「責任ある積極財政」の「責任」はどこへ?高市内閣初の国会で18兆円補正予算と減税合意 維新の「1丁目1番地」は先送り、国民民主の要求は「ミッションコンプリート」…露呈した「党利党略」12月19日 20:12
高市内閣にとって初の臨時国会が閉幕しました。
「年収の壁」引き上げが、自民と国民民主の間で合意に至る一方、維新の会が「1丁目1番地」と位置づけていた、「議員定数削減法案」は先送りとなりました。
政治ジャーナリストの青山和弘さんは、高市内閣の初の国会について「定数削減はうまくいきませんでしたが、物価高対策、そして外国人問題にも取り組み始めた。外交も日米首脳会談、日中首脳会談とスタートダッシュはいい感じだった」と評価します。
■「年収の壁」合意 自民と国民民主党の妥協点
自民党と国民民主党は、「年収の壁」問題について合意に達しました。
国民民主党の玉木代表は「国民の皆さんから託されたミッションコンプリート」と述べ、高市首相も「2年越しで知恵を絞っていただいた結果」として、「年収665万円までの人を対象に基礎控除の上乗せを行う」と表明しました。
これにより、給与所得の全対象者のおよそ8割を対象に、基礎控除の上乗せが行われ、手取りの増加が実現する形となります。
青山氏は合意の背景について「高市さんにとってみれば、衆議院では維新の会と無所属の議員が自民会派に入ったことで、過半数ギリギリに達したが、まだ参議院が過半数に達してない」と説明。
【青山和弘さん】「来年の通常国会を見据えた時に、国民民主の協力は不可欠。国民は年収の壁178万円に引き上げというのが条件でしたから、高市さんの号令の下で、国民との合意に向かって進むんだということで、多少、国民民主の言い分をさげたところはありますが、最終的には国民民主が満足する形で合意に至った」
この合意により「国民民主が連立入りする可能性はかなり出てきた」と青山氏は分析。
「自民、維新、国民という枠組みになる可能性もある。そうなった場合、数では安定するので、来年以降の政権運営というのは、だいぶ楽にはなる」との見通しを示しました。
■政策の中身は「大盤振る舞い」 財政への懸念も
一方で、政策の中身については批判的な見方も出ています。
青山氏は「とにかく国民民主と合意することが前提だったので、所得税減税の規模が大きくなっている」と指摘。「補正予算も18兆円とかなり大規模でしたし、ガソリン税の暫定税率を撤廃したり、アメリカの要請などもあり防衛費も上げたり、財政出動する話ばかりが出てきている」と財政面での懸念を示しました。
「金利も上昇したり、円安や物価高が進む可能性もある。これが顕在化してくると、『責任ある積極財政』の『責任ある』の方はどうなったのか、さらに厳しく問われる可能性がある」と警鐘を鳴らしました。
■「庶民は大変な時代が続く」と古市さん
社会学者の古市憲寿さんは年収の壁の引き上げについて「普通に考えたら、インフレと相殺されて終わりだと思います」と、手取り増加の実質的な効果に疑問を呈します。
「今、国がやっていることは積極財政で、お金を刷っていくという話。しかもアベノミクスと違って、規制緩和に対して今の高市政権は本腰を入れていない」と指摘し、「積極財政だけを進めれば、旧態依然とした産業が残されて、かつ、お金だけ回ってインフレが進んでいくということ」と懸念を示しました。
■議員定数削減法案は先送り 維新は連立離脱せず
一方、日本維新の会が「1丁目1番地」と位置づけていた、「議員定数削減法案」については、先送りとなりました。
青山氏はこの結果について「高市さんにとってみれば、この法案を先送りはするけれども、結局、維新は連立離脱しない。だからら成功」と評価。「維新にとっては、顔を潰されたけれども、本丸は、来年の副首都構想だったということが透けて見えた。来年の副首都構想が頓挫すれば、その時こそ維新は連立離脱すると思う。だからこそ、国民民主党も引き寄せておきたいというのが、年収の壁引き上げ合意の背景」と指摘しました。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年12月19日放送)