近畿地方を縦断した台風7号。土砂被害が発生した京都府綾部市でも、16日朝から復旧作業が行われています。
被害が発生したのは、15日午前0時ごろ。台風はまだ紀伊半島の南の海上にある時間帯でした。一体、何があったのでしょうか。
【記者リポート】
「山奥で発生した土石流は一気に集落を襲いました。多くの流木が建物に流れ込んでいます」
14日午後11時半ごろ、猛烈な雨が降り、記録的短時間大雨情報が発表されました。その直後、大規模な土石流が発生し、集落に土砂が流れ込みました。
流木が激突した倉庫のすぐ隣の母屋にいた男性は当時の状況を次のように話します。
【住民】
「夜の12時半ぐらいからゴーっと言い出したんだよ。杉の木が奥から5、6本から流れてきた。恐怖っていうかな、どうなるかって一瞬思ったよ」
外を見ると、道路は濁流に飲まれていたといいます。男性は命の危険を感じ、すぐに消防に通報しました。
家の中に取り残されていた90代の女性もいましたが、かけつけた消防隊員たちが救出。集落の住民たちは一時、近くの集会所に避難し、けが人はいませんでした。避難指示が出たのは住民が避難を終えた後でした。
深夜の集落を襲った、大雨と土石流。当時の避難の状況を住民はこう振り返ります。
―Q:住民だけで避難できる状況でしたか?
【住民】
「(そんな状況)じゃなかった。歩けない。水がダーッと流れてるから。両サイドをレスキューに抱えてもらって」
【住民】
「今までの経験からこんなことにはならんやろと。70年いるけどこんなん初めて」
―Q:もうちょっと早く避難したらよかった?
【住民】
「そんなんできない。こんな状態誰も分かってないし」
突然襲ってくる自然災害。わたしたちはどのように避難をしたらいいのでしょうか。
現地で取材を続けている宇都宮記者に話を聞きました。
【宇都宮雄太郎記者】
「朝から住民が流木などを撤去しようとしていたのですが、後ろに見えますように一本一本かなり大きいため重機などで運ぶのも難しく、なかなか撤去が進んでいない状況です。流れ込んだ土砂が大量に積まれています。2メートル以上の土砂が奥に向かって残っていて、復旧作業にはかなりの時間がかかるとみられます」
14日夜から15日にかけて何があったのか振り返ります。
綾部市に14日午後11時ごろ、大雨・洪水警報が発表されました。およそ30分後には、1時間でおよそ90ミリの猛烈な雨が降ったとして「記録的短時間大雨情報」が発表され、ほぼ同時に「土砂災害警戒情報」も発表されました。この「土砂災害警戒情報」は避難指示の目安となる警戒レベル4にあたります。
しかし、綾部市では避難指示は出ませんでした。そしてまだ住民が避難できていない15日の午前0時ごろ、綾部市の深山地区で土石流が発生。近隣住民の通報を受けて消防が避難誘導や救助にあたり、避難指示がでたのが午前2時ごろでした。
―Q:どうしてこのような状況になったのでしょうか。
【宇都宮雄太郎記者】
「取材をする中で、私は2つの想定外があったのではないかと感じました。1つ目は住民にとっての想定外です。ここは土砂災害警戒区域に指定されているのですが、被害にあった住民からは、『こんな災害はこれまでに経験したことがない。土石流が起きるとは全く思っていなかった』という声が多く聞かれました」
「2つ目は行政にとっての想定外です。綾部市は台風の進路から、大雨が降るのは15日の昼以降だと考えていました。そんな中で、14日の夜という予想外のタイミングで、短時間に猛烈な雨が降りました。綾部市の担当者は、14日の夜に避難指示を出すということは全く頭になかったと話していました。また夜は暗く、歩くには危険なので避難所への誘導を積極的にするわけにもいかず、避難指示の判断は難しかったとも話していました」
―Q:今回の教訓を生かすためには何が必要でしょうか。
【宇都宮雄太郎記者】
「行政の出す避難情報を見て行動するのも重要ですが、行政のできることにも限界があります。自分の命を守るために、特にリスクの高い場所にお住まいの方は、警戒心をもって過ごし、雨が降る前の事前の避難を心がけることが重要です。また行政も、情報発信の方法を工夫するなどして、危機感が住民に伝わるようにする必要があると思います」
(2023年8月16日 関西テレビ「newsランナー」放送)