3月、宮城県と福島県で最大震度6強を観測した地震では、「命の砦」ともいえる病院が大きなダメージを受けました。病院の支援にいち早くかけつける国の医療チームが、全国の病院が今抱えている課題を分析しています。
大阪市内に、厚労省の災害派遣医療チーム「DMAT」の事務局があります。DMATとは、災害で大勢のけが人が出た場合などに出動し、治療や搬送だけでなく、都道府県で医療情報を集め、後方支援として救援物資の手配なども行います。
4月6日、これまでの災害支援の経験を踏まえて、浮き彫りになった課題を話し合いました。
【DMAT事務局・鈴木教久さん】
「(EMISの)基本情報が入っているところが全ての医療機関となっていない」
【DMAT事務局・若井聡智さん】
「未入力が多いってことか」
病院の情報を入力する、広域災害救急医療情報システム=「EMIS」。
EMISには、DMATが支援を行う際の参考にするため、医療機関が燃料や貯水量など、基本情報を登録することにしていますが、入力状況は、全国の医療機関で45%と、半分にも至っていません。
【DMAT事務局・若井聡智さん】
「危機感という意味では、災害時に自分の所が被災するところは割と入力するけど、同じ県の中でも、沿岸部じゃなくて被災が少なそうなところはあまり危機感がなかったりする。しかし、(被災者の)受け入れ支援をするなら、全部入力しておいてもらわないと、私たちとしても支援が困難になる」
過去の災害では、病院の発電に関する情報が少ないために、支援が遅れたこともありました。
【DMAT事務局・鈴木教久さん】
「2018年の北海道胆振東部地震の時、980ある医療機関が全部停電している。しかし、電源車は10台しかない。どの病院から持っていけばいいというのは、電力会社に判断がつかなかった。また、どのくらいの電力が必要なのか、ケーブルの接続方法はどうするのかなど、事前に情報がないと支援が遅れてしまう。医療機関の重要度を私たちが見極め、優先順をつけて電力会社に提示することで救命率が上がる」
入院患者やけが人を守るためには、それぞれの病院ができるだけ機能を維持し、拠点となることが求められます。その前提として、支援を迅速に受けとることができる体制を整えることも必要です。