“今しか食べられない”が切なすぎる… まもなく閉店『タイムリミットグルメ』 24時間営業のパンの名店は立ち退きで苦渋の決断 新大阪のカレーうどん専門店は「辞める時期を考えないと迷惑かける」05月17日 11:00
まもなく閉店を迎える名店のグルメ。名付けて“タイムリミットグルメ”を求めて、関西テレビの秦令欧奈アナウンサーが京橋と新大阪に突撃取材。
そこで出会ったのは、食べ物の「おいしさ」だけじゃない、人と人との温かい物語でした。
■45年の歴史に幕を閉じる24時間営業のパン屋
まず向かったのは、京橋中央商店街にある「手作りパンの店 トリーゴ」。
【秦令欧奈アナウンサー】「おしゃれだな」
店内に足を踏み入れると、100種類以上の自家製パンがずらりと並びます。
あんトーストは2個セットで170円、拳ほどの大きさがあるミルキーパンは100円。
そして目を疑ったのが、店頭に置かれた透明の袋。
【秦令欧奈アナウンサー】「パンの耳、なんと『ご自由にお持ち帰りください』。無料ということですよね。すごいな。しかもこの量」
パンの耳が0円で山盛り提供される、そのサービス精神。これが閉店の理由なんでしょうか?
■「立ち退き」と「資金不足」 苦渋の決断
店長の安倍一寿さん(51)に閉店の理由を聞きました。
【トリーゴ店長 安倍一寿さん】「建物の老朽化で立ち退きになって」
【秦令欧奈アナウンサー】「お店を新天地で開くという手もあるじゃないですか?」
【トリーゴ店長 安倍一寿さん】「製パンの機械も入れないといけないし、今あるのがボロボロなので。内装費用が2000〜2500万円はかかる」
創業45年、2代目として父親とともに現役で切り盛りしてきたお店。しかし建物の老朽化による立ち退きと、移転に必要な莫大な資金…その両方が重なり、今回の閉店という決断に至ったといいます。
■24時間営業のパン屋さん!? 京橋ならではの理由が
実は「タイムリミットグルメ」を語る前に、もう一つ驚きのエピソードが。
【秦令欧奈アナウンサー】「お店は何時からやってるんですか?」
【トリーゴ店長 安倍一寿さん】「24時間でやってます」
【秦令欧奈アナウンサー】「24時間営業?聞いたことないですよ。パン屋さんで」
【トリーゴ店長 安倍一寿さん】「シャッターを下ろして片付けてたんですけど、お客さんが来るんですよ。シャッターを開けて……いつの間にかずっと開いてるようになりました」
京橋という、夜の街としても知られる土地柄。深夜にふらっと訪れるお客さんに応え続けるうちに、いつの間にか24時間営業になっていた、というのです。
夜中の仕込みと営業を家族3人だけで回していたというから、その体力的な消耗は想像を超えるものがあります。
お母さんにも聞いてみると…。
【母・美幸さん】「いつまで(パン屋を)しないといけないのかという感覚。ちょうどいいタイミングかな。お客さまに対して申し訳ない気持ちのほうが強いです」
■「タイムリミットグルメ」は、スクランブルエッグのサンドイッチ
そんなトリーゴが誇る「タイムリミットグルメ」として、店長がおすすめしたのが、“スクランブルエッグのサンドイッチ”。
【トリーゴ店長 安倍一寿さん】「いつ食べるの?」
【秦令欧奈アナウンサー】「今でしょ」
【秦令欧奈アナウンサー】「スクランブルエッグが甘めの味付けなんですけど、ケチャップもたっぷり入ってるので、酸味ですごく食べやすく仕上がってる。こだわりとかあるんですか?」
【トリーゴ店長 安倍一寿さん】「あんまりこだわってないです」
驚くほど素直な答えに笑いが漏れましたが、その飾らなさがこのお店の魅力を物語っていました。
■20年の常連さんが涙
取材中、20年間通い続けているという常連の女性が来店。秦アナが閉店の事実を伝えると…。
【20年通う常連さん】「えー! うそ! 知らなかった、聞いてない」
【秦令欧奈アナウンサー】「お気持ちはいかがですか」
【20年通う常連さん】「泣きたくなる。もう歳やから、おいしいもの食べて……悲しいわ、ホンマに…頑張ってください」
突然の閉店の知らせに常連さんの動揺と寂しさが伝わってきます。
【トリーゴ店長 安倍一寿さん】「そうですね。いいお客さんたちがたくさんいてます」
「トリーゴ」の優しさが詰まったパンが食べられるのは、6月30日までです。
■新大阪の細い路地の奥に 52年の名店が
舞台は新大阪へ。
細い路地を30メートルほど進んだ先に現れたのが、「新大阪名物カレーうどん 麺の香」。創業から52年目を迎えるカレーうどん専門店の「麺の香」です。
店主の小林督夫さんは82歳。妻の佳子さんも同じく82歳で、もうすぐ83歳のお誕生日を迎えるといいます。
■脳梗塞からの復帰 そして決断
元々は近くの別の場所で30年以上営業し、施設の建て替えを経て14年前にこの地でリニューアルオープン。今では連日行列ができるほどの人気店に成長しました。
それでも閉店を考えはじめたのには、きっかけがありました。
【妻・佳子さん】「おととしの年末に、主人が脳梗塞で倒れた。年末から年始にかけて20日以上店を休んで、その時に復帰は無理かなと思ったけど、また頑張ってくれて。辞める時期を考えないと皆さんに迷惑かける」
加えて、いくら求人を出しても若い人材が集まらない、という現実も重なりました。
■50年のノウハウが詰まった 一杯のカレーうどん
北海道の最上級の真昆布など厳選素材を使い、ご主人50年のノウハウを注ぎ込んだカレーうどん。
【妻・佳子さん】「いつ食べるの?」
【秦令欧奈アナウンサー】「今でしょ」
【秦令欧奈アナウンサー】「全然違う。出汁が本当にダイレクトに来ますね。カレーがまた上品な味。食べたことないカレーうどんですね。コシがすごい。スープをすくい上げてくれる。感動してます。本当においしい」
■22歳から30年 思い出と一緒に食べてきた
取材中に集まった常連さんにも話を聞きました。
【常連客】「新入社員の22歳の時から。店がここじゃない時から30年(来ている)。真夏の暑い時に歩いてお店に行って、この熱いうどん食べて汗だくだくかいて、うちわ借りて扇ぎながら食べて、また会社まで戻る。これが気持ちいい。それをずっと楽しんでました」
【秦令欧奈アナウンサー】「めちゃくちゃ思い出詰まってるじゃないですか」
【常連の男性】「寂しいですね」
■閉店後は「のんびり」する予定 カレーうどんが食べられるのは、6月10日
閉店後の予定を聞くと…。
【麺の香 店主 小林督夫さん】「ちょっとのんびりさせてもらって。でも何かしないとボケるし」
思わず笑みがこぼれます。52年間走り続けてきたお二人に、今度こそゆっくりとした時間を…と、誰もが思わずにはいられません。
夫婦二人三脚で紡いできたカレーうどんが食べられるのは、6月10日までです。
閉店前の最後の機会に、その味と温もりを体験してみてはいかがでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2026年5月15日放送)