関西各地の今年の夏の物語をお伝えする「夏のかたち」。
初回の今回は、50年の歴史に幕を下ろした大阪で最も古いプラネタリウムです。
何世代にもわたり、「美しい星空」を見せてきたプラネタリウムの最後の夏を取材しました。
大阪府茨木市に、50年前から地元の人に親しまれてきた小さなプラネタリウムがあります。
中ではドーム型の天井スクリーンに星空が映し出され、解説員の声がやさしく響きます。
「頭の上に宇宙が広がってるなぁなんて、感じることは少ないかもしれません。みなさんのお住まいの近くでは、どのくらいの星を数えることができるでしょうか?たくさんの星が見えていますか?」
アメリカによる人類初の月着陸から4年後、世界が宇宙ブーム真っただ中だった1973年に、このプラネタリウムは開館しました。
開館当初から使っている投影機「MS‐8」は大阪で一番古いものです。
この機械に一番詳しいのは、解説員を務める上田裕昭さんです。
【解説員 上田裕昭さん】
「恒星、いわゆる普通の星を投影する機械がこの大きい丸ですね。これが片側に16個ずつついてます」
【上田さん】
「ここ(コンソール)にいっぱい機能があって、ここを千手観音のようにパーッといじるのが、プラネタリウムの職員の腕の見せどころだったわけです」
上田さんは6年前までこの投影機を作った「コニカミノルタ」で働いていて、定年退職後、解説員になりました。
【上田さん】
「1971年か、72年に発売された機械で。結構たくさん日本中にあったんですけど、もう残っているところは少ないですね。寿命としては、まだまだ使えます。地震で壊れてしまったので、この先は使えないかなと」
2018年に起きた大阪北部地震で、茨木市では震度6弱を観測しました。この地震で投影機は、回転しながら惑星を映し出す腕の部分が歪んでしまったのです。これまで修理をして使っていましたが、建物の老朽化からプラネタリウムが閉館するのを機に、投影機も引退することになりました。
【上田さん】
「最後はこの機械の星空をゆっくり楽しんでいただいて、ゆったりとした気持ちになってもらいたいなと思っています」
■大阪で最も古いプラネタリウムの最後の日
【親子で来館した人】
「(自分が)小さい時にも来てると思います。(娘の)幼稚園でも来て、この間天体観測もさせてもらって。ここがなくなるから最後来なあかんわと思って」
【高齢の来館者】
「20年くらいになるんちゃうかな。星が好きだし、ゆっくりできますでしょ」
【親子で来館した人】
「子どものプラネタリウムのプログラムがあって、ずっと連れて来てました」
「これ見れるのが今日で最後かと思うとずっと来てるものとしては、すごい寂しいです。将来は宇宙飛行士になりたいです」
【職員】
「ちょっと早めですが、入場を開始させていただきます。(チケット)どうぞ」
最後にもう一度、星空を見ようと多くの人が駆けつけました。
【上田さん】
「50年以上にわたって上映してきましたプラネタリウム。この回が最終回となります。今回はあまり星座をご紹介せずに、この機械の星空を楽しんでいただきたいと思います。少しだけ紹介しておきます…天井高い所に、こと座のベガ、わし座のアルタイル。オリオン座、西の空低くなってきますと春の星座が現れます」
【上田さん】
「幼稚園のときに見たということをよく覚えてる人が多くて、やはり市民に親しまれてると。特に子どもたちにそういう楽しさを伝えたいなと思ってずっとやってました」
都会の真ん中でずっと美しい星空を見せてきました。
その役割を終えた夏、そっと灯りを消しました。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月21日放送)