【先生】
「夏休み終って宿題バッチリできてますか?」
【児童】
「できてまーす!」
楽しい夏休みも終わり25日から2学期がスタート! みんなの夏は…
【小学5年生児童】
「おばあちゃん家に帰りました!」
【小学5年生児童】
「新幹線で東京に1人で行きました」
Q.ひとりで怖くなかった?
「逆に楽しかった」
暦の上ではもう秋ですが一向におさまらないのが…
【記者リポート】
「始業式が行われた大阪市内の小学校では、手元の温度計は31度と運動場に立っているだけで強い日差しで体力が奪われます」
そう、厳しい暑さです。
夏休み明けのこの時期、体が暑さに慣れていない場合があることから、熱中症のリスクが高まるとして文部科学省は全国の教育委員会などに対策を徹底するよう通知しました。
実際に今週火曜日には、北海道で小学2年の女子児童が体育の授業の後、熱中症の疑いで搬送され死亡するという痛ましい事故も起きています。
■学校行事を見直すほどの取り組みを
【枚方市立枚方第二小学校 坂本雅人校長】
「おはようございます。久しぶり2学期もがんばりましょう!」
大阪でも特に暑い枚方市にある小学校では、様々な熱中症対策が行われています。
その一つが、荷物を軽くして通気性の高いリュックサックなどの利用ができる「ノーランドセル通学」です。
【枚方市立枚方第二小学校 坂本雅人校長】
「熱中症というのは体育の授業だけじゃなくて、登校中などにも起こりやすいことですので、少しでも負担を軽減してあげたいなという取り組みを考えました」
また、例年9月下旬ごろに行われていた運動会を、今年は暑さが和らぐ10月下旬に変更することに。
運動場には児童たちがこまめに休憩できるよう、冷却ミストがついた日陰になるテントを2学期も引き続き設置します。
【枚方市立枚方第二小学校 坂本雅人校長】
「恐らくこういう形で何年も異常な気象が続いてくということですので、今までのような取り組みから、もう一度学校行事の一つ一つを見直すほどの取り組みを考えていかなければならない事案だなと」
誰が、いつなってもおかしくない熱中症。身近な症状になりつつありますが、時に深刻な「後遺症」につながることがあります。
■熱中症で重い後遺症となった娘と支える両親「熱中症は防ぐことができる」
栗岡梨沙さんは16年前、高校2年生だった時テニス部の練習中に熱中症で倒れ、一時心停止となりました。
【父・栗岡正則さん】
Q.どんな状態ですか?
「倒れた時に低酸素脳症になって脳が萎縮した。目が見えなくなる、発音ができなくなる、手足が動かせないというのが最初に起きて」
救急車で病院に運ばれ一命を取りとめ、集中治療室で4か月間治療を受けました。それ以来、つきっきりの介護が必要となりました。
娘はなぜ、熱中症で倒れたのか。両親が調べて分かったいくつかの要因があります。まず、梨沙さんが倒れた日はまだ5月でしたがコート内の気温が高かったこと。そして、11日ぶりの部活動で身体が慣れていない状態で大きな負荷がかかったことです。
2学期が始まったばかりで、気温がまだ高い今の時期と条件が重なる部分も多くあります。
【栗岡正則さん】
「どうしてもその暑さに慣れていない時、体が体温調節を上手にできない時というのは、季節に関係なく熱中症が発症しやすいのは後で分かったことだけどね」
両親とともに今もリハビリを続けている梨沙さん。コミュニケーションが難しい部分もありますが、時には会話の内容などに笑顔を見せることもあります。
父の正則さんが「梨沙、何歳?95歳?あ、違うな、そこまでいってないな」と冗談を言うと、梨沙さんは笑顔を返しました。
Q.梨沙さんは今年で何歳?
【栗岡正則さん】
「今32歳。ただ我々は倒れた日の朝のままやから。まだ娘は、我々の中では16歳やな」
文部科学省は梨沙さんが倒れる4年前に、熱中症の予防や応急措置についてまとめたパンフレットを全国の学校などに配布していましたが、生かされませんでした。
【栗岡正則さん】
「体調なんて十人十色。千差万別なので。やはり、その子・その子に応じた状況を大人たちが十分、健康管理には留意してあげないといけないと思う」
Q.北海道の小学生の子が熱中症になった事故もありましたが?
【母・栗岡弘美さん】
「本当に残念で。残念でなりません。もう梨沙の事故で、熱中症による学校事故は最後にしていただきたかった。やはりそれぞれの現場にはまだまだ届いてないんだなと。防ぐことができるんですよね。熱中症はね。だからなおさら残念で」
■熱中症の症状が軽症や中等度の場合でも後遺症の危険はある
時に人生に大きな影響を残す熱中症。熱中症の後遺症とはどのような症状があらわれるのか、後遺症にならないためにはどうしたらよいのか、兵庫医科大学病院の服部益治医師に話を聞きました。
熱中症の軽症や中等度の症状の場合でも後遺症の危険はあるのでしょうか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「軽症や中等度の症状だったとしても、実際は危険な状態になっていることもあるので後遺症の危険はあります。熱中症が疑われた場合は救急車を呼ぶというのが一番良いですね」
■熱中症の後遺症は「脳へのダメージ」
熱中症の重症の後遺症の危険についてみていきましょう。 熱中症の後遺症は脳へのダメージといわれていて、高温が脳細胞を破壊してしまうことで起こります。 それによって…
・めまいや頭痛が続く
・記憶力が落ちる
・感情を制御できない
・物を飲み込めない
・歩行障害
など様々な症状が出る可能性があるということです。
日常生活を送りながら、こういった症状が出るということもあるんですか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「脳というのはもともと熱に弱い所なんです。皮膚であれば汗をかくんですが、脳細胞はある限界を超えるとつぶれだしていくんですね。脳というのは色んな事をコントロールする場所ですので、その障害というのは少なくないということですね、熱中症は生きた、亡くなったの両極ではなくて、後遺症なく治ったか、後遺症を持ったまま一生生きることにもなるのか、という段階もあるものなので十分注意が必要な病気だと思います」
この症状の期間はどれくらい続くものですか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「脳のダメージを受けた場所によっては一生ですね」
完治することはありますか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「もちろん症状が軽ければ、症状がなくなってくる場合もあります。しかし、記憶力や感情の制御に関する後遺症は一生残ることになるでしょう」
栗岡さんのケースのように、暑さに体が慣れてないということも熱中症の原因の一つではないかということですが、例えば、連日練習していれば熱中症になりにくい体を作ることにつながるのでしょうか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「5月は夏の暑さに体を徐々に慣らしていく時期といわれています。いきなり運動をしたという点が気になります。徐々に練習量を増やしていっていれば、体が暑さに慣れていっていたのかなと思います」
休み明けとなる2学期が始まってすぐに運動をするというのは怖い状況ですよね。
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「そうですね。25日から新学期、まだまだ暑さは続くので、子どもたちに無理をさせない、徐々に慣らすということをしていただきたいなと思います」
学校や指導者の方もちゃんと理解をしておくということが大切ですね。
■腎臓へのダメージ
腎臓へのダメージにも注意が必要です。腎臓というのは体内の毒素を尿にして出すという臓器です。体内が水分不足になると尿を出さなくなってしまい毒素がたまります。毒素がたまりすぎてしまうと腎不全になってしまいます。そうなると一生人工透析をしないといけない恐れがあるんですね。
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「国民の8人に1人が慢性腎臓病を持っているといわれているんですね。夏の暑さで体の水分が少なくなるという腎臓に負担をかける状況になっていますので、対策としてはこまめな水分補給をしていただくというのが大事です」
そして熱中症にならないためにはどのような対策が必要なんでしょうか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「まだまだ暑さが続きますので、自分がいる環境が安全なのかどうかを確認するとともに、こまめな水分補給を9、10月くらいまで続けていただくと良いかと思います」
服部医師は「熱中症予防というのは自己責任だけではもはや無理である」という指摘もしています。これはどういうことなんでしょうか。
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「誰も経験がしたことがないような地球沸騰時代だといわれてますので、社会全体で考え、守るという意識が必要であると思います」
ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問です。
「Q. 熱中症対策として有効な飲み物や飲むタイミングを教えて欲しい」
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「汗のかき方にもよりますが、クーラーの中にいて汗をかく量が少ない場所であれば、カフェインの入っていない麦茶や水をこまめに飲んでいただくことで良いと思います」
飲み物はどういう飲み物がいいんでしょうか?
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「飲んだものが体の中に残るということになると、一気のみじゃなくて100ml、200mlと分けて飲む、カフェイン・アルコールの入っていないもの、昔から夏は麦茶と言われている通り、麦茶や水でいいんじゃないでしょうか」
「Q.一度、熱中症になるとなりやすい体質になるの?」
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「熱中症というのは、脱水症といって体の水分が減った状態のことを言います。水分がどこにあるかというと筋肉細胞にあるんですね。だから筋肉が少ない人はもとより熱中症になりやすい。すなわち高齢者、女性、子どもなんです。そういった人は一度なったら繰り返すというよりは、もともとなりやすいので繰り返してしまう」
筋肉量が大事なんですね。
「Q.平熱が低い人と高い人で熱中症のなりやすさは変わる?」
【兵庫医科大学 服部益治医師】
「子どもの方が平熱は高いといわれてますよね。あまり平熱と熱中症のなりやすさは関係なくて…ただ日頃から体温のチェックを行っている方はこのまま続けていただければ良いかなと思います」
これからも、しばらく暑さは続きそうです。熱中症への対策は、まだまだ重要です。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月25日放送)