『保険証を捨てないで!』期限切れでも来年3月までは利用できる いまも“医療機関の7割近くで「何らかのトラブル」”マイナ保険証12月06日 11:00
12月1日、会社員や公務員ら7748万人の「従来型の保険証」の有効期限が切れた。
今後、本格的にマイナ保険証への移行がはじまることになるが、同時にトラブルの増加が懸念されている。
「従来の保険証は捨てないでください」
と話すのは、全国保険団体連合会(保団連)の上所聡子さん。
11月12日、厚生労働省は混乱を避けるため「期限が切れた従来の健康保険証も来年3月末まではこれまで通り利用できる」旨を医療機関や関連団体に通達。
あくまで暫定措置だが、我々にとって大事な情報だ。
ところが、厚労省は国民に対しては積極的に周知しない方針なのだという。
どういうことなのか。
上所さんに話を聞いた。
■マイナ保険証で保険情報が確認できない!
【全国保険医団体連合会 上所聡子さん】
保団連が実施した「今年8月以降のマイナ保険証利用状況の実態調査」によると、回答した全国9580医療機関のうち7割が「なんらかのトラブル」に見舞われています。
なかでも問題なのが、「マイナ保険証で保険情報の確認が出来ない」トラブルが、半数を超える医療機関で起こっていることです。
理由はカードリーダーの不具合や資格情報が無効になっている、など様々ですが、保険情報の確認ができないのでは保険証の意味がありません。
そしてこうしたトラブル時の対策は「従来の健康保険証による資格確認」が73.8%と圧倒的に多いのです。
■「聞かれたら回答すればよい」 なぜ厚労省は“大事な情報”を国民に周知しないのか
厚労省は11月12日付で、事務連絡「マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行について(周知)」を医療関係団体に通知しました。
これは、来年3月末までは「有効期限が切れた従来の保険証でも通常の負担割合で診療を受けられる」とする暫定措置です。
加入している保険者に関係なく、すべての保険証が対象です。
この情報に対し、健保組合が「被保険者への周知はどうすべきか」と厚労省に問い合わせたところ、「被保険者には聞かれたら回答すればよい」との回答でした。
しかし、そもそも周知活動がされなければ、我々が知る機会は少なくなります。
そして心配なのが、「期限が切れたから」と破棄してしまうことです。
実際に「期限が切れた保険証はハサミを入れて破棄してくださいと会社から言われた」と話す患者さんもいたそうです。
保団連は11月18日の厚労大臣会見で、上野賢一郎大臣に「なぜ国民に周知しないのか」と質問しました。
上野大臣は、「聞かれたら回答すればよい」と説明したことを認めた上で、「国民にはマイナ保険証か資格確認書で受診して欲しい」と応え、有効期限切れ保険証が3月末まで利用できることは「医療機関等に対して周知していきたいと考えている」と述べました。
■「資格確認書」は4種類 今だけ「資格情報のお知らせ」のみの受診も可能 ややこしすぎる今の状況…
今後、医療機関を受診する際は、『マイナ保険証』か『資格確認書』を提示することになります。
『資格確認書』は各保険者が発行するのですが、その形式は「カードサイズ」「はがきサイズ」「A4サイズ」「電磁的交付(スマホ等電子機器の画面)」の4種類もあります。
さらに、それらとは別に「資格情報のお知らせ」という、マイナ保険証の利用者に送られる通知書もあります。
これは、マイナ保険証がカードリーダーの不具合などで利用できない場合にマイナ保険証とセットで使用するのが原則です。
政府は来年3月末までの暫定措置で「資格情報のお知らせ」のみの受診も可能としましたが、あくまで補助的な書類で、本来は「資格情報のお知らせ」だけで受診はできません。
名前も形式も似ている「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」を混同する間違いも多く、実際に今年8月以降、「資格情報のお知らせ」のみで受診する患者さんが増えています。
暫定措置が終了する来年3月以降の混乱が懸念されます。
とにかくややこしすぎるのです。
医療機関は、具合の悪い状態の方が行くところです。ご高齢の方の中には、杖をついていたり、体が思うように動かない方も大勢います。若い方でも高熱でつらい状況だったりします。
保険証の受付けでトラブルが起きた時の辛さは、元気な時とは比べ物になりません。
せめて『資格確認書』を全員に配布するなどの措置をとるべきだと思います。
(全国保険医団体連合会 上所聡子さん)