デスクは女性大臣が5人と過去最高に並んだということですが、どこに注目されましたか?
【関西テレビ 加藤さゆりデスク】
「女性閣僚の数に関してですが、数がいればいいという訳でもないと思います。やはり今までが海外に比べてあまりにも日本の女性閣僚が少なかったと思うので、今回入閣された方には期待したいです。 特に注目しているのは、こども政策担当相の加藤鮎子さん。6月に日本で開かれたG7の際に、男女共同参画に関する担当大臣会合というのが開催されたのですが、各国が全員女性の担当大臣が来られているなか、ホストの日本だけが男性の小倉將信さんでした。この点はすごく賛否両論があって、男女共同参画の話とか女性活躍の話をする会合なのに、なぜ女性がいないんだと。世界からそういう風に見られたところだったので、加藤担当相にはぜひ“現役のお母さん”としても頑張ってほしいなと思います」
■主要な閣僚ポストは「留任」 これでは国民の声は”やり過ごし”
鈴木さんに今回の内閣に名前を付けていただきました。「国民の声やり過ごし内閣」ということです。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】
「女性の閣僚も増えて、この点はあってしかるべきところですが、でも逆に言うと、本当にこれでいいのか…という厳しい面も僕は持たなきゃいけないと思います。その視点からするとですね、“国民の声をやり過ごしてしまっている内閣”ではないかと(Q.かなりマイナスにも聞こえますが…)ちょっと厳しめかもしれません。ただ、今回の改造内閣のメンバーを見てもらったら分かると思います。確かに新しい人もたくさん入っていますが、主な重要閣僚はほとんど留任なんですね。政策・国民の声が一体何かというと『世論調査』なんですよね」
その世論調査に関してはこちらです。今、物価高騰や少子化、そしてマイナンバーの問題、旧統一教会の問題も忘れてはいけません。問題は山積しています。最新の調査では国民の支持率は「支持する」が41.5パーセント、「支持しない」は53.5パーセント。今回「国民の声をやり過ごし内閣」が誕生した…と。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】
「そういうことですね」
■総裁選を見据えいろいろな派閥にうまく”配分”した
鈴木さんによりますと、岸田首相の中での優先順位は、国民ではなく「総裁選」を見ているからだということです。鈴木さん、解説をお願いします。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】
「(この世論調査は)すごい重要なポイントだと思います。最近の世論調査で批判されているのは、岸田さんの性格的なものや個人的なものではありません。やはり国民は政策に対して、ものすごく批判を持っているわけです。例えばマイナンバーカードとか、処理水の問題も十分説明できているのか…ということですよね。それから増税についてもですね。増税の流れがずっと出てきていて、(岸田首相は)一応否定はしているけれども、そういう政策に対して国民は『おかしいのではないか』と。それで世論調査で支持率が低いんですよね。 例えばいま私が例にあげたマイナンバーカード。いろいろ批判されているのに、マイナンバーカードの担当大臣は変わっていません。増税はどうなるのか?という点については、財務大臣は変わりませんでした。つまり今、国民がすごい批判的になっている部分の担当者は変わっていないということです」
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】
「つまり、これらの政策に関するポジションについて留任となって、国民の声をどこまで本当に聞く内閣なんですか…と。 どうも来年の総裁選を考えて、バランスというか力学というか、そういう流れを考えながらそっちを優先したのではないかということです。ある自民党のベテラン、有名な方がこう言ってました。これは完全に内向き。国民の方を意識したというよりかは、自民党の中の、内向きでやった改造ということです。 岸田さんは自分がトップですから、心力を維持したい。さらに来年の総裁選でもし、もう1回やるとすれば、そこで支持してもらわないといけません。であれば敵を作りたくない。いろいろな派閥にうまく配分をしたということです」
■練りに練った人事が茂木幹事長と小渕選対委員長
そのために今回、岸田首相が練りに練った人事というのがこちら、2人います。
留任となりました茂木敏充幹事長。鈴木さんも「茂木氏に対して岸田首相は、本音では外したいけど外せない。外してしまうと総裁選で岸田首相に牙をむく。また小渕氏については、周囲からの後押しで今回、昇格させたが”要職”にはできない事情もある」ということなんです。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】
「茂木さんはやはり次の総裁選で総裁を狙っています。だから岸田さんにとってみればライバルです。茂木さん最近、割と積極発言があったり、総理を飛び越えて発言したり不安材料もありました。『本当は変えたい』という話が周辺から出ていたんです。だけど茂木さんを外したら完全に反主流派になって、来年の総裁選に向けて牙を見せることになります」
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】
「小渕さんに関しては、これは亡くなった元・官房長官の青木幹雄さんや森元首相から『小渕さんを大事にしろ』という声もあって、そういうところも考えながらの配置ですね。ただ”要職”にはできません。小渕さんは政治資金問題で過去に大臣も辞めています。もし閣僚だったら、国会の委員会でそのことをまた追及されるわけです。だから“党の役職”であれば国会で追及されことはありません。しかもこの2人は同じ派閥ですから岸田さんとしては、同じ1つの派閥でライバル同士に競わせる、それでちょっと安泰になるみたいな…そんな微妙なポジションを与えた感じもあります」
新しい内閣を発足させた岸田首相ですが、気になるのが「解散」というカードをいつ切るのかです。永田町に3つの怪文書が出回っているそうです。
怪文書1は首相側近の話として、9月解散10月22日投開票。
怪文書2は自民と創価学会の幹部らの話として、11月解散12月10日投開票。
怪文書3は首相側近の話として、解散せず岸田首相が総裁選に不出馬。
鈴木さん、こういった怪文書が出ているのですか?
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】
「9 月解散は物理的に無理かなと思いますね。怪文書2ですが今回の人事をキッカケに今度の臨時国会で、経済対策や旧統一教会の「解散命令」も決断しないといけません。それらを経て11月末解散を狙うか…(Q.勢いをつけて解散ということでしょうか?)先ほど新幹線の中で、もう1つの怪文書も取ってきました。それは11月26日の投開票です。この2番目の怪文書に近いですね。いろいろな政策をやりながらアピールをして…という感じです。最後は、解散もしない、来年の総裁選にも出ないという話。1期3年で辞めるという選択ですね。実は総理にかなり近い人が昔から言っています。それが私はどこかで引っかかっていて…。だけど、まぁ可能性としては、怪文書2が可能性としては最も高いですかね」
■政治ジャーナリスト鈴木さんも驚いた”上川氏の起用”
視聴者の皆さまからこんな質問が届きました。
Q:林芳正外務相が担当を外れましたが、何があったのでしょうか?
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】
「新しい外務大臣が上川さんでしたが、これはちょっと驚きました。いろいろ取材をしましたが、理由は3つあります。1つは、林さんと岸田さんのコミュニケーションがうまくいっていない。林さんは、岸田派での次のエースなんですが、実は前の宏池会の古賀誠さんに非常に近い。その古賀さんと岸田さんが微妙な関係だから人間関係がうまくいっていません。それからもう1つ、さっき加藤デスクが解説したように、女性閣僚が少ないというより、世界で日本が批判されています。3つ目は、岸田さんは『外交は俺がやる』という自信を持っています。だから『俺が外務大臣なんだ』と。上川さんは、まあレール敷いてくれればいいという程度で。そんな3つの理由があって、林さんから上川さんに外務大臣を変えたのではないか…というのが昨日からの取材でわかりました」