京都の伝統野菜「九条ねぎ」に“異変” 暑さに弱く夏場の収穫が困難に 産地変更の動き「北海道産九条ねぎ」も誕生07月25日 08:00
香りと甘味が特徴の京都の伝統野菜「九条ねぎ」。人気の京野菜を巡り、近年、窃盗被害や産地偽装が相次いでいます。
その背景にあるのは夏の厳しい暑さです。暑さに弱い九条ねぎは夏場の収穫量が減っていることなどから需要が供給を上回り、取引価格が高騰。おととしにはこの10年間で過去最高を記録しました。
需要が供給を大きく上回る状況が、窃盗事件などが相次いだ要因の一つとみられています。
一方で、産地を変更する動きも。生産地を京都から北海道や東北に変更したことで、安定した生産に繋がっていると生産者は話します。
伝統野菜にいま何が起きているのか、1000年以上の歴史を持つ伝統野菜に起きる“大きな異変”を徹底取材しました。
■いろんな料理に合う「九条ねぎ」
1000年以上の歴史を持つ京都の伝統野菜「九条ねぎ」。京都市の九条付近で平安時代から栽培が始まったとされ、「京のブランド産品」にも指定されています。
甘みが強く歯ごたえもいい独特の風味は、ラーメンやうどん、鍋など幅広い料理に合うとして京都の食文化に深く根付いてきました。
しかし近年、この野菜をめぐって深刻な事件が相次いでいます。
■根元だけが畑に…同業者によるネギの窃盗事件も
2年前、京都の産地近くで大規模な窃盗事件が発生しました。
【記者リポート】「こちらの畝では九条ねぎが根元から刈り取られていて、全部引き抜かれています」
1回で数百キロが刈り取られる被害が周辺でも相次ぎ、少なくとも8件の事件で合計3トン以上のねぎが盗まれました。
警察が防犯カメラの映像などから割り出した容疑者は、"九条ねぎを生産する同業者の男"でした。
なぜ、同じ生産者が盗みにまで手を染めたのか。その背景には、京都を襲う"異常な暑さ"がありました。
■収穫量が激減したことで九条ねぎの取引価格は高騰 
九条ねぎの生育適温は15度から25度とされています。
ところが京都市では7月から8月の平均気温が30度前後に達するようになっており、夏場の収穫が年々困難になっています。
被害に遭った農家の男性は「去年は8月、9月の被害がすごい多かった。今年はまだ被害はないが、ここから去年は増えてきたんで、今から僕たちも夜中パトロールしています」と話します。
【九条ねぎ業者】「ここ数年、異常なほど暑い。やっぱり収穫量が減る。重さも軽くなって、葉の枚数も減ってしまう。やり方は毎年試行錯誤してるけど、その試行錯誤が追い付かない、暑さで」
実際、取材日(7月21日)の京都市の最高気温は38.2度。畑の土はひび割れた状態になっていました。
収穫量が激減したことで九条ねぎの取引価格は高騰し、おととしにはこの10年で過去最高を記録しています。
需要が供給を大きく上回る状況が、窃盗事件などが相次いだ要因の一つとみられています。
■産地偽装も発覚「確保するのが難しくなり需要に応えようと…」
異常な暑さによる品薄の影響で産地偽装事件も。
6月、京都市南区の青果卸会社の元社長(55)が、中国産を混ぜたカットねぎを京都府産の「九条ねぎ」として販売した疑いで逮捕され、その後、罰金50万円の略式命令を受けました。
偽装は4年ほど前から行われていたとみられ、会社も罰金80万円の略式命令を受けています。
関係者はこう打ち明けました。
「数年前から暑さで九条ねぎを確保するのが難しくなり、需要に応えようとして産地偽装をしてしまった。本当に申し訳ないと反省しております」
"異常な暑さによる不作"が背景にあったと証言します。
■栽培地を分散させるなどの工夫
危機に直面した生産者たちは、それぞれ生き残りをかけた対策を講じ始めています。
若手農家でつくる「ロックファーム京都」は、夏場に京都市内の南エリアより夜の気温が3度から5度低い亀岡市や南丹市、福知山市などでの栽培を開始しました。
「京都の中でもこの南エリアが一番暑いので、中北部の亀岡市や南丹、福知山で産地を作って、夏場ここよりも夜温が下がるエリアで生産している」と村田翔一社長は説明します。
冬場と夏場で栽培地を分けることでリスク分散と収量確保を図っています。
■“北海道産”九条ねぎという新たな選択肢
さらに大胆な取り組みを進めるのが、京都市伏見区に本社を置く「こと京都」です。
同社は夏場の危機解消を目指し、4年前から岩手県で九条ねぎの栽培を開始。そして今月、北海道伊達市での初収穫を迎えました。
山田祐揮常務取締役は「北海道でとれた九条ねぎは、すごい太くてしっかりしてみずみずしい。人と一緒でネギも暑さに耐えられないので。(北海道は)ネギにとってもよい環境なのかな」と話します。
「九条ねぎ」は品種を指す名称であるため、同社は「国産の九条ねぎ」として販売しています。
【こと京都 山田祐揮常務取締役】「北海道で夏しっかり取って、安定的に生産して、それで経営が安定するというモデルが作ることができれば、今後こういう動きは増えてくると思います」
■行政も動く「暑さに強い品種を生み出していく」
生産者だけでなく、行政も対応を迫られています。
京都府は去年から暑さに強い品種の調査を開始しました。
【京都府流通ブランド戦略課 山川彰宏課長】「暑さに強い品種というのを今後生み出していく。そして現地に普及させていくという取り組みが必要だと思います。品種開発も含めて、進めていきたいと考えております」
(関西テレビ「newsランナー」2026年7月22日放送)