■「生活保護費」の引き下げ処分の取り消し求める集団訴訟 全国で実施
全国各地で行われている生活保護費の引き下げ処分の取り消しを求めた裁判で、同様の一審の裁判を担当した裁判官が控訴審を担当するのは「公正を妨げる」として、奈良の弁護団が大阪高裁に「忌避」を申し立てました。
生活保護費の基準引き下げをめぐっては生活保護法や憲法に違反するとして、全国で引き下げ処分の取り消しを求める集団訴訟が行われています。
奈良訴訟では、去年4月、奈良地裁が奈良市の原告2人の訴えを退け、大和郡山市の原告2人については訴えを認める判決を言い渡し、原告側、国側の双方が大阪高裁に控訴しました。
奈良訴訟の弁護団は21日、控訴審を担当する堀部亮一裁判官(第6民事部)が大津地裁で同様の裁判(原告敗訴)を担当していたことから「裁判の公正を妨げる」とし、民事訴訟法の忌避事由に該当するとして、大阪高裁に「忌避」を申し立てました。
■「同一争点の裁判で『敗訴』の判断をした裁判官が控訴審に関わるのは由々しき事態」と弁護団
裁判官がその担当する事件について不公平な裁判をする恐れがあるときは、当事者は裁判官がその事件に関与しないよう申し立てをすることができ、これを「忌避」の申し立てと呼びます。
弁護団によると、一審原告らの代理人がことし6月に大阪高裁に担当する裁判官を確認した際には堀部裁判官の名前はなく、ことし1月17日の第一回口頭弁論の際、法廷で堀部裁判官が担当することに気が付いたということです。
弁護団は「原告が違っても同一の争点と事実関係で争っている裁判。敗訴という判断をしている大津地裁の判断に関わった裁判官が、控訴審に関わっているのは由々しき事態。忌避申し立てには必ずしも理由がないと判断される場合であっても、堀部裁判官は関与を回避すべき」と話しています。
■生活保護訴訟の「忌避申し立て」 過去に認められなかったケースも
生活保護訴訟の裁判官忌避申し立てをめぐっては、金沢地裁の裁判官が過去に埼玉地裁の同様の裁判で国側の代理人である訟務検事を務めていたことから、忌避申し立てが認められています。
一方、仙台高裁で控訴審を担当した裁判官が秋田地裁で同様の裁判を担当していたとして原告の弁護団が忌避を申し立てたケースでは、訴訟の基礎が違うなどの理由で認められていません。