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「仕入れが倍でも売り値は倍にはできない」“客を想って”閉店迎えた大阪の純喫茶「10年でコーヒー豆の価格は倍・ココアは2年で倍」 物価高騰に店主の体調不良重なり閉店選んだ店も 老舗支えた家族たち04月05日 11:00

新年度が始まる4月。大阪は全国で最も店舗数が多いと言われる(2021年時点)”喫茶店王国”ですが、この年度末で長い歴史に幕を下ろした店もありました。 レロブームで人気を集める“純喫茶”ですが、続く物価高によって経営は危機に。店の老朽化や経営者が高齢化することも重なって、閉店を迎える例が少なくないようです。 「仕入れが倍でも、売り値は倍にはできない」という“客想い”であるがゆえに、閉店を選んだ店、店主が病気を抱え続けられなくなった店。 2つの老舗とそれを支えた家族たちを関西テレビの秦令欧奈アナウンサーが訪ねました。 ■「仕入れが倍でも、売り値は倍にはできないんで」閉店選んだ店主

大阪・寝屋川市。京阪・寝屋川市駅の目の前で、半世紀以上人々を癒やしてきた「喫茶RiO」。 カラフルな外装の素敵な店に秦アナウンサーは早速店内へ。レトロな空気に、思わずテンションが上がります。 【秦令欧奈アナウンサー】「ドリップコーヒー、リオさん。カラフルな外装にだいぶ雰囲気がありますね。お邪魔いたします。おー、レトロですね。これ天井高いですね、開放感もある」 現在、店を切り盛りするのは3代目。店主によると、店は創業当時の資料は残っておらず、正確には分からないそうですが、「57年目」になるといいます。

【秦令欧奈アナウンサー】「長いことをやられていて、閉店決めた理由って何だったんですか?」 【三代目店主・中川宏起さん(30)】「やっぱりお店の設備も人間と一緒で、年数が経てば経っていくほど悪いところが出てくるじゃないですか。 設備の入れ替えもそろそろかなっていうのがあるんで。あと、物価高騰。値段が上がってきたっていうのもある。それが大きい原因ですかね」 コーヒー豆は、10年前と比べて「大体もう倍ぐらいまで」仕入れが上がったとのこと。 さらに、ココアはここ2年でおよそ倍、小麦粉を使ったパンはここ5年でおよそ3割アップ。サンドイッチに使う卵もおよそ2倍に値上がりしているそうです。 【三代目店主・中川宏起さん】「仕入れが倍でも、売り値は倍にはできないんで」

閉店で店の歴史は途切れてしまうのでしょうか。 【秦令欧奈アナウンサー】「このお店は今後どうなるんですか?」 【三代目店主・中川宏起さん】「店に関しては完全に閉めるのは閉めるんですけど、こういう机とか照明とかの備品は、つながりの人のお店に引き継いでくれることにはなっているので、物はどこかでいろんなところで働いてはくれます」 【秦令欧奈アナウンサー】「すごくパッと見でも高そうな物が集まっているなって印象があるんですけど」 【三代目店主・中川宏起さん】「灰皿が高いんですよ」 【秦令欧奈アナウンサー】「見たことないような灰皿ですね」 【三代目店主・中川宏起さん】「フリマアプリとかで見たら1個2万5000円とかで出てくる」 さらに、扉のガラスには「面取り(めんとり)」という加工が施され、創業当時で1枚1万円くらいしたそうです。 ■店に残った家族の歴史「子供の成長が寝かせる椅子の長さで」

3代目が店に入ったのは4年ほど前。それまでは会社員をしていました。 【三代目店主・中川宏起さん】「僕が母親と同居してるんで、ずっと休まんような人なんで無理する人なんで、ちゃんと監視しとかんとダメじゃないですか」 42年前、結婚を機にこの店を手伝うようになった母親にとって、店はまさに生活の中心でした。 【三代目店主の母で二代目店主・中川貴美代さん(66)】「生活の大部分ですね。これが中心で回っておりましたので。 息子たちがちっちゃな時から手伝いも入っておりましたので、寝たら椅子に寝かしていたんです。最初は1個の椅子が済んだのが、次は椅子が2個になって3個になって。 子供の成長がその椅子の長さで決まったので、気がつけばもう40年があっという間ですね」 ■“人生最初のコーヒー”をこの店で飲んだ人も…店主は「実感ない」

店の価値をいちばん知っているのは、やはり通い続けた人たちです。 【秦令欧奈アナウンサー】「ここはよく通っていらっしゃったんですか?」 【常連客】「そうですね半世紀、半世紀になるかね」 【秦令欧奈アナウンサー】「半世紀?」 【常連客】「前の時は大方1週間5日ぐらいは通って」 さらに、こちらのお客さんにとってRiOは“人生最初のコーヒー”の店でもありました。 【常連客】「初めてコーヒーというものを若い時に飲ませていただいて」 【秦令欧奈アナウンサー】「人生で初めてコーヒーを飲まれたのがこのお店?」 【常連客】「苦いしかわからなかったけど、砂糖をいっぱい入れて」 営業終了の日。別れを惜しむお客さんが次々と店を訪れました。 【常連客】「寂しいです。もうちょっと頑張って欲しかったけど」 【常連客】「毎日毎朝8時半に来て、クラシックでね、いい感じでしょ。この雰囲気が好きでね。貴重やわ。これが潰れるなんて涙出る。だから寂しい」 今の店主も母である2代目店主も、その時点ではまだ実感がなかったといいます。 【三代目店主・中川宏起さん】「まだ閉まるっていう実感が」 【二代目店主・中川貴美代さん】「実感がないから…皆さんにね、いろんな方に助けていただいて今まで来られたという感謝です本当に。これが生活だったんで、受け入れられるかしらってその方がちょっと不安ですね」 ■店主の持病で続けられなくなった店も

続いて秦アナウンサーが向かったのは、大阪・泉佐野市の「COFFEE HOUSE タイム」。こちらも、45年ほど地元で愛されてきた純喫茶です。 店に立つのは創業者のマスター・中垣内時仁さん(67)と、娘の大西さやかさん(40)。 名物は、45年間変わらないミックスジュース(600円)でした。 【秦令欧奈アナウンサー】「きました!名物ですもんね。いただきます。あーうまいこれ! しっかり果実感があるので飲み応えあるんですけど、甘さすっきりしてるんですね、これ。直球にして王様ですね」 この店が閉店を決めた理由の中心にあったのは、マスターの体調でした。 去年5月、持病のてんかんに加え、認知症になり入院。いったん店を閉じましたが、「どうしても辞めたくない」というマスターの思いに応え、娘のさやかさんが手伝うことを決意し、去年9月に再オープンしました。 けれども、今年に入ってからマスターは全く店に来られなくなったといいます。そこに物価高も重なり、赤字が続くようになり、決断しました。 【娘・大西さやかさん】「マスターが店に来られないんだったら、もう一旦閉めるしかないかなと思って、苦渋の選択を。 店を開けてもマスターが来られない日があると、お客さんに迷惑をかけてしまうので。だったら、3月末で終えると決めて、毎日しっかり出勤して(マスターに)自分の口から占めることをお客さんに伝えてくださいって」 ■店を切り盛りする父娘 実は一度離別も…

実はマスターの中垣内さんは、若いころに離婚。娘のさやかさんは母親と暮らしていたため、一時は関係が途切れていたといいます。 【秦令欧奈アナウンサー】「ここでさやかさんが働き出してからが一番関わった?」 【娘・大西さやかさん】「そうですね。ここまでみんなに愛されて長く続けられるのってすごいなって思いました」 一方のマスター・中垣内さんは、娘が手伝いに来てくれたことが何よりうれしかったと語ります。 【マスター・中垣内時仁さん】「若い時に勝手して離婚ということになって、娘もそちらについて行ってたんですけれども。 こんなお父さんのやってる店なんか『勝手にしたらいいやん』って思ってるかなと思ってたんですよ。それが『手伝うわ』って言って来てくれて、それが一番嬉しかったです」 【娘・大西さやかさん】「ここがなかったらもう自分は死んでるのも一緒やみたいな感じのことを言っていたので」 【マスター・中垣内時仁さん】「この子が来てくれてなかったら、今日までも、よう、やらなかったかなって思います」 ■「本当にやっててよかった」とマスター 娘は「『よくやったね』って言われて終われてよかった」

最終日、常連たちはマスターとさやかさんをねぎらおうと集まり、店はあっという間に満席になりました。 隣にある理髪店は、45年のつきあいでした。 【マスター・中垣内時仁さん】「オープンも一緒で、毎週来てくれてて」 【隣で理髪店を営む客】「寂しくなる。ほんまに寂しなる」 営業を終えたあと、父娘は静かに振り返りました。 【娘・大西さやかさん】「最後みんなに『よくやったね』って言われて終われて、よかったなと思います」 【マスター・中垣内時仁さん】「本当に寂しいです。お客さん最後にみんな来てくれて、本当にやっててよかったです。本当にみんな来てくれて、ありがとうございました。ありがとう」 続く物価高の中、常連客の負担はこれ以上増やせないと閉店という選択をした店。物価高に加え、年を経て店主の体調不良で続けられなくなってしまった店。 2つの老舗の選択は、まさにいまの経済を象徴する出来事でした。 (関西テレビ「newsランナー」2026年4月3日放送)

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