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「『明日死ぬかもしれない』は被害者遺族にとって物語の中の話ではない」北新地クリニック放火殺人事件から17日で4年を前に遺族が会見 幼い子供と共に残された経済的負担 被害者支援制度の拡充を訴える12月16日 16:45

大阪・北新地で26人が死亡した放火殺人事件からあす=17日で4年となります。 夫を亡くした女性が会見を開き、犯罪被害者や遺族への国の支援拡充を訴えました。 【北新地クリニック放火事件で夫を亡くしたAさん】「『明日死ぬかもしれない』は、私たち被害者遺族にとっては物語の中の話ではありません。犯罪被害者遺族が直後から直面する困難は経済的・身体的・精神的と多岐にわたり、その負担には終わりが見えません。この苦しみは、死ぬまで続きます」 ■事件の詳細は…

2021年12月17日、大阪・北新地の心療内科クリニックに男がガソリンを撒いて火を放ち、院長の西澤弘太郎さんや(当時49)や、スタッフ、患者あわせて26人が死亡しました。 警察は、クリニックの患者だった谷本盛雄容疑者(当時61)を犯人と特定しましたが、自らもこの事件で死亡したため、不起訴処分となっています。 ■夫を亡くしたAさんのコメント

Aさんの夫は復職を目指してクリニックに通う中、事件に巻き込まれました。 【北新地クリニック放火事件で夫を亡くしたAさん】 「この4年を振り返ると、夫のぬくもりや、声やしぐさなどは今でもそこにいるように思い出すことはできますが、夫との思い出は4年前で止まったままであり、私1人で出席する子供の入学式や発表会など、隣に夫がいない家族の思い出が増えていくことに寂しさと時間の経過を感じます。 夫を亡くしてから私の命はとても軽くなったと感じていて、子供を育てている中で、常に頭に浮かんでいるのは、『自分がいつ死んでもいいようにしておこう』という考えです。 『明日死ぬかもしれない』は、私たち被害者遺族にとっては物語の中の話ではありません。いつでも生きようとする気持ちを、簡単に手放してしまいそうになるそんな中に、私たちはいます。 犯罪被害者遺族が直後から直面する困難は経済的・身体的・精神的と多岐にわたり、その負担には終わりが見えません。この苦しみは、死ぬまで続きます」 ■残されたAさんには経済的負担がのしかかった

幼い子どもと共に取り残されたAさんには遺体搬送費や葬儀などの経済的負担がのしかかり、被害者や遺族への国の支援拡充を訴えてきました。 国もAさんたちの声を受けて、犯罪被害者への給付金の最低額を引き上げるなど法改正をおこなっていますが、Aさんはこの引き上げは「ほんの小さな1歩」だと感じています。 【北新地クリニック放火事件で夫を亡くしたAさん】 「夫が事件の犠牲になるまでは、互いに支え合って家事育児をしていたので、私も自分のペースで仕事をすることができていました。 しかし夫がいなくなってしまってからは、私自身仕事を減らし、今は子供との時間を確保できるように努めています。当然収入は減りました。 事件直後、犯罪被害者のための給付金制度を知った私は、まず給付額の算定基準に強い憤りを覚えました。 給付額が被害者被害当時の収入によって決定されるということは、これは当事者にとっては国が収入によって命の価値を図っているように感じられます。さらに給付金の算定基準には『逸失利益』の概念が依然として含まれていません。 復職に向けて前向きに努力をしていた夫から『復職のめどが立ったので、話したい。時間を作って欲しい』と。そう話してもらったその時の夫の姿や、そこに至るまでの夫の頑張りがこの制度の中には全く反映されていません。 あったはずの未来を制度の中に感じることはできません。 給付金は、被害者遺族のこれからを支える制度であるべきです。犯罪によって失われた未来や、逸失利益を考慮せずに過去の生産性というものによって給付額が算定されることは被害者の尊厳を踏みにじられている、そういう行為だと感じています。 犯罪被害者支援を専門に担う独立した機関を設立し、設立して欲しいという気持ちはときがたつにつれ大きくなっています。当事者の声に耳を傾け、本当に寄り添った運営をしてくれる第三者機関が必要だと思います」

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