【解説】「気づいた時点で衝突を回避できない状況だった可能性」除草作業中の作業員4人が特急「スペーシアX2号」に接触し死亡「ほとんど例を見ない事故」と鉄道アナリスト・川島令三氏 栃木・東武鉄道 新鹿沼駅08月20日 19:56
きょう=20日午前10時45分ごろ、栃木県鹿沼市の東武日光線・新鹿沼駅構内の線路上で、除草作業を行っていた作業員4人が、浅草行きの特急列車と接触し、全員が死亡しました。
消防によると、4人のうち3人は病院に搬送され、1人は列車とホームの間に挟まれたまま救助作業が行われましたが、いずれも死亡が確認されました。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」には、鉄道アナリストの川島令三氏が出演。
「4人が犠牲になった事例はほとんど例を見ない」と驚きを示しました。
さらに、「普通は見張り員がいるのでそういうことにはならないはず」と、事故の背景や安全管理体制について解説しました。
※番組が放送された午後2時過ぎ時点での情報を基にした記事です※
■ 減速中の特急が作業員4人に接触「原因調査中」
特急列車「スペーシアX2号」は、新鹿沼駅に停車するため減速しながら進入していました。
東武鉄道によると、「事故当時、作業員が特急列車に接触していた際に、実際に作業を行っていたかどうかなどはいまだ不明」とし、原因は調査中だということです。
川島氏は現場の線路について、「ここは1番線で直線になってますから、あまり制限速度を落とさずに進入するところ」と説明しました。
【川島令三氏】「減速しても高速進入はできますので、高速進入してブレーキをかけていく」
一方、ブレーキをかけてから実際に停車するまでには一定の制動距離が生じるため、気づいた時点ですでに衝突を回避できない状況だった可能性があると指摘します。
■ 「列車見張り員」の役割とは
線路上での作業には、通常「列車見張り員」の配置が義務づけられています。
川島氏は「普通は見張り員がいるので、そういうことは起こらないはずなんですが」と前置きしつつ、除草作業特有のリスクを指摘します。
「除草作業は相当大きな音を立てて草を刈りますので、聞こえなかった可能性はある」と見立てを話しました。
見張り員の具体的な役割について川島氏は次のように説明します。
【川島令三氏】「一般的には、見張り員は作業中から離れた進入先の方に見張っていて、入ってくるのが合図で分かりますので、それを作業員に知らせるという形になっている」
つまり、列車が近づくと、進入前に作業員へ退避を指示し、退避完了後に運転士へ手信号を送り、列車を安全に進入させるという複数段階の確認プロセスが組まれているはずでした。
■ “何重もの安全対策”がなぜ機能しなかった?
東武鉄道によると、除草作業は「列車のいない時間を狙って、基本的に日中に実施している」といいます。
列車の本数が比較的少ない時間帯を選び、さらに見張り員を配置し、運転士にも作業の情報を事前共有するという何重もの安全対策が整っていたはずでした。
その対策が機能しなかった理由について川島氏は「(作業員に退避指示が)聞こえなかったので、そのまま作業を続けたということでしょう」と推測しました。
【川島令三氏】「接触事故が起こりやすいのは、仕事始めのときと仕事終わりくらいのとき。心の緩みが出やすい」
■ 「ブレーキ操作に気を取られたか」川島氏が推測
見晴らしの良い直線の線路で事故が起きた背景について、川島氏は「高速進入しているところですから、ブレーキ操作の方に気を取られていたのではないか」と運転士側の状況を推測しました。
「スペーシアX2号」が自動で障害物を検知して停止するシステムを備えているかどうかを問われると、川島氏は「ありません。東武鉄道の場合はATSのみです」と明言しました。
ATS(Automatic Train Stop)とは、赤信号での誤通過を防ぐための自動列車停止装置であり、線路上の作業員を自動検知して止まる機能は持ち合わせていないということです。
■ 除草業者と見張り員の連携は…
除草作業は鉄道会社の社員ではなく、専門業者に外注されるケースがほとんどだということで、「線路内の作業が危険だということは承知しているはず」と川島氏は話します。
見張り員についても、鉄道会社ごとに資格が設けられており、所定の研修などを修了した者だけが担当できます。見張り員は「作業には絶対加わらない」という独立した立場で、列車の往来だけを確認する役割を担います。
除草作業を行う業者と見張り員の業者が別々の場合、両者間の連携が事故防止の鍵を握ることになりますが、東武鉄道はどのような配置体制をとっていたか「現在調査中」と回答しています。
■ 「検証する課題が多い」と石戸諭
今回の事故について、スタジオに出席した元毎日新聞記者のノンフィクションライター・石戸諭氏は「あまり聞いたことのない事故。なぜこういう連絡のミスが起きたのかは検証する課題が多い」と指摘しました。
見晴らしが良く、安全対策も何重にも講じられていた状況下でなぜこのような事故が起きたのか。
20日午後6時過ぎ、東部鉄道が記者会見を開き、事故について謝罪しました。
会見で、東武鉄道は「昼間、線路内で作業するためには、列車が来ることをしっかり把握して、列車が来たら安全な場所に退避することが可能な状況をつくった上で作業することになっております。しかしながら今回の事象を発生させてしまった原因については現在、私たちも調査中でございます」と説明しました。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年8月20日放送)