「憲法9条2項削除」が持論の石破前総理「1項をきちんと残している限り“日本が戦争をする国に”ならない」主張 改憲・護憲で“分断”には「意見に賛同する人たちばかり集まって盛り上がっても何も得られない」05月09日 18:00
戦争放棄をうたう憲法9条改正をめぐり、石破茂前内閣総理大臣が関西テレビの取材に応じ、「戦力不保持」などを定める9条2項を削除すべきだと強調した。
自民党が9条1項2項を維持した上での「自衛隊明記」を掲げる中、なぜ2項を削除すべきだと訴えるのだろうか。
石破前総理が関西テレビの単独取材に語った、すべての内容をお届けする。
■「2項は削除しないとこの国の安全保障の議論は絶対まともにならない」
石破前総理はまず、「自衛隊明記」を掲げる現行の自民党の改正案に対し「自衛隊を明記するだけで何も変わらないんだったら、なぜ改正しなきゃいかんのですか」と疑問を呈し、次のように述べた。
【石破前総理】「9条は第1項と第2項に分かれていて、第1項の『国際紛争を解決する手段としては、戦争を永久に放棄するんだよ』というのを達成するために、(第2項で)『陸海空軍がなければそんなことにならないよね』という構成になっている。
けれども、世界有数の防衛費というものを使って、最新鋭の戦闘機、戦車をはじめとする車両。あるいは、“ほとんど空母だよね”という護衛艦群。
(それで)『これは軍隊じゃありません』って言ってるわけだよね。『それ一体なんなの?』って普通思いませんか。
北朝鮮に対して必要最小限度の権限や装備は、ロシアに対してなら、どうなんだろう。誰がどう考えても北朝鮮に対して必要最小限度のものはロシアには無理だろうねって普通思うじゃないですか。量的な概念じゃない、質の問題なんだろうね。
だから、必要最小限度だから戦力じゃない、戦力じゃないから軍隊じゃないって、それはまやかしです。
そんなことをいつまでもやっているから安全保障に対する議論が深まらないと私は思っていてね。2項は削除しないとこの国の安全保障の議論は絶対まともにならないと思います」
■「9条2項」削除後に盛り込むのは「統制」について
石破前総理は、「自衛隊違憲論争」に終止符を打つことができ、かつ国民の幅広い理解が得やすいと思われる“自衛隊明記”だけにとどまらず、戦力の不保持を定めた2項の削除が必要だと強調した。
では、その代わりに、どのような条文を新たに追加するのだろうか。
石破前総理は1項を維持した上で
【1】日本国の独立と平和、そして世界の平和を守るために、陸海空自衛隊を保持すること
【2】陸海空自衛隊は、厳格な司法、立法、行政による統制に服さなければならないこと
【3】陸海空自衛隊は、国外における活動において、国際法並びに確立された国際慣習に従わなければならないこと
この3点を新たに定めるべきだと訴える。
【石破前総理】「国における最大の実力集団だから、それは1歩間違えると、日本でも五・一五事件とか二・二六事件とかありましたよね。
世界もあちこちでクーデターって起こってますよね。そういう実力集団は、司法であり、立法であり、行政であり、それがきちんと統制して、クーデターというものが絶対あってはいけませんよということ。
日本の独立と平和、世界の平和のため、そして国際法に従って行動する、きちんとした統制がなければならない、それは最低限必要です」
■「9条改正=日本は戦争する国」に「1項をきちんと残している限りそうならない」
【記者】9条を改正することで、日本が再び戦争をする国になってしまうと訴えている方もいるが?
【石破前総理】「9条第1項によって、国際紛争、すなわち国同士の領土をめぐるような武力を用いた争い、それはやりませんよということ明示してるわけですよね。
つまり、自衛戦争以外、急迫不正の武力攻撃を受けたときに、『それを排除する以外の行動はしませんよ』というように、きちっと1項でうたっているわけですよね。
そして、クーデターが起こらないために、司法、立法、行政による統制をきちんとやりますって書いてあるわけですね。だから、1項をきちんと残している限り、そういう方々が心配してるような事態にはならないと私は信じてます」
■憲法記念日には「改憲派・護憲派」双方が集会やデモ
9条改正をめぐっては5月3日の憲法記念日、様々な立場の集会やデモなどが数多く開かれた。
大阪市内では、保守団体「日本会議」系の団体が憲法9条改正を訴えるフォーラムを開催し、自民党や日本維新の会の国会議員らが「9条を改正して毅然とした外交を行おう」などと訴えた。
一方、JR大阪駅前では市民有志らが集まって、高市政権が進める憲法改正、武器輸出解禁などの政策に対し、「戦争反対」「9条守れ」などと訴えるデモが行われた。
相反する立場同士で大きな隔たり・分断が生まれる中、「保守思想とは“寛容”である」と重ねて述べてきた石破前総理は何を思うのか、尋ねた。
■「意見に賛同する人たちばかり集まって盛り上がっても何も得られない」
【石破前総理】「護憲の立場、あるいは改憲の立場が、自分たちと同じ主張の人ばかりを集めて大会やったりしている。
どちらの立場にしても、『そうだそうだ』って盛り上がりがあって、2つが交わって議論するってことがないわけですよ。だから、永遠にこういう状況が続きかねないわけですね。
私はできるだけ、お誘いがあった場合は、護憲の方々の集会にも出るようにしています。
もう随分前のことになるけれども、共産党支持の方々が多い会合で、『皆さんね、1項は守るんですよ』と。
そして『国際法に従って、きちんとした文民統制のもとで行動するんですよ』ということ言ったら、『決して戦争するための憲法改正じゃない』ということをご理解いただいた方もありました。
いや、そうじゃないって方ももちろんいらっしゃったけどね。
逆に、今の(憲法は)1字1句変えてはならないって(護憲派の)方が保守派の会合に、改憲派の会合にお越しいただいても当然いいことなんです。
だから、自分たちの意見に賛同する人たちばかりが集まって盛り上がっても、何も得られないと思います」
■「今の政治状況『9条』を『どう変える』と国民に向けて問うのかが分からない」
高市政権、そして自民党は憲法9条改正への理解を得られるのだろうか。石破前総理は、次のように述べた。
【石破前総理】「今の政治状況を見ていると、一体『9条』を『どう変える』ということを、国民に向けて問うのかが分からないですものね。
総理大臣もそこを明確に述べていない。私は、そうすると今の状況はずっと続くんじゃないかって思うんです。
だから、何が変わるんだ。『(自衛隊を明記するだけで)何も変わりません、名前だけです』っていうことであれば、そう言えばいい」
そしてまた、(2項で)国の交戦権はこれを認めないっていうのもね、『戦いを交える権利。そんなもんダメだよね』っていうふうに理解してる人は圧倒的に多いんだろうと思うけれど。
そうじゃなくて、交戦権の中身は、捕虜は虐待しちゃいけませんとか、無差別爆撃やっちゃいけませんとか、戦争のルールのことなんですよね。
『交戦権を認めません』ってことは、『おいおい』と。『捕虜虐待するのか、無差別爆撃するのか』ってことになる。
だから、言葉の定義をきちんと明らかにした上で国民に判断を求めるってことが、政治が国民に対する誠実な態度じゃないですか」
■編集後記
憲法9条をめぐる議論は、改憲派、護憲派ともに理念が先行し、大きな隔たりがうまれている。
戦後日本を形作ってきた憲法9条の改正を主張するのであれば、単なる理念ではなく、「何をどう変えるのか」を具体的に示すべきではないか。
分断を乗り越え、様々な立場の国民1人1人に誠実に向き合う政治とはなんなのか、がいま、問われている。