バイク愛好家が集う「バイク寺」に「団子店でアルバイトする住職」 生き残りかけた新たな挑戦 参拝者や檀家減少で厳しい神社仏閣の経営 2040年には「3分の1が消滅危機」の試算も10月04日 11:00
ことし、近畿で初めて神社が倒産。
倒産した兵庫県の神社は、金銭トラブルを発端とした経営難が理由でした。
檀家の減少、物価高、自然災害による修繕費の増加など度重なる逆風の中、大阪の2つの寺が“前代未聞”の秘策で経営難に立ち向かっています。
「バイク祈祷」を打ち出した寺や、副業で団子店のアルバイトを始めた住職。
それぞれの挑戦を関西テレビ・秦令欧奈アナウンサーが取材しました。
■近畿で初、1000年超の歴史を持つ神社が倒産
ことし、1000年以上の歴史を誇る兵庫県川西市にある多田神社が倒産しました。
全国各地の神社や寺院が直面している深刻な実態を象徴するものとして、大きな注目を集めました。
専門家の試算によると、2040年までに全体のおよそ3分の1の神社・寺院が消滅の危機に陥るとされています。
少子高齢化による檀家の減少、核家族化の進行、自然災害による修繕費の増加など、こうした社会変化が、長年にわたり地域の精神的支柱であり続けた宗教施設の経営基盤を着実に侵食しています。
■参拝者数は最盛期と比べて3割ほど減少
訪れたのは、大阪府能勢町、妙見山の中腹に建つ「本瀧寺」。1921年に創建された妙見宗の総本山です。
副住職の野間秀顕さん(52)によると、参拝者数は最盛期と比べて3割ほど減少しているといいます。
核家族化により檀家が代々引き継がれにくくなったことも、収入減の一因となっています。
さらに山中の寺であるがゆえに、2017年の台風被害など自然災害に巻き込まれることもたびたびあり、修繕費が経営を圧迫しています。
修繕費は「1000万円はかからないぐらい」と言いますが、決して軽くない負担です。
■その名も“ハーレー和尚” 日本唯一の「バイク寺」
そこで野間さんが考えた起死回生の秘策が、「バイク祈祷」でした。
実はハーレーを愛車とする“ハーレー和尚”として知られる野間さんは、10年ほど前から本瀧寺を「日本唯一のバイク寺」として打ち出しました。
交通安全を願うバイク祈祷を行うとともに、バイクに付けるお守りや絵馬、Tシャツなども販売。現在では全国のバイク愛好家が集う寺として認知されています。
当初は「革ジャン姿のバイカーが増えていいのか」という声もあったといいます。
しかし、野間さんは、「皆さん裸になったら一緒じゃないですか。革ジャン着てる人も悩みがあって手を合わせるし、そこは貫き通しました」と語ります。
■境内のカフェ 1日200人超を集客
バイク祈祷と並ぶもうひとつの取り組みが、本堂の裏手に設けられたカフェ「ほんたき寺巣(テラス)」です。
もともとはバイクでツーリングを楽しむ人の休憩場所として誕生したこのカフェは、掃除道具置き場だったスペースを100万〜200万円かけて改装したものです。
名物は、湯葉をトッピングした薬膳カレー。寺ならではの精進料理の精神から、肉は一切使用していません。
試食した秦アナは、「出汁の風味がふわって広がって、しっかり薬膳の香りも鼻から抜けてきます。スパイスのパンチもばっちりある」と話します。
多い日には1日200人以上が訪れるというこちらのカフェ。
しかし、「線香の匂いさせなあかん寺に、コーヒーの匂いさせてどないしまんねん」という批判の声もあったと野間副住職は明かします。
【野間秀顕さん】「それでもやらないと、やっぱりそんだけお参りが減ってるというところの焦り。ある意味これも手段ですから」
■インスタグラムで発信 お布施の使い方
次に向かったのは、大阪府箕面市の住宅街に佇む「本勝院」です。
1750年代に建立したと伝えられる臨済宗(禅宗)の寺。一本の道路から庭に入ると、外の喧騒が嘘のように静かな空間が広がります。
しかし、住職の瀧瀬尚道さんが直面している経営難は深刻です。
檀家の数は最盛期から5割減少し、収入もほぼ半減。物価高の中で一軒一軒のお布施の額も減っており、かつては3人で執り行っていた葬儀も、今は住職1人でこなすことが増えているといいます。
そこで瀧瀬さんが積極的に活用しているのが、インスタグラムです。
寺の存在を広く知ってもらうためだけでなく、一般にはわかりにくいお布施の使い道を丁寧に発信しています。
月参りは5000円、法事は3万円など、金額を明示した“明朗会計”も取り入れ、「お気持ちで」と言われて戸惑う人々の不安に寄り添っています。
■住職が団子店でアルバイト “二刀流”で寺を守る
さらに瀧瀬さんには、もうひとつの顔があります。
それは、大阪市都島区にある団子店でのアルバイトです。
オーナーが知人であったという縁から去年より始めた、異色の副業です。
エプロンを身に着け、店頭に立つ瀧瀬さん。アルバイトで得た収入は寺の維持にも充てています。
しかし、この経験がもたらしたのは金銭的な補填だけではありませんでした。
【瀧瀬尚道さん】「お団子1串160円を何本と買われるんですけども、いただく金額と、お寺に納めていただくお布施が違いすぎるということに気づきました。お寺の中にいたら気づかなかったと思うんです。感謝の気持ちがより持てるようになった」
■「感謝の気持ちがより深まった」
ともに働くベテランスタッフも、「人と会話するのが得意なのか、対応が柔らかくていい感じ」と話します。
瀧瀬さんが描く今後の夢は、ここで覚えただんごを座禅の後に参拝者へ振る舞うこと。
住職兼だんご職人という“二刀流”で、寺の未来を切り開こうとしています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月2日放送)