的中率25パーセントの“線状降水帯予測” どう活用すればいい? 自治体からは「空振りが続くと警戒が緩まる」の声も 気象予報士が解説 2022年07月21日
7月18日夜から19日にかけ、激しい雨が降り続いた九州地方。その各地で発生していたのが線状降水帯です。積乱雲が連続的に発生し、同じエリアに局地的な豪雨をもたらしました。
線状降水帯は2年前、熊本県内でも甚大な被害をもたらし、84人が死亡しました。被害を最小限に食い止めるために、気象庁が6月から新たに始めたのが、線状降水帯の予測です。
スーパーコンピューター富岳などを活用し、線状降水帯が発生する可能性を予測して、およそ12時間から6時間前に発表するというものです。
この予測情報について、関西テレビが近畿と徳島県のおよそ200の自治体にアンケートを行ったところ、ある課題が浮き彫りになりました。
回答があった130の市町村のうち、およそ8割の自治体が対応を決めていないことが分かったのです。その理由は…
【自治体A】
「予測の精度が高くないので対応を決めることができない」
【自治体B】
「空振りが続くと市民の警戒が緩まる」
【自治体C】
「予測範囲が広すぎる」
現在の予測情報では、的中する割合が4回に1回と精度が不十分で、対象が「近畿地方」などと広範囲になっています。そのため、避難所の開設や避難情報の発表に反映させるのが難しいという意見が多く寄せられました。
情報の扱いに悩む自治体。気象庁は精度の低さをどう捉えているのでしょうか。
【気象庁 安田珠幾 参事官】
「線状降水帯の精度は必ずしも十分ではない。国民の皆さんに危機感を持っていただく情報を伝えるのが非常に重要で、これから改善を進めていくという捉え方をしている」
19日に線状降水帯の予測情報が出た大分県日田市の防災担当者に、当時の対応を取材すると…
【日田市の防災担当者】
「避難所に人が殺到するかと思い、予測情報が出てから避難所を12カ所開設した。100人ぐらい来るかと思ったが、来たのは10人程度。対応が難しかった」
自治体にとって難しい判断が迫られる、線状降水帯の予測情報。発表は半日前~6時間前、範囲は「近畿地方」のような地方予報区、精度は「4回に1回的中」と、まだ十分な情報とは言えない状況です。
どのように活用すればいいのか、片平気象予報士に解説してもらいます。
【片平気象予報士】
「まず知っていただきたいのは、線状降水帯の予測はとても難しいということ。去年まではなかった情報を、スーパーコンピューターを駆使して、少しでも可能性があるならば、ということで発表している状況です。しかし受け手からすると、精度が低くどう扱ったらいいのか分からないというジレンマに陥っています」
――Q:自治体はどう活用すればいいのでしょうか?
【片平気象予報士】
「まずは、線状降水帯の予測に対して、『対応する』か『対応しない』かを周知しておくこと。現状のこの精度では、すぐに避難を呼び掛けるなどの対応は難しいと思われますが、『線状降水帯の予測』という言葉が独り歩きして、『自治体から何も連絡がない』と不安になる住民の方がいらっしゃるかもしれません。あらかじめ、『線状降水帯の予測が出れば避難を呼び掛ける可能性もありますから、注意をしておいてください』など、何をするかを事前に丁寧に説明しておくことが大切です」
――Q:予測が出た場合、個人としては避難を考えた方がいいのでしょうか?
【片平気象予報士】
「線状降水帯予測で大事なのは、半日前~6時間前に発表されるということです。大雨警報や土砂災害警戒情報は半日前などに出すことが難しく、夜中に危険度が高まった場合、避難が間に合わない恐れがあります。そういった警報が出るかもしれない、ということを、夜になる前に知ることができるというのが重要です」
――Q:もし予測が出た場合、具体的にはどのような対応を取ればいいでしょうか?
【片平気象予報士】
「就寝前の備えを、普段より一段階上げてください。崖などから遠い部屋で寝る、『逃げて』という情報が出た時にすぐに対応できるよう防災袋や携帯電話を枕元に置いておくなど、対策を取るために予測を活用してください」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年7月21日放送)