「儲けるポテンシャルを作らないと企業は撤退するという警鐘を鳴らしたい」 介護事業者の倒産が“過去最多” 背景にある介護事業特有の収益構造とは 利用者獲得のため新サービス展開する取り組みも10月17日 10:00
デイサービスなどの倒産が、今年に入って9月までで47件と、同じ期間で過去最多になりました。
今週、高市総理が「非常に強い危機感をもっていたのが介護サービスの提供体制」と懸念を口にしましたが、いま介護現場が危機に陥っているのです。
“超高齢化”が進む中、介護の需要は増えていますが、なぜ事業者の経営が行き詰まるのか。
超高齢社会に生きる私たちにも関わる問題を徹底取材すると見えてきたのは、国の制度の中で苦しい経営を強いられる現実でした。
■「デイサービス」倒産が47件で過去最多に
全国に4万カ所以上ある「デイサービス」。
施設へ日帰りで通い、支援や機能訓練などを受ける保険サービスです。
母がデイサービスを利用しているという人は「助かってますよ。いないとほんま見れないです、専門的なことは」と話し、夫が利用者だという人は「夫は10年来ずっと行かへんかってん。結局行ってもらわな、たとえ1週間に2回でも行ってくれたら、すごくうれしいよ」と胸の内を明かします。
超高齢社会が急速に進む日本で、なくてはならないデイサービスですが、いま苦境に立たされています。
東京商工リサーチによると、ことし1月から9月のデイサービスなどの倒産が47件。同じ期間として過去最多です。
一方で、75歳以上の人口は前年から43万人増加しているにも関わらず、なぜ経営が厳しい状況になっているのか。
取材班は実情を探るべく、大阪府門真市のデイサービスに密着取材しました。
■自立した生活に欠かせないデイサービス 家族によっても「必要な時間」
このデイサービスでは「1日」もしくは「半日」の利用ができ、食事・入浴・運動訓練・レクリエーションなどを行います。
施設では家族に報告するため、ごはんをどれ位食べたかも細かくメモ。
さらに自宅での自立した生活を送るために毎日欠かさないのは、運動訓練です。
ことし、自宅で骨折した87歳の浜野さんもここでの運動を楽しみにしています。
【浜野さん(87)】「どっちかいうと右の方が具合悪いから、ほら!」(Q.右は上がってきた?)「うん」
このデイサービスに4年ほど通っていて、浜野さんはの妻は「この時間が家族にとって必要だ」と話します。
【デイサービスを利用する浜野さんの妻(79)】「ずっと見てたら、声も荒くなると思うし、週2回ですけど、その間がストレス発散日」(Q.奥さんにとってもいい時間?)「そうです、そうです、そうです」
利用者にとって、なくてはならないデイサービス。しかし取材で見えてきたのは、直面している厳しい経費のやりくりです。
■直面する厳しい経費のやりくり「給油はできるだけ安い所」レクリエーションは“手作り”
【「なるなるデイサービス」介護福祉士・清水雅子さん】「(燃料費は)8月は2万5500円。給油はできるだけ安いところに行ってもらっている」
さらに、レクリエーションにも工夫を。
【利用者】「みんなで一緒にわいわい騒ぐから、外れてもうれしい、入ってもうれしい」
この日、利用者が楽しんでいたのはエアホッケー。よくみると、使っていたのはペットボトルのふたです。
【なるなるデイサービス介護福祉士・清水雅子さん】「前もってキャップ集めておいて手作りで。できるだけ経費のかからないようにやさしく」
■背景には介護事業特有の収益構造 その日にどれだけの利用者がいるかが収入に直結
なぜ、ここまで経費を切り詰める努力をしないといけないのか。その背景には介護事業特有の収益構造がありました。
デイサービスの主な収入は、国が定めた『介護報酬』。施設は利用者が収入に応じ1割から3割の支払いをうけ、残りは行政から支給されます。
しかしその基準が、急激な物価高に追いつていない現状があるのです。
【なるなるデイサービス 成瀬和俊代表】「(物価上昇に比べ)介護報酬は下がってるのに、スタッフの給料は上がっているのが一番厳しい。物価高もありますよね。ガソリン代・光熱費も上がっている」
「介護報酬」は、その日にどれだけの利用者がいるかが収入に直結します。
このデイサービスは定員が33人で、利用者が28人を切ると赤字になるといいます。
苦しい中でも高齢者と、働く人の笑顔を大切にしたいと日々奮闘しています。
【なるなるデイサービス 成瀬和俊代表】「デイサービスって、太陽じゃなかったらあかんと思ってる。みんなが太陽になれる場所を会社をあげて作る。それが好きなおじいちゃん、おばあちゃんが集まっているのがうちの“売り”」
■“美容に特化”デイサービス 教えてくれるのは化粧品会社の社員
介護報酬頼りというデイサービス業界が抱える厳しい現実。
そうした中、新たなサービスで利用者を増やしている事業者もいます。
【記者リポート】「デイサービスの事業所ですが、メイクができるスペースやエステができる設備も用意されています」
取材班が訪れたのは、大阪市西淀川区の「ふれあ姫島」。
大阪の化粧品メーカー「ナリス化粧品」が、おととし始めた機能訓練と美容に特化したデイサービスです。
なんと、小顔や目のケアなど毎日、美容関連のレクリエーションが行われているのです。
【セラピスト】「最近、唇が薄くなってきたと感じることありますか?」
この日、おばあちゃんたちが教わっていたのは、唇のケア。教えるのは、「ナリス化粧品」の社員です。
【参加者(84)】「しわの中入れたらあかん。あはははは」
■レクリエーションの参加は無料 施設は“利用者の数”と“頻度”を上げる工夫
身だしなみに気を付けることは、外出への意欲につながっているといいます。
【ふれあ姫島 酒井宗政施設長】「きれいになったら、『いつも行ってるスーパーではもったいない』、『もう少し遠くに出かけたい』とか、『娘とお出かけしたい』とか、そういった変化は起こっています」
【利用者(80)】「全然おしゃれも何もしなくなったものね。ワクワクしてるの」
レクリエーションで使用する自社の化粧品を参加者が購入することもでき、わずかながらも収益につながっているといいます。
一方で、レクリエーション自体の参加費はというと…。
(Q.追加でお金はかかっている?)
【利用者(83)】「いいえ、かかってないです」
レクリエーションに追加料金はなく、デイサービスの利用料金の範囲で参加することができます。
費用も手間もかかるにもかかわらず、一体、なぜ?
【ふれあ姫島 酒井宗政施設長】「(介護報酬の)単価はコントロールできないので、利用者をいかに増やすかというのと、利用者が通う頻度をいかに高めるというところに尽きてくる」
安定的に経営するには、定員割れを起こさないことがポイント。定員に空きが出た場合にも、利用者の口コミが迅速な“新規顧客の獲得”につながっていました。
■「利益を確保できる仕組みも必要」と専門家
介護制度に詳しい前田教授は、「事業者が利益を確保できる経営の仕組みも必要だ」と指摘します。
【大阪総合保育大学短期大学部 前田崇博教授】「ルールが厳しすぎます。がんじがらめの中でされてるので、もう少し自由度を上げたら、デイサービスが“福祉のもうかるモデル”として潜在能力はあるんじゃないか。もうけられるポテンシャルを作ってあげないと、企業は撤退しますよという警鐘を鳴らしたい」
家で暮らすために、欠かせないデイサービス。
利用者や家族の暮らしを守るため、安定的に事業を続けられる仕組みが求められます。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月14日放送)