“福岡県議会のドン”「議長職」辞職意向について地元記者が解説 「辞職勧告決議案」採決見送りを自民県議が「動議」 若手自民議員「圧力なかった」「辞職の実利をとった」も 広がる「県民との感覚のズレ」08月18日 19:14
“福岡県議会のドン”と呼ばれる蔵内勇夫議長がきのう=17日、突然、議長職を辞職する意向を表明しました。
県議会では、蔵内議長の「議長職」の辞職勧告決議案の採決が行われる予定でしたが、直前に自民党県議からの「採決を取りやめる」動議によって、見送られることになりました。
この急転直下の展開の裏側を取材した地元・福岡のテレビ西日本・川崎健太記者が中継で解説。
自民党の若手県議たちが動議に賛成することで、「議長職の辞職という実利をとった」と話したことを明かし、「県民との感覚のズレが生じている」と指摘しました。
■ なぜこのタイミングだったのか
川崎記者はまず、蔵内議長が議長職を辞職する意向を示した背景について、「自民党の若手を中心に、かなり反発の声が強まったことは一つの大きな要因」と指摘しました。
ただ、「議長職辞職」を表明するタイミングについては、「かなり早まった」という印象を持ったと明かします。
蔵内議長自身は以前、「金銭の授受疑惑に関する第三者委員会の調査結果が出た後に、進退を判断する」という趣旨の発言をしていました。
川崎記者によれば、調査には数カ月から半年を要するとみられており、「早くて年内、遅くとも来年1月か2月に何らかの判断をするだろう」と見ていたといいます。
■事態が動いた17日に何が?
事態が動いたのは、臨時議会が開かれたきのう=17日のことです。
まず午前10時、公明党の10人が辞職勧告決議案への全会一致の賛成を確認しました。
さらに午後1時ごろには、蔵内議長が所属する自民党の十数人が賛成の可能性を示し、決議案の可決が現実味を帯びてきました。
ところが午後3時半、蔵内議長自身が辞職の意向を示しました。
そしてその約1時間半後の午後5時には、自民党県議の「採決の中止動議」によって採決が見送られました。
■ 急転直下の2時間半 密室での攻防
午後1時から午後3時半までの2時間半の間、議会の舞台裏では何が起きていたのでしょうか。
川崎記者は「かなり密室でのやり取りが進んだようだ」と語ります。
自民党の若手議員たちは7月の段階で、蔵内議長の進退を問うに近い意見書を、すでに提出していたといいます。しかし、それが議長本人に伝わっていないことが、このあたりで判明しました。
若手議員たちが「ちゃんと伝わっていないのではないか」と自民党の別の幹部に訴え、「議長に話をさせてほしい」と動いたということです。
それを受けて蔵内議長は議員総会の場に降りてきて、「9月議会を目処に辞める」という意向を示したといいます。
【川崎記者】「これが大きくて、そこから一気に話が進んだそうです」
■ 自民党県議“若手”の「実利」という論理
採決を前に自民党から中止動議が出されたことに対し、金銭授受疑惑を告発し、今回の議長の辞職勧告決議案を提出した、吉松源昭県議は「自民党内で圧力がかかっている」と怒りをあらわにしていました。
この「圧力」について川崎記者は、「十数人ぐらいの自民党の若手議員が賛成する動きがあった。 ただ、これを取り下げる『圧力はなかった』と、若手議員たちは言っている」とし、当選2回の自民若手県議に取材した内容を紹介しました。
その議員は、自身の立場が危うくなることも覚悟の上で賛成の意向を示していたと明かしました。
しかし議長が採決直前に辞職の意を表明したことで、「議長を辞めてもらうという目標が達成できるのであれば、中止動議を通すことで、『議長の辞職』という実利を取りに行った」と説明したといいます。
別の若手議員も、「議長辞職を引き出したことは、むしろ県民の思いが叶う形になったのではないか」と語っていたということです。
■ 県民の視線 「逃げ」との批判
しかし川崎記者は、こうした福岡県議会、とりわけ自民党会派の動きに対して、県民からは厳しい声が上がっていると指摘します。
【川崎記者】「議会として蔵内議長の是非について採決を取ることを避けた。これは逃げの形を取ったとも言えます。
賛否が分かれることで、自民党内の分裂の形が表に出てしまうとか、議長の進退を巡る『踏み絵』をさせることになるため、、これをさせないようにしたとか。
こういう思惑が働いたということであれば、これは自民党内の内輪の論理でしかないわけです。
県民が一番知りたかったのは、蔵内議長の進退を各議員がどう捉えているかということ。それが“見える化”される予定だったが、自分たちで蓋をした。むしろ議会の信頼をさらに低下させる動きになっている」
中止動議に唯一反対した自民党議員も、「これが今の県議会の体質を表しており、県民との感覚が大きくずれている」と語ったといいます。
■ 採決が行われていたら…ギリギリの票読み
もし動議がなされず、採決が行われていた場合、結果はどうなっていたのか。
川崎記者は具体的な数字を挙げて説明しました。
【川崎記者】「民主系会派20人のうち約10人、公明党10人全員、新政会6人に加え、その他会派の一部が賛成に回るとみられていました」
決議案の可決に必要な票数は84議席のうち43票で、そこに自民党県議団から十数人の増反が加わった場合、「43人に届くか届かないかというラインに来ていた」と川崎記者は明かしました。
■ “ドン”の影響力 今後はどうなるか
そして川崎記者は「蔵内議長は今後、来年4月の県議選まで議員は続けるが、最終的にはこの県議選に出馬しない可能性がある」という見方があると説明しました。
ただ、議員を退いた後に一定の影響力を維持しようとするならば、「親蔵内派」の自民党幹部が次の選挙で当選を果たすことが条件になります。
現在、自民党県議団は40人を擁していますが、「今の県議会の自民党への厳しい逆風を見ると、次の選挙でその40人を維持できるのか。激減するのではないか。かなり不透明な状況になっている」と川崎記者は指摘しました。
この日の議会では、疑惑について調査する第三者委員会の設置が決まりました。この中で、説明が行われ真相が明かされるのか。
県民の視線は、これからも議会に向けられ続けることになります。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年8月18日放送)