“真っ赤なクワガタ”「ヒラズゲンセイ」は謎だらけの希少昆虫 『見つけたらラッキー!』だけど『触るの注意!』梅雨の晴れ間に出没か 専門家解説06月13日 08:00
5月頃からSNSなどでちらほらと見かける“赤いクワガタ”の目撃情報。
この虫の正体は「ヒラズゲンセイ」といい、幻の昆虫”ともいわれ、自治体によっては「準絶滅危惧種」に指定されている。
「活動が最も盛んになるのは6月ですが、非常に希少な昆虫なので見つけたらラッキーです。クマバチに寄生するなど興味深い生態を持ちますが、いかんせん数が少なく多くの謎が残っています」
と話すのは、ヒラズゲンセイの生態に詳しい、徳島県立佐那河内いきものふれあいの里ネイチャーセンターの大原賢二センター長。
詳しく聞いた。
■赤と黒のツートンカラーの“希少昆虫”
【徳島県立佐那河内いきものふれあいの里ネイチャーセンター 大原賢二センター長】
ヒラズゲンセイは、体長2~3センチ、鮮やかな赤い体と黒い足やあごのツートンカラーが目を引く昆虫です。
最初に見つかったのは高知県で、1936年(昭和11年)のことです。
四国以南の温暖な地域に生息するとされてきましたが、2000年代に入り近畿でも目撃されるようになりました。
5月下旬から夏にかけて活動し、6月がもっとも盛んです。
8月の目撃情報もありますが、これは標高の高い涼しい地域でのことです。
オスの大きなキバがクワガタに似ていることもあって、つい触ってしまいがちですが、ちょっと待って下さい。
ヒラズゲンセイは捕まえるなどの刺激を受けると、体や足の関節部分からカンタリジンという黄色い毒のある体液を出します。
お子さんなど皮膚が薄い人は、体液が付着すると水ぶくれになったりかぶれたりすることがありますので注意が必要です。
じつはヒラズゲンセイが、どのくらいカンタリジンを出して、どの程度の症状を引きおこすのかは、はっきりとはわかっていません。
死骸で発見されることも多いのですが、死骸に体液が付着している可能性もゼロではありませんので、なるべく素手で触らない方がよいと思われます。
■クマバチに寄生して成長
ヒラズゲンセイはクマバチの寄生者です。
6月~8月頃にかけて、メスはクマバチの巣に卵を産みます。
クマバチの巣は、枯れ木や木材に1、2センチほどの丸い穴をあけ、そこから20~40センチほどトンネル状に掘り進めた形で、一般にイメージするミツバチやスズメバチの巣とは形状がまったく異なります。
クマバチの巣の中で卵からかえった幼虫(孵化したばかりの一令幼虫)は、クマバチにしがみついて外の世界に飛び出します。そして新しいクマバチの巣に入りこみ、クマバチの卵や幼虫、クマバチの幼虫のエサである花粉団子などをエサとしながら成長し、およそ1年かけて成虫になります。
成虫になると巣の外に出て交尾をし、そしてまたクマバチの巣に卵を産みます。
クマバチにしがみついて外に出た幼虫がどうやって新しいクマバチの巣に入り込むのか、詳しいことは分かっていません。
直接新しい巣に入りこむ場合もあれば、いったん花に着地して別のクマバチを待ち、花粉を集めに来たクマバチにしがみついて新しい巣に到着するといったケースも考えられます。
しかし、ヒラズゲンセイが寄生するのはクマバチだけ。その理由もわかっていません。
■どうやって生息域が広がっているのか謎…
ヒラズゲンセイは東南アジアと日本の西南部に生息しています。
日本では高知県と徳島県で目撃情報が多く、四国の他県や九州でも数例が確認されていました。
1977年に淡路島で見つかり、2000年代に入ると近畿地方や岡山県でも何度も目撃されるようになりました。
生態に不明な部分が多く、どうやって生息域が広がっているのかもはっきりとは分かっていませんが、孵化したばかりの一令幼虫がクマバチにしがみついて新しい巣へ行くことで広がっているというのはあると思います。
あるいは、成虫が車などに付いて淡路を通り本州へ渡ったのかもしれません。
ヒラズゲンセイは飛び方が下手で飛翔距離も短いので、長い時間をかけて少しずつ生息域が広がっていると考えられます。
いずれにせよ、クマバチの寄生者という特殊な生態で、新しいクマバチの巣に入り込む成功率も高くないと思われるので、ヒラズゲンセイが爆発的に増えることはないと思われます。
■見つけたら博物館に連絡を!
ヒラズゲンセイが最も活発に動くのは6月です。雨の日はあまり動きませんので、見つかるとすれば、梅雨の晴れ間ではないでしょうか。
運よく見つけても、素手でつかんだりせず、十分に注意をしてください。
万が一、皮膚に体液が付いてしまったら、流水でしっかり洗い流すか、水がない場合はウェットティッシュなどで早めにふき取りましょう。
命にかかわるほどのことではないので、慌てる必要はありません。
そして、希少な生き物ですから、見つけたら「分布情報を提供する」という意味で、地元の博物館や自治体に連絡をして頂ければと思います。
(徳島県立佐那河内いきものふれあいの里ネイチャーセンター 大原賢二センター長)