関西のニュース

なぜ新しい政治家は出てこないのか? 落選候補を税金で養う「日本の政治をだめにした元凶」政治改革関連法成立から31年 田中秀征氏が明かす小選挙区制と政党交付金の弊害03月10日 22:00

2024年の総選挙で石破政権を過半数割れに追い込んだ「政治とカネ」の問題だが、先月行われた総選挙では争点化することなく、高市総理率いる自民の“地すべり的勝利”で終えた。 おりしも高市総理が当選議員にカタログギフトを配布した問題が発覚。費用は「政治資金団体からの支出であり政党交付金は含まれていないと」説明する高市総理だが、政治に金がかかるのはこういうことなのか、となんだか釈然としない。 「政治とカネ」は1993年に自民党を初めて野党に追いやった「鬼門」である。 「政治とカネ」の問題を解決する、本丸とされたのが小選挙区比例代表制の導入であり、税金で政党を支える「政党交付金」の創設である。 自民党を離党し「新党さきがけ」を立ち上げ、“非自民”細川政権で総理特別補佐として、「政治改革」に携わった田中秀征元経済企画庁長官に、政治改革関連法の成立から約30年以上放置され続けてきた「政治とカネ」の問題の本質について聞いた。 (取材・構成:カンテレNEWSチャンネル編集長・佐藤一弘) ■ 「大事なところにメスが入ってない」

ー1994年の政治改革から30年以上が経ち、再び「政治とカネ」をめぐる問題が議論されています。この現状をどのようにお感じになっていますか。 田中:そんなに変わっていない。どこが変わっていないかというと、政治資金の使い方が変わっていない。本当に大事なところにメスが入っていない。大きく言うと、まず人件費、印刷費、そして一番は会食費。何万円もするようなものを食べる。 もう一つが慶弔の電報だ。ここにメスを入れなければ、この問題は解決しない。 ある候補が電報を打って、ある候補が打たなかったら、もらった人は大騒ぎする。これはびっくりするような金額になる。誰も白状しないが。こういうところにメスを入れない限り、どんなことをしてもこの問題は解決しない。 ー電報以外にも、そういった支出はあるのでしょうか。 田中:どこの党の人でも、カラオケ大会、老人会の会合、入学式、運動会など、あらゆるものにべらぼうな数の電報を打つ。その支出を規制しないで、入り口だけ規制しようとするから、(政治資金を)どこかからうまく持ってくるしかなくなる。 報道もこの問題を話題にしない。会食の問題も非常に大きい。3、4人で会って情報交換だと言いながら会食している政治家は多い。本当に使い方に気を付ければ、入りの問題は相当解決する。 ■ 「新しい人が立てないんだよ」

―支出の問題には、他にどのようなものがありますか。 田中:もう一つ非常に重大なことで、マスコミが目につけないのは、小選挙区で落選した候補者の生活の面倒を政治資金で見ていることだ。政党助成金から出る。そうすると、新しい人が立候補できない。落選した候補者は、次の選挙のために地域を回って歩くことが仕事になってしまうからだ。 昔は完全に浪人して、次の選挙まで仕事をしなければ生きていけなかった。今はそうではなく、選挙運動だけしていればいい。だから第一党、第二党くらいは、候補者がだめでも交代できない。それが日本の政治をだめにしてしまっている。 有権者は「政治に金がかかる」という言葉を鵜呑みにしてはいけない。まったく無駄なところにお金がかかっている。 ■「僕は中選挙区の連記制がいいっていう主義。小選挙区には反対だった」

―1993年、宮沢政権が内閣不信任案の可決で倒れました。その引き金を引いたのが、のちに「さきがけ」となる議員グループでした。当時の政治改革に対する熱量は大きかったと記憶しています。(※政治改革の最大の争点は中選挙区から小選挙区制への選挙制度改革だった) 田中:政治改革に関心のある人もいたが、私はそうではなかった。私は中選挙区の連記制(※1)がいいという主義で、小選挙区には反対だった。 (※1)ひとつの選挙区で複数の候補者に投票

―その後の政治改革議論の中で、企業団体献金を5年を目途に廃止するという話がありました。 田中:議論ではなく、細川さんと河野洋平さんで決めたことだ。5年たったらやめようという話だった。(※2) それを知らんぷりして今日まで来てしまった。私はその案を知らされていなかった。僕が反対するからだろう。 1994年11月18日に衆議院を通った小選挙区制の原案は僕の案だった。(※3) ところが、それが参議院で社会党の反対にあって暗礁に乗り上げたとき、細川・河野会談で一瞬にして決まったのが今の制度だ。(※4) テレビで見てびっくりした。政治改革関連法案が成立するまでという約束で補佐役を引き受けたので、それで辞めた。 ―おととし、石破総理は予算委員会で、政党助成金を導入する代わりに企業団体献金を禁止する合意はなかったという理解を示していますが。 田中:企業団体献金を廃止したくないのは、さっき言ったように無駄なところにお金がかかるからだ。一人が電報をいっぱい打てば、選挙区のほかの人も打たなければならなくなる。印刷物もそうだ。支持者が恥ずかしい思いをする。つまらないことだが、そういうところにメスを入れない限り解決しない。 (※2)細川総理・河野自民総裁(当時)の合意 「企業などの団体の寄付は、地方議員、首長を含め政治家の資金管理団体(一つに限る)に対して、五年間に限り年間五十万円を限度に認める」 (※3) 小選挙区(274議席)・比例代表(226議席)並立制 比例区は全国単位 (※4)小選挙区(300議席)・比例代表(200議席)並立制 比例区は地域ブロック

―秘書の話も出ましたが、大物政治家は地元に多くの秘書を抱えています。 田中:僕が「さきがけ」を作るときに誘った鳩山由紀夫さんに秘書の数を聞いたら、当時で38人と言っていた。僕は地元を合わせても4、5人しかいなかった。鳩山さんの秘書は郡や市別に担当が決まっていて、秘書がぐるぐる担当エリアを回っている。「うちの代議士が夕べ電話をくれて、お宅のおばあちゃんは風邪でもひいてないかと心配していた」などと言うと、涙を流して喜ぶ。 (対立候補の)秘書が来ないと「一度も来たことがない」「うちの前を通り過ぎただけだ」という話になる。非常にきめ細かな話だ。田舎へ行けば、秘書の名刺でも仏壇に飾っておく。弔電なんかは阿弥陀様の隣に何代も飾ってある。 そういうところからメスを入れないと、お金は必要だということになる。そうなると政策の勉強もできなくなる。みんなでやめればいいが、一人だけやっていると「サボっている」という話になってしまう。 ■「議員の数が多いことは悪いことではない。口数が多いほど民主的」

―政党助成金に反対されていたということですが、その理由は何ですか。 田中:当時、宮沢喜一総理もそうだったが、政治活動を税金を使ってやるようになったら政治はおしまいだという考えの人が多かった。政治活動はもっと草の根的、自然発生的なものだ。税金をもらうことで管理される部分が多くなり、政治的な自由が妨げられる可能性がある。また、新しい運動が盛り上がっても、すぐに助成金は出ないという不公平も生じる。その考えは今も同じだ。 議員定数を減らすという話があるが、財政的な理由なら政党助成金を削ればいい。議員の数が多いことは悪いことではない。口数が多いほど、いろんな案や批判が出てきて民主的だ。 ■「少数だけどね、非常に専門的な、間違いをこう発見する」

―現在の選挙制度についてはどうお考えですか。 田中:今の比例区は、小選挙区制の悪いところを是正するものだが、少数派がいなくなってしまう。大きな政党でなければ勝てない。全国比例であれば、今の社民党のような少数政党でも30人、50人と当選できる。全国比例に当時反対した村山富市さんも、後になって「あんたの言うとおり賛成しておけばよかった」と後悔していた。 僕は、福島の原発事故は常に原発の安全性を監視していた勢力が国会に10人でもいれば起こらなかったと言っている。少数だが専門的な人が間違いを発見することは可能だった。 当時、我々は「穏健な多党制」と言っていた。ところが、一瞬にして決まった今の制度は、小選挙区で落ちた人をブロック比例で救済するという自民党案を妥協したものだ。その結果、人材が出なくなってしまった。 ―自民党はかたくなに企業団体献金の廃止に反対しています。 田中:うんと金がかかるからだ。その問題に尽きる。会食や弔電をやめれば、支出は半分以下になるらしい。 ―今の選挙制度では、自民党が大きく、野党が分散している状況で、新しい勢力が出てくるのは難しくないですか。 田中:石破さんが総理になったときにやるべきことは、選挙制度の改革だった。彼も小選挙区制をやめなければいけないと言っていた。機は熟していたのに残念だ。石破さんは石橋湛山と正反対だ。とにかく勝負に出なければ。一昨年の段階でやっていたらできた。非常に残念だ。 (このインタビューは衆院選前の1月29日に行った)

この記事をシェアする

最新のニュース

関西のニュース一覧